112.冒険譚
部屋に戻ると無人だ。
まあ、メイドさんずは寮の仕事中だろう。
外套を脱いで椅子に座る。
今回の反省会だ。
冒険依頼で冒険者としての実績と魔石の入手と言う二つの目標は達成した。
仲間が増えたのが計算外だがゲームには無いNPCだ、恐らく進行に影響は無いだろう。
今後の目標は…。
馬車と馬が揃ったら。娘とベスタで数日間の行商の演習が必要かもしれない。
魔石で何らかの武器を作る必要がある…。
そういえばミソッカス共に剣を作ってやると言ったなあ…。
帝国軍に対抗する為、スクロールを使った使い捨て武器で王国軍を強化させる。
コレはエンリケの店から売り込みに行けば良いだろう。
もう既に実績がある。
包丁以外の商品を作る、包丁はもう既に一部の商人が気づいている様子だ。
何を売り込めば良いんだ?
東の森か…。
北の眷属に対抗する方法を広める必要がある。
冒険者ギルドにそれと無く情報を流すか…。
浸透攻撃してくる悪魔を撃退する方法を考えないと行けない。
”真実の手鏡”に映る姿でMr.Rが悪魔と解かるのだ…。
しかし”真実の手鏡”が手に入るのは主人公が帝国とどつきあいを始めてから手に入る。
悪魔が出るとカラスが騒ぐという描写がある。
カラスか…。動物なら解かるのか?
それならブランの鼻で解かるだろう。
しかし、ブランと面通しし続けるのも難しい。
体を伸ばして脳内の悪魔辞典を読む。
変身できる悪魔…。
意外と多いな。
と言うか殆どの人型悪魔が変身できる。
人型クリーチャーでも変身出来る物が多い。
どの悪魔がMr.Rに取り付くんだ?
いや、操っている場合だと殆ど調べるのは不可能だろ。
寄生型の悪魔も居る様子だ。
真実の鏡は本当の姿を映すというアイテムだ。
体に宿る魔力を視覚化するのか…。
それとも。光学的に偽装しているのを見破るのか?
鳥類は紫外線が見えるはずだ。
魔力視覚化フィルターか…。難しいな。
逆に紫外線視覚化フィルターは簡単に出来そうだ。
もう既に赤外線視覚化フィルターが有るからな。
近くに光源(炎)が在るとフレイムアウトして使えないのが残念だ。
夜に奇襲掛けるまでしか使えない。
悪魔の魔力パターンに反応して警告を出すアイテムを作るか…。
悪魔の魔力パターンは悪魔辞典の悪魔の紋章で大体想像できる。
何とか妨害できないか?悪魔よけアイテムとか…。
イロイロ考え対抗策を練る。
もう夕食の時間だ。
とりあえず行動だ。
俺は制服に着替えて食堂に移動した。
廊下を進むと丁度、最後の学生が木札をひっくり返す所だった。
よし、良い時間だ。
続いて木札を裏返し席に付く。
アレックスが気づいて手を振っている。
軽く手で返礼する。
マルコとフェレッポ、乳タイプ兄弟も目で合図を送ってくる。
お誕生日席のモミアゲロールパンに鬼畜メガネが耳元でささやいている、ソレを聞いてにこやかに述べる。
「今日は全員揃いましたね?では、始めましょう。」
マルコが何か口で合図を送っている。
もちろん口を読むスキルは無いのでワケが解からないが頷いて返す。
まあ、後でサロンで落ち合えば良いだろう。
「皆に行き渡りましたね。では、豊穣の女神ディアナに感謝を。」
配膳が終わり食事開始のお祈りが始まる。
さてと…。
今日は白身魚のムニエルとパン。緑豆とヨーグルトのディップソース付き。
葉物野菜のサラダに黒いドレッシングだ。それに、イモと黒豆のシチュー。小皿に木の実のゼリーが付いている。
しばらく粗食が続いていたので随分と眩しく見える。
白身魚のムニエルはバター風味だ。
パンのディップソースともよく合う。
黒いドレッシングは酢とタマネギだった。
ちょっと酸味が強いような気がする。
まあ、悪く無い。
シチューは小さい黒豆に合わせて芋が角切りにしてある。
ハーブとタマネギ、ベーコンの味が微かにする。硬さも程よい。
とろみが無いのでスープかも知れない。
ゼリーは定番の紫色の木の実の汁のゼリーだ。
偶に果肉入りのものも有るが今回は果肉なしだ。
食事がおわり、皆がゾロゾロ食堂を出る。
出口でマルコとおち合う。
「久しぶりだなマルコ。」
「おかえりオットー、急に出かけると聞いてびっくりしたぞ。」
「ああ、すまん。まあ、ココで立ち話もなんだ。サロンへ行こう。」
「やあ、面白そうな話だね。」
ミソッカス共が集まってきた。
「いいぜ。オットー。」
「久しぶりオットー。どこ行ってきたの?」
「よし、サロンで席を取ろう。」
サロンの丸テーブルを一個占領してミソッカス共の溜まり場になる。
給仕がお茶を配膳して立ち去るのを見届ける。
俺が口火を切る。
「さてと、すまんな私用でしばらく王都を離れていた。未だ先ほど戻った所だ。」
マルコがお茶を飲みながら答える。
「そうか、オットー。寮に戻ったらオットーが旅に出たと聞いてビックリしたぞ。」
なんでそんな自分探しの学生の様な話になっているんだ?
