這い進む
生まれてから3週間ほど経ちました。
その間に3つの大きな出来事があった。
一つ目は親が帰ってきたことだ。
完全な大人のグランドエピオル。
一言で言うならやばい。
威圧感は半端じゃなく、動物園で観た大型肉食獣なんて目じゃない。
正真正銘の怪物だった。
そんな親が食料を持ってきてくれたのでとりあえず餓死する心配はなくなった。
二つ目。
俺は新たに二つのスキルを手に入れることが出来た。
どうやらスキルは経験によって手に入れることができるみたいだ。
覚えたスキルはこれだ。
思い出すⅥ
メリット
過去の出来事を思い出す行動に補正が掛かる
デメリット
なし
このスキル、毎日ハカセの事を考えていたら覚えていた。
効果はそんなに高くなく、あんまり意味がない。
こんなのなくてもハカセの事ならなんでも覚えているし。
他のスキルのレベルに変化していないのに、このスキルだけⅥになっている理由は常時発動しているからだ。
ハカセのことが恋しくて、思い出に浸っていたらバンバンレベルが上がっていったのである。
やることがなくて暇だしね。
もう一つのスキルが問題で3つ目の出来事はこれに関係する。
そのスキルはこれだ。
間引き子Ⅹ
間引きされた者の証
メリット
なし
デメリット
敵を引き寄せやすくなる
つまり俺は捨てられたのです。
理由は兄弟が生まれたからだ。
気付かなかったけど俺の近くには複数の卵があり、一週間前辺りから続々と孵化し始めた。
問題なのは兄弟たちは何の障害なく生まれてきたことだ。
最上位種であるグランドエピオルだけど、採ってこれる食料に限度がある。
向こうは優良児でこちらは未熟児。
食料は限られているので強い個体を残そうとするのは当たり前のことだ。
納得はできないけど。
それで三日前に巣から追い出された。
殺されなかったのは不幸中の幸いだ。
そういう生き物もいるらしいし。
しかし、殺しに戻ってくる可能性もあったので、身体を引きずりながら這うようにその場を離れた。
何故そんな状態になったのかというとそれしか移動手段がなかったからである。
金剛鉄壁のデメリット、体重10倍は伊達じゃなかった。
未熟児でステータスも落ちてるからなのか歩くどころか立ち上がることさえできなかったのである。
ただし、そんなに大変じゃなかった。
地面に体が擦れても痛くなかったし、休まずに数時間移動し続けることができた。
さすが最上位種だ。スペックが凄い。