129.ヘルマイの血
さて、冒険者の店のダァー☆を潜るとソコにはマイト先輩が!!
おう、正直涙が出てくるぜ!!
合いたかった。ウェーイw。
「こんにちは、オットー様。」
「こんにちはマイト先輩、実はご相談が有るのですが…。」
店の中を見渡すと客が居ない。コレなら多少私用の話をしても店には影響は無いだろう。
「なんでしょう?」
「あの、何時ものマジックインクなんですが…。透明なマジックインクって出来ないんですか?」
「透明?」
考え込むマイト先輩。
「ああ、透明っぽいものでも良いのですが。」
「う~ん、色粉を入れないマジックインクは薄い青色なんですよ…。」
「おお、ソレって製造できませんか?性能は落ちないのですか?」
イザとなったら布を青くすれば読み取れないだろう。黒い布でも良い。
「出来ますが…。タダの色粉です。効果に変化は無いです。」
「申し訳ありません、その色粉無しのマジックインクを注文します。瓶二つ。」
「え?注文中のモノは?」
「いえ、ソレは別に使う予定が在りますので、追加発注でお願いします。」
金貨1枚をカウンターにおく。金貨が安くなった様な気分だ。
「え~。」
目をシロクロさせる先輩。
「後…。先輩のお知恵を借りたいのですが?」
「なんでしょう?」
「”水銀”と言うのはご存知ですか?」
「”SUIGE”?知りません?」
「えーっと、液体の金属で赤い石を熱して煙を冷やすと取れる、又は泉のように溢れる流れる金属。です。金属加工や、彫金に使われるかもしれません。」
「ああ、”ヘルマイの血”ですね?」
「ヘルマイの血?入荷できますか?」
「在庫が在ります。」
「買います。」
「ちょっとお待ち下さい。」
奥に引っ込む先輩。
錬金術に水銀は付き物だよな、流石魔法の店。
家で金作った時は、倉の中でホコリ被っていたヤツだったから在るとは思っていたんだが。
マイト先輩が重そうに鉄の瓶を持ってくる。
「コレです。」
イイゾ~!!1L以上ある。
中を覗く、間違いなく水銀だ。
「在庫はコレだけですか?」
「えーっと。未だ在ります。」
「在るだけ下さい。」
「ソレはちょっと困ります。ソレほど出る商品ではないのですが、入荷が不安定なんです。店の在庫が無くなると信用に係ります。」
「そうでしたか。申し訳ありませんでした。では。2瓶買います。」
いかんな、買い占めるクセが付きそうだ。
「あの…。一瓶金貨3枚なんですがよろしいですか?」
「全然問題ありません。追加注文したいくらいです。」
「はあ?今在庫が6在りますので3個まで出せます。残りは数が必要なら来年入荷予定なので年が明けたら。2個まで出せると思います。」
「では、3個購入したいのですがよろしいですか?」
カウンターに金貨9枚を並べる。
「はい、お待ち下さい。スグに用意します。」
カウンターに並ぶ重金属、良いぞ。夢が広がる。
”ラキシスおいで!!”と叫びたくなる。
まあ、使い道が無くても中性子で何とか元が取れるだろう。(但し暗闇で輝く。)
”ヘルマイの血 ×3”
収納GUIに輝いてます。まるで百式。
さて、
「低級ポーションを定期的に大量に欲しいのですが…。」
「え?ドレ位ですか?」
「週末に、50、いや60本ですね。」
「うーん。今日は在庫が在りますが…。」
よし、しばらくはコレでやり過ごせる。
「多めに発注するコトは出来ませんか?」
「あ、あの。ソレぐらいの数になると自作したほうが安くなります。但し…。工房を持っていればの話です。」
「うーん、」
アゴに手を置き考える。工房か…。土地と建物等の施設が必要だ。コストが掛る。
何せ運営する知識も技能も無い。
「マイト先輩。工房を作るとしたらドレ位のお金を集めれば宜しいのですか?」
「え?。錬金術師一人の工房が金貨300枚、中規模な工房は錬金術師2人と見習い3人で金貨900、いや。ギルドの届けも要るから金貨1000~1200ぐらいですね。建物の金額は含まれて居ません。」
「うーむ。小規模な物ですとドレくらいの生産量なんですか?」
「通常ポーションが144本で4日間ですね。ただし、王都ではあまり儲からない様子です。」
「薬草と聖水ですか?」
「はい、そうです。薬草の収集は薬師が独占しています。聖水は教会ですね。」
「聖水とはどんなモノですか?」
「コレです。コレだけで銀貨一枚です。」
マイト先輩が陶器の壷を出してきた。1Lぐらいか?フタに教会の紋章の封紙がしてある。
「なるほど…。購入します。」
銀貨一枚をカウンターに出す。
「はい、お買い上げありがとうございます。」
フタを破ってサーチする。
サーチ結果
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道具:聖水(水)
効果:アルカリイオン水(pH10.5)
(魔力100%)
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はい?アルカリイオン水?
「あの、マイト先輩、コレはどうやって作っているのでしょうか?」
「元々は母なる大地神アシスの聖なる泉の水だったそうですが。その地の岩で作った命の風呂桶に清らかな水をしたため司祭が三日三晩の祈りを捧げると出来るそうです。まあ、教会の話ですが。」
「コレで麺を作ると麺にコシが出るのでは?」
「はい?」
「いや。麺の食感が良くなります。」
「え?いや?ちょっと分かりません。」
驚いた表情のマイト先輩。
「コレを干物に漬け戻すと元に戻るとか?油汚れが良く落ちるとか?」
「ああ、神の奇跡ですね。よく伝道師が道端でやっています。」
マジかよ。重曹で何とかなるのか?
「その風呂桶の色は白いのですか?」
「え?ああ、昔、お祭りで見たときは白い石でした。」
「お祭り?」
「ええ、20年ほどで入れ替えるので数年前にソレが在ったんです。台車に積まれて通りを練り歩くんです。お菓子とお酒が振舞われて。出店もでます。もう、お祭りですね。」
「その聖なる泉と言うのは、近くで漆喰を作ってませんか?」
「え?あの、北の町でアシスと言う町なんです。石材の町です。大地神アシスの名前を冠する聖地ですね。実際、台車を引くのは石屋ギルドの方々です。」
なるほど…。石は石屋で聞いたほうが早いな。
「そうですか…。とりあえず、低級ポーション60個下さい。」
「はい、分かりました、お出しします、しばらくお待ち下さい。」
俺は空瓶をカウンターに並べた。
そのまま精算して商品を収納した。
その時何か心に引っかかっていたが。
この時、気が付いていれば。
あのトラブルを回避できたのだ。