「え?僕は実家に帰ると聞いて居たよ?」
「そうか?俺は森に篭って熊を倒す修行に出たと聞いた。」
「魔物狩りに出たと聞いていたが…。」
「ふーん?僕は仕事を請けたからしばらく戻れないと聞いた。」
何故か皆微妙に違うが全員正解な話をする。
「ああ、情報が錯綜している様子だが、正解は冒険者ギルドで護衛任務を受けて東の森近くの村に護衛任務に行って戻ったと言うことだ。なお、途中に熊と亜人に遭遇してコレを排除した。」
「皆微妙に近いな。」
「なんだ、全員正解か?」
「なんだよ、誰が一番近いかエール賭けてたのに。」
「ああ、仕方ないな…。」
「まあ、今度みんなでエール喰いに行こうぜ。」
なんだ、コイツ等?俺を出汁に飯賭けてたのか?
俺を抜きで!!
「ああ、そうだな今度エールを喰いに行こう。」
「で?オットー、どんな冒険だったの?」
喰いつくフェルッポ。
なんだ、フェルッポ?冒険好き?
「あ?ああ。そうだな。護衛対象を村まで送ったダケだ。まあ、途中で熊や狼や亜人が出たが概ね順調だった。」
”いや、そんな物出たら無事で済まないだろ?”アレックスのツッコミを無視してお茶を飲む。
「で?倒したの?狼?熊?」
「ああ、倒したけど売ってしまった。」
「えー見たかったなあ、狼。」
「おい、弟、狼は止めておけ。」
「狼、熊関係なしか…。」
「家の兵総出でも熊には勝てないんだがなあ…。」
「え?そうなの?ジョン。」
「ああ、追っ払うぐらいが関の山だ。」
まあ、熊ならそんな物か…。
「ああ、フェルッポ明日なら見せてやる。損傷が激しいので売れないかもしれない熊を一匹収納している。」
「え?やった!!兄さん熊だよ!!」
「ああ、弟よ…。ソレは少し俺も見てみたいな。」
「熊か…。」
「ああ、何時か俺の手で討取りたいな。」
おいおい、お前ら熊ごときで泣き言いうなよ、コレから凄いモンスターがわんさと出てくるんだぜ?
「では、明日の朝の鍛練でお披露目しよう。」
「え~朝かい?」
アレックスが不満そうだ。
「そりゃあ良い。」
「ああ、オットー。不在の時も従者殿には稽古を付けて貰った、この場を借りて感謝する。」
納得するジョンに敬意の姿勢を示すカール。
「え~朝早いよ。」
「ヤレヤレ弟、そんなコトで軍でやって行けるのか?」
「え~。」
「フェルッポ。朝の鍛練は軍では必須だぞ。軍に入って苦労する前に早めに熟れて置いて損はない。」
「うん、解かった、オットー参加するよ。」
「オットーすまんな…。弟の扱いが上手くなったな。」
「では、明日、中庭で…。」
アレックスの声でサロンで解散する。
部屋に戻ると。
メイドさんずが寝る前の姿だ。
制服を脱ぐのを手伝ってもらう。
全裸でクリーンの魔法を掛ける。
未だお湯の桶が用意して有ったので体を拭いてもらう。
メイドさんずの姿が眩しい。
アレだけエンリケの店で賢者になったのに、もう邪悪に落ちている。
チャクラの廻しすぎは諸刃の剣だ反動が大きすぎる。
もちろんベッドで天に昇った。




