111.皮なめし
北門にやって来た。
北門の外の町は相変わらず労働者階級の多い町だ。
何時もの通りのカット果物屋の出店で聞くと皮なめし屋の場所を教えてくれた。
皮なめし屋の前に立つ。
確かにケダモノの香りと、あの解体した時の臓物と血の臭いがする。
大きな店だ、看板には”冒険者ギルド指定買取商店”とある。
張り紙では。”明瞭会計。その場で査定!!”と歌っている。
店の中に入ると客は居るが並ぶ程ではない程度だ。
受付に進む。
若い男が立っているので話す。
「買取を頼みたい。皮はまだ剥いでない。魔石があるかも知れないがソレは欲しい。」
「はあ、解体手数料が取られますがよろしいでしょうか?」
「そうか、狼だとどれ位で買い取ってくれる?その解体手数料はいくらだ?」
「狼の種類にも寄りますが…。一匹状態の良いモノで大銀貨1枚。手数料は大銅貨5枚です。」
うーん。まあ、そんな物か?
「そうか…。今持ってきているが数が多い、買取査定を頼む。」
「ハイでは、ウラに廻して下さい。解体場が在りソコで解体と査定をします。この紙をお持ち下さい。精算表です。」
「そうか、解かった。」
用紙が挟まった木のクリップボードを渡された。
店の裏に回ると粗末で大きな平屋の建物があり剥ぎ取り職人が数人居た。
天井からチェーンとフックがいくつかぶら下がっている。
「ココで解体と査定をするのか?」
「ああ、そうだ。客さん、受付で紙を貰って来たかい?」
「おう、あるぞ。コレだ。」
クリップボードを受け取り紙を読む職人。
「お客さん、買取頭数が書いてないが。査定込みで解体手数料差し引き。魔石はお戻しでイイのかい?」
「ああ、そうだ。」
「魔石が出るのは神のみぞ知る世界だ。思ったより少なくても俺たちは知らないからな。」
苦い顔をする職人。
「ああ、解かっている。」
「で、その魔物はドコに有るんだ?」
まあ、ココは広いから良いか。
「今、取り出す。」
収納からグレイウルフ168匹とシルバーウルフ29匹を床に並べる。
「おい、ドレだけあるんだ?」
「マジか?グレイウルフだぞ!!シルバーも居る!!」
騒ぐ職人達。
「とりあえず。グレイウルフ168匹とシルバーウルフ29匹だ。後は熊と…。オーガは買い取ってくれるか?」
「オーガの皮は…。使い道は有るが。今日は止めてくれ。たぶんコレだけ全部処理するのに5日は掛る。」
「そうか。査定は出来るのか?」
「いや、コレだけ多いと査定も…。アンタ冒険者じゃないのか?ギルドに登録してりゃあギルドのアンタの口座に振り込みするぜ。公定価格になるが…。」
「ああ、冒険者ギルドには登録している。カードも有る。」
カードを職人に渡す。
「オイあんた…。クラス無しって…。」
「ああ、未だ登録して10日も経っていないからな。まあ、魔法使いだ。だから魔石が要る。」
「そうか、金は口座振込みだが魔石は取りに来てくれ。5日後には渡せる用にしておく。書類付だ。」
「そうしておいてくれ。頼むぞ。」
何か書き込まれたクリップボードを受け取る。
コレを帰りに受付に渡して引換え券を受け取れば良いらしい。
表の受付に向かい若い男にクリップボードを返却する。
ボードを読む男の眉間にシワができる。
「あの、コレは…。」
「査定に時間が掛るそうなので。公定価格の口座振込みにした。数日後に余分を受け取りに来る。引換え券を発行してくれ。」
「あ、はい、解かりました。」
紙を受け取りなめし屋を後にする。
コレからどうしよう?
武器屋へ行くか?
日が傾き始めている。
寮ではサロンで皆が集まり始める時間だろう…。
よし、ポーンで帰ろう。
学園の校門前に飛ぶ。
校門を潜り寮に向かう。
学校が終わったのか。見知った生徒が寮の中に吸い込まれていく。
寮に入ると寮監に戻った旨を申告しなければならない。
寮管理塔へ向かう。
この貴族用の寮にある男女共用施設でサロンと食堂がある建物だ。
この裏に中庭を挟んで男子棟と女子棟がある。
渡り廊下で繋がっているので共用棟に行けるが、この玄関を利用したコトは無い。
まあ、配下の者が出入りする場合が多いので殆ど知らなくても良い。
玄関に入る前にクリーンの魔法で旅の泥を落とす。
管理棟の玄関で受付がある。
ソコで鬼畜メガネがいた。
「これは、オットー・フォン・ハイデッカー様、今ご帰到着でしょうか?」
痩せた隙の無いカリアゲメガネ。
目つきが鋭い。
「ああ、たった今、私用から戻った所だ。配下の者と連絡は取れるか?間に合えば夕飯は食堂で取りたいが…。ムリなら自室でも良い。」
一瞬目線が下を向く鬼畜メガネ。
工程表を確認しているのかもしれない。
コイツはゲームで途中から悪魔にすり替わり。
ボンクラ王子の死亡に係るハズだ。
ドコで悪魔と関係するんだ?
今は未だ人間の様だ。
ゲームだと悪魔と入れ替わると明らかに目つきが悪くなる。
だが見破るアイテムを取らないと敵対する選択肢が表示されないのだ。
コイツがチェリーをレロレロすればスグに解かるのだが…。
「はい、大丈夫です。食堂でお食事できます。」
「ああ、ありがとう。ミスター…。あー…。」
「はい、私。デービス公爵家次女メアリー・デービス様の執事を務めております。ロバートと申します。お見知りおきを。」
「Mr.Rありがとう。では俺は一旦自室に戻る。ああ、配下の者には俺が戻ったと言う事だけを伝えてくれ。特に用は無い。雑務が優先だ。」
「はい、ごゆっくり。オットー・フォン・ハイデッカー様。」




