11.はぢめてのおつかい(その4)
あー。オットー・フォン・ハイデッカーです。いま、押し売りしようとしたオッサンの案内でなんか狭い路地の裏道を進みます。
なんだよ。これ?脂肪フラグ?
俺。路地裏で囲まれてタコ殴り?
案内された家はアパートメントの様な建物の一室で中に入ると陰気臭くて人相が悪い髭面のオッサンがいた。
店の様だ何を売っているのか解からない、めぼしい商品は並んでない。
店主のヒゲおっさんがカウンターの向うに居る。
「おう、赤銅!遅かったなあ。今月の払いは持って来たか?」
「おう、ほらよ受け取れ。」
金貨を虫眼鏡で観察して、秤で重さを計っている。
「よし受け取った、来月は遅れるなよ。」
「あ~、おい、金貸し。この方はスゴイ魔道士さまで、俺の足と指を直していただけたんだ。」
「は?バカ言うな、切れたモンが生えてくるわけ無いだろ!!」
「ほら、見ろよ。」
両手を広げてぐっぱーする赤銅。
「おい、近くに寄って良く見せてみろ。」
カウンターテーブルに置いた手を虫眼鏡で観察している金貸し。障って確かめている様子だ。
「が!!痛えだろ!!」
生えた指を金貸しが針で刺している。
「おい。それ本物かよ!!」
「本モノだよ、あーいってえ!血が出てきやがった!!コノ指は一生使うつもりなんだから大事にしろや!!」
「俺の脚も治るのか?」
「さあな。見てみないと解からん。」
俺を睨む金貸しに、指で銭の合図を送る。
「見て治るようならば、金を払えば直していただける?」
「そうだ、コイツは治したが、払いが在るから払えんと言いやがった。だから払えそうな客を紹介させた。」
「な、だからよ。金貸し!見るダケならタダなんだから。後はお前らの商談だろ?」
「ヘー治るモンなら治してみろよ。魔法使い。」
カウンターを跳ね上げて出てきた金貸し。
杖をついているが。右の足の膝から下が無かった。
義足の様な木の棒1本だ。
サーチする。
脚は膝から下だが膝関節も破損して癒着をしている治すのは面倒だ。
あと、肝機能が低下しているコレも面倒な話だ。
おまけに逆流性胃炎もある。
「面倒な話だな。金貨15だな、あと、コイツのツケを立替えて払え!!合わせて16だ。」
「へえ、良いだろう。”治ったら”の後払いで良いな?あと、コイツのツケはコイツのモノだ。15しか払わねえ!」
「わかった、良いだろうしかし、痛いぞ。」
「へっ、大の大人がピーピー泣くかよ!」
「わかった。行くぞ。」
マシェットを抜き金貸しの右ひざ上を切断する。
皆びっくりして動けない。
流れる血を見ながら治癒魔法を掛ける。
見る見るひざ上から脚が生えてくる。
「ほら、治ったぞ。」
「お、おめえ、」
「そんなばかな…」
床に血溜りが出来て倒れた義足とヒザが濡れている。
金貸しのヒザ上から真新しい脚が生えて裸足のまま血溜りに立っている。
苦痛と混乱で話が出来ない金貸し。
「ほら、約束の金貨15枚よこせ。あと、腑臓の悪いのとみぞおちの鈍痛は治したが、酒の飲みすぎと脂っこいモノの喰いすぎが原因だから控えろ、又悪くなるぞ。」
呆然と震える手で金貨15枚を数えて差し出した金貸し。
そそくさとポケットに入れる振りして収納する。
「おめえの脚は生えたばかりで力が出ない。始めは他人の脚の様だが。無理せずゆっくり鍛えろ。脚を失ったばかりのコロ無い足の先が痛かったハズだソレのぶり返しがある。鍛えれば自分の脚のように馴染むが、時間が掛る。養生しろ。」
絶望が支配するサラ金事務所を出た。
よし、奴隷を買いに行こう。。
ロジーナ王国ハイデッカーの町で三振りの名刀が見つかる。
その銘の無い無骨な刀は折れず曲がらず毀れずどんな鎧も貫き。
ドラゴンの鱗をも貫くと噂された。
その3本の剣を手に入れた駆け出し冒険者チームが多くの伝説を残すが。
ソレはまた別の話である。




