105.目覚め
何か騒がしい。
目が覚めてしまった。
うさみみっ娘が体を揺すって起こしている。
「魔道士様。又、狼がやってきました!!」
マジかよ未だ昼前だぜ。
ココの狼は24時間営業か?
24時間戦える企業戦士に通じるモノがある。
きっと下っ端狼はブラック勤務だ。
少々寝たり無いが頬を叩いて渇を入れる。
立ってクリーンの魔法で付いた稲藁を落とす。
「よし、案内しろ。娘。」
ヤレヤレまた戦の準備だ。
村の正面広場は鍬や鎌で武装した村民が柵の向うの狼たちとにらめっこしている。
「どうした村長。」
「あの、森から狼の集団と支配者クラスが出てきました。」
指差す先にはかなり大きな白銀の狼がいる。
その他は良く見る狼とは、毛並みが違うのも居る。
支配者クラスは熊ぐらいの大きさだリアルで見ると冗談にしかみえない。
『我が眷属を殺したのはドイツだ!!』
狼が喋った!!流石ゲーム。
「俺が狼の襲撃を受けて撃退した、何か文句在るか?」
『貴様が我が配下の眷属を殺したのか?』
「貴様の配下かどうかは知らん。狼の襲撃を受け命のやり取りをしたのは確実だ、人に狼の見分けはできん。」
『ならば間違い無いな。貴様は多くの我が同胞を殺めた。貴様を殺す…。』
でかい狼が魔力を展開しているので。
素早く妨害する。
驚いた顔の狼に今度は確実に魔力構成を展開して。
投げナイフをマッハ6まで電磁加速。
ラフな魔力構成だと反動がデカイ。
同じ失敗はしない。
ナイフは大きな狼の眉間に刺さり貫通した。
いや、どうやら内部でナイフが粉々になり肉ごと後頭部が飛び出したようだ。
まだ、反射で痙攣しているが。完全に脳が破壊され後ろから飛び出している。
即死だ。
困ったな、投げナイフがこんなコトで粉々になるのか?
GUIを確認すると。
”投げナイフ(刃なし)×50”
”劣化投げナイフ(刃なし)×793”
ああ、しまった焼き戻ししてないほうを使っていたか…。
まあ、イイか。
結果は同じだ。
倒れた支配者クラスを見て無言の狼達。
何故か村人達も無言だ。
「おう、娘、腹が減ったぞ。何か食い物は有るか?」
「あ、はい、お昼を用意します。」
「おう、狼共。しばらくココラで狩りをするから文句が有るならかかって来い。イヤなら森に引っ込んでろ。」
イモと根野菜のシチューと硬いパンを食べる。
肉は入っていない、許せんな。俺が領地を貰ったら領民は毎日、肉入りシチューが食べられるようにしてやらねば。
その分働いてもらうが。
昼を食い終わると倒した狼を収容する為に門の外に出た。
そういえばこの大狼、ゲームの初めの中ボスで居たな。
森に入ると出るボーナスキャラ的な大狼。
東の森はゲームでは選択できなかったから別の個体か?
学園の野外演習が森だからソレが東の森かもしれない。
中ボス狼に近づくと側に一回り小さな狼が居る。
コイツも白銀だ、子供かつがいか?
尻尾は垂れたまま座っている。
一回り小さいとはいえ大型犬より2周りデカイ。
コチラを非難がましく見ているが威嚇はしてこない。
死んだ中ボスを収納する。
驚いてコチラを見ている様子だ。
タダぼんやりコチラを見ている。
「なんか用か?いいたい事が在るのか?」
狼に言っても仕方ないが話しかける。
『いえ、何も有りません。勝者のするコトです。』
コイツも喋った!!
「早く森に帰れ。人に狩られるぞ。」
『いえ、森には帰れません。父が死んだので弟が群を率いています。群に戻れません。』
一匹狼か…。
「人の世だ、草原に狼は住めないぞ。」
『はい、解かって居ます…。』
うん?なんだ?何が言いたいんだ?このケダモノ。
ただ、コチラを非難がましく見ている。
何か閃く。
まさか…。
GUIを確認する。
表示には。
”モンスターがなかまになりたそうにこっちをみています。なかまにしますか? →はい いいえ”
ゲーム違うだろ!!
弟狼(^゜Д゜^)<ニンゲンやばい、草原コワイ…。




