106.選択
さて、みんなの期待を背負っているオットーです。
もちろん”はい”を選択しました。
犬だよ犬。(狼です。)
いや、狩猟やっていると犬が欲しい時が在るんだよ。(狼です。)
獲物を追跡したり、落ちた獲物を取ってこさせたり、獲物を追い立てたり。
一人猟師には犬が居るだけで全然楽になる。(狼です。)
しかも訓練が必要だ、犬がコチラの言葉が解かる様に訓練しなければ行けないが。(狼です。)
この犬、人語を解するんだ。こんなに楽なコトは無いだろう。(くどいようですが狼です。)
しかもモフモフ。
森の中を犬とキャッキャウフフのお肉生活。(おおか…。もうどっちでもイイよ!)
しかし、この狼どうやって仕込めば良いんだ?
先ずはお手と、お替りからか…。
「おい、狼、人を怖がる動物が居るように、人は狼を怖がる。だから怖がらせるな。」
『はい、わかりました。』
「よしでは、首輪だな…。」
『首輪なんて犬みたいです。ひどい。』
「いや、狼も飼われれば犬だぞ。」
『狼のプライドが在ります。』
「大丈夫だ、所有者を表す為のモノだ、人間も付けているモノも居る。」
『そうですね偶に見かけます。』
「犬も所有者が居るから首輪なんだ。お前も俺の所有物だ。解かるな。所有者の居ない狼は狩られる。」
『そうすね、しかたありません。首輪をします。』
よっし、村で首輪を貰おう。
まあ、犬の首輪で良いだろう。
奴隷の首輪は魔法付きで高額だ。
「ここで待っていろ、首輪を調達してくる。」
『あの、お腹が空きました。」
「そうか…。コレを食べろ。」
トビウサギを収納から出して目の前に置く。
『死肉はちょっと…。』
「大丈夫だ、まだ死にたてだ。」
『はい我慢します。』
トビウサギをバリバリ骨ごと食べる狼。
コイツひょっとして燃費が悪いのか?
まあいい、今、村の中は絶賛狼解体大レース中だ。
村の者総出で皮を剥いでいる。
流石に狼に見せれる物では無い。
友好度が下がりそうだからな。
さて、村長を探す。
ナイフを片手に血に濡れた村人は”村長は自宅に居る”との話だ。
狼の肉は硬くて不味い。
臭みが有るのだ。
一旦ハーブで茹でて干し肉にすると何とか食べられるモノに成る。
酢と香草で煮戻して野菜を入れて食べるらしい。
なるほど、喰いたく無いな。
村人に言われた道を行くと酷い農家が有った。
土の壁に萱の屋根、床板無しの土間。
トイレは外。
ドコにでも有る普通の農奴の家だ。
「失礼する。村長は居るか?」
声を掛けるが返事が無い。
しかし、奥で何か話し声がする。
何か声を荒げているようすだ。
「そんな!!ポーションが効かないなんて!!」
「もう、打つ手が無い…。」
「頑張って。ダン。」
「おう。村長、失礼するぞ?何か執りこみ中か?」
「ああ、魔道士様。申し訳ありません。」
ガチムチウサギオッサンと、ウサギ母とウサギ娘が居る。
丸太で作っ簡易ベッドの上にウサミミ少年が荒い息を立てている。
「ほう、その少年はご病気か?」
「ええ、息子です、狼に足を噛まれて熱を出しています。」
歳からすると娘の弟だろう。
少女と言っても通じるだろう。
うさみみ棒つき天使レベルだ。
ハイレグ肩紐無しワンピース&袖なしカフス袖が似合いそうだ。
要らない所がモッコリしてなければファインプレーでギリギリストライクだ。(アウトー!!)
「む?ソレはイカンな。水を怖がったり光を嫌がったりしていないか?」
「いえ?噛まれたのはアンデッドではありません。」
何故か会話が成り立っていないような気がするが。
そうか、そう考えればアンデットも狂犬病の一種なのか?
