121.D-RAM(ダイナミック・メモリーズ)
失った記憶は戻るのか?
魔法科教室に向かいながら考える。
教室に入ると授業は終りに近い。
軽く挨拶をしてロビンの隣りに座る。
軋む椅子。
壊れたゴーレムの様に動くロビン。
収納からノートとペンを出して考える。
本をインストールしたら生前の記憶が無くなるなんて思ってもいなかった。
恐らく魔法書を作ったヤツも生前の記憶を持っているヤツが居るなんて思わないだろう。
果たして魔法書を頭から消す方法が在ったとしても、ソレで生前の記憶は回復するのか?
どうやら失った記憶は断片的だ。
記憶の連想ゲームを行なうと失った部分で止まってしまう。
名前は思い出すが形が出てこない、真っ暗だ。
思いつくままノートを書く。日本語だ。
ゲームと生まれた後の記憶は残っている。
授業終了の鐘が鳴った。
さあ、飯だ。
もちろんロビンの首根っこは押さえた。
売られる子牛の様なロビンの目。
何故か解体をするために吊るした鹿の瞳を思い出した。
「オットー。大衆食堂に行こうよ。」
フェレッポの声だ。
手を振って答える。上の席ではミソッカス共が集っている。
ゾロゾロと食堂へ向かう。
途中にベスタとマルカ&エミリーと合流する。
何時もの光景だ。
皆、大皿サラダ付きだ。俺は何時もの+麺だ。
豆とキノコとカブ&ウサギ肉のトマト煮込みと丸パン。
サラダは葉物野菜の盛り合わせ。スライスオニオンに透明なドレッシングと松の実が乗っている。
麺類はタマネギとトマト&ひき肉のスパゲティだ。粉チーズが乗っているのがよい。
ちっトマトとトマトが被った。(肉と肉が被るのは問題ない。)
トレーの上の皿が真っ赤だ。
「オットー元気ないな?」
アレックスが言う。
「ああ、ちょっと問題が多くてな…。対策を思案中なんだ。」
人体実験できれば…。ロビンを見るが何故か滝の汗をかいている。
「相談に乗るよ?オットー。」
「魔法の実験以外はな…。」
陽気に答えるフェルッポに条件を付けるマルコ。
流石マルコ、よく解かっている。
カールとジョンはお互い目で会話をしている、乳タイプ通信は止めろ。
「オットー様、大丈夫ですか?今朝も何かうなされて居ましたが…。」
珍しく身体の心配をしてくれるベスタ。
「御加減が優れないならば部屋でお休みされては?」
マルカも心配してくれる。
良かった、どうやら信頼度と忠誠度は下がってない様子だ。
「いや、食欲は有るんだ…。魔法の成果が思ったほどでは無く。弊害が大きくて対策が必要なのだが…。上手く行ってないのだ。」
「根を詰められると、お身体に差障りますよ。」
エミリーも心配そうだ。
「まあ、そうだな…。今日は午後の授業は止めて、図書室で調べ物をしたらそのまま部屋に戻るよ。」
「あの、御供しましょうか?」
「ベスタ、問題は無い。マルカに付いていてくれ。たぶん部屋には先に戻っている。」
「はい、わかりました。」
「オットー様、今日の午後は基本魔法科の実技試験なんです。がんばります。」
「が、がんばります。」
微笑むエミリーと緊張しているマルカ。
「そうか…。まあ、アレだけ魔力のコントロールが出来る様に成ったんだ。落ち着いて手順を間違えなければ合格するだろう。」
「「はい。」」
食後のお茶で当たり障りの無い話をして図書室へ向かう。
明日のため、早めに休んで身体の調子を整えよう。
図書室のダャー★を開けると。
中には人が居ない。
まあ、良いか…。
目的の本を探す。
錬金術本を。中でもエンチャント関係の魔法陣集があったのでソレも取る。
写本室がある小部屋の廊下を進むとMAPに光点が現れる。
ドアの鎧窓の隙間から中を窺うと。
あの膨らみはは間違いなく司書ちゃんだ。
ノックする。
一応、部屋の使用許可を取らなければ…。
返事は無い。タダの休憩中の様子だ…。ホントかドウか見てみよう。
ダァー☆を音の出ないようにゆっくり開けると。
写本室の椅子に座り傾斜机にうつ伏せに、腕を枕にうたた寝する司書ちゃんが居る。
よし、視姦しよう!
ゆっくり隣の席に移動して。
音を立てない様に調べ物をする。
なるほど。ココは南向き小部屋で暖かいのか。
確かに眠たくなるな。
司書ちゃんを撫で回したい衝動を押さえ。ノートに本に載っている使えそうな魔法陣を書き写して、解析を行なう。
なるほど…。偶に良い記述の魔法陣が在るな…。
コレはためになる…。
子一時間ほど作業が進むと司書ちゃんが目を覚ましたようだ。
大あくびをしながら体を伸ばしている。
「ふあああああああ~♪」
その途中で目が合う。
「え?オットー君?何で?」
「ああ、調べ物です。写本室の使用許可を貰いにきました。と言うか使ってます。」
「ど、どうぞ、どうぞ。」
あわてて身なりを整えている司書ちゃん。
かわええのう。
あ、涎を手で拭いたら口紅がずれて頬に付いてる。
手鏡で気が付いてあわててハンカチでふき取っている。
「ココは暖かくてよい場所ですね。」
「はい、お気に入りの場所です。」
集中作業には向いていないような気がする。
暖かいと頭がボーっとするからな。
緊張が切れる眠たくなる。
うーん。資料は集ったな。
「あの、魔法使いになる道具はどうなりましたか?」
「ええ、大まかには出来たのですが…。細かな調整が未だです。実験しないといけませんが人体に負担の掛るものはいけません。」
「はあ?」
首を傾げている司書ちゃん。
「もうスグ完成ですが。ちょっと未だ時間が掛ります。」
「はい♪」
嬉しそうな司書ちゃん。
ぷにぷにしたい。
「あの。失礼なコトをお聞きしますが。司書さんはご結婚されているのですか?ご婚約者はお見えですか?」
「うーん、居ないの~。まあ、上の人が婚約したからたぶん今、探してると思うの~。」
「なるほど…。」
順番が在って結婚待ちか…。
貴族の家来で親しい間柄なら主人が未婚だと家臣も結婚を控えるだろう。
まあ、カールが結婚しないとジョンが結婚できない見たいなコトだ。
早く結婚しろよ…。上の人。いや。しない方が良いか?
ジョンなら見つけてくるだろう。カールと自分に。
魔法学園の司書なんて仕事だから良いトコのお嬢さんなのは間違いは無いだろう。
「う~ん、家で魔法使えないの私だけなの~♪だから期待してます。」
「ソレは責任重大ですね。頑張ります。」
「はい、責任取ってくださいね。失敗は許しません♪」
はい、責任取りたいです。
なるほど、だからあんなに魔法練習に熱心だったのか…。
よし、元気になった。
頑張るぞ!!
たとえ前世の記憶が無くなっても。
俺には変わりは無い。