「噛まれてから何日経っている?噛まれた時スグに清水で洗い毒消しの草を刷り込んだか?」
「え?毒消しの草?噛まれたのは一週間と一日です。」
なら未だ狂犬病は脳幹まで達していないな。
清水で洗い毒消しの草の対処法はタッポから教えてもらったモノだ。
その時漠然と狂犬病が在るのかと思った。
「どれ見せてみろ俺は治癒魔法が少しは使える。」
「え、あの、妻は治癒魔法が使えますが効かないのです。」
ソレはスゴイな、本モノの治癒魔法が見れる。
「心配するな我家の治癒魔法は方式が違う。」
もちろんウソです。
「は、はあ。」
ベッドに横たわる少年を見る。うん、右足首上に狼の動物咬傷と蜂窩織炎。
サーチをすると左足根元と足首のリンパ腺の腫れがある、体は未だ大丈夫だ。
恐らく噛み傷から雑菌が入っただけだと思うが、狂犬病が怖い。
しかも傷口は一部が化膿して壊疽に近い。
今なら未だ間に合う。
「うん。足を切るしか無いな。」
「う、うううっ。」
母親が泣き始める。
「そんな!他に方法が!!」
驚く村長。母親の反応から大体解かる。
「おい、夫人説明してやれ。」
「はい、そうです、魔道士様、この子の命を助けるのには足を切るしかありません。」
「おい!お前なんで黙って!。」
「子の足を切れる親が居ますか!!う、うう~。」
「そんな、お母さん!!」
よし、話は早い。
「おい、娘、水漏れのない棄てる桶に竃の灰を一杯入れて来い。」
「は、はい。」
部屋を飛び出すウサミミっ娘。
スグに用意してきた。
魔法で桶に水を入れる。
「おい!!お前ら、この子供の命を助けてやろう、コレは我家に伝わる秘伝の魔法だ、口外したら命が無いと思え、ソレは家族全員と縁者に及ぶと思え。」
無言で頷くガチムチウサミミ。
よーっしいくよ~♪。
足の親指に蝋燭で炙った針を刺す。
痛がる子供。
未だ神経管まで達していないのかもしれない。
これは、リンパ管の腫れは別モノだと思ったほうが良い。
子供のチャクラを外部から廻して免疫を強化する。
反応は良い、問題は…ウィルスか…。
ドコで切断しよう。
10日建っていないから最低傷口上部から10cmだが、ヒザに掛る。
ヒザは正直、造詣がめんどくさいのでヒザ上にしちゃおう。
モモの付け根にベルトを巻き伸ばし棒で巻き閉める。
即席止血帯だ。
後は準備と手順だ。
一回やっているので今回は効率を考える。
無駄に血を流さない。
完璧に治す。(リハビリ不要)
一撃で終わらせる(ここ重要)
ウェイと丹田で完璧な状態にした。
サーチしまくって足の完成体を頭の中で創造する。
「おい、娘、血が落ちた場所は全てその灰と水で練った水を掛けろ。血に触れるな。」
俺は収納の肥やしの白い能面を被る。
よーっし行っちゃうよー。
子供には板を噛ませてある、痛いはずだからな。
光のリングで子供のひざ上を切断する。
痙攣する子を押さえ込む父と母。
止血帯を緩めながらゆっくり確実に治癒魔法を掛ける。
「おい、その切った足と血が付いた物は確実に燃やせ。直接触れるな。灰にしろ。灰は壷に入れて人の来ない場所に埋めろ。手や足は触れて無くても竃の灰と沸かした水と練ったものの上澄み水で良く洗え。」
「は、はい。」
見たもの全てが信じられない表情の母親。
子供に生えた真新しい足から目が離せないようだ。
「よし、終わった。後は何か消化の良くて精の付く物を食わせてやれ。肉とか豆だ。」
全身にヒールとサーチを掛ける状態は良い。
未だ熱は下がっていないがコレは体の防衛反応だ一晩眠れば治るだろう。
「は、はい、解かりました。あの。このお礼はどうすれば?」
「ああ、関係ない、この娘が王都に戻らなければ俺の任務は達成しない…。そうだな。何か首輪に成る物は無いか?子供用のベルトでも良い。狼を拾ってな…。」




