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◆ある成り上がり貴族のお話

 鬱だ、とんでもなく鬱だ。

川の近くに造られた野営地で項垂れていた。



 この町は年に一回程度だが邪類の襲撃がある。

その邪類はモブゴブリンだ。

 モブゴブリンは鬼類最下位で強さは大したことがない。

今の俺は進化したばかりでステータスが落ちているが問題はないはずだ。

それにカンストしていたスキルの一部は中位スキルにランクアップしている。



 俺のスキルの数は常人よりも多い。

なぜなら俺の生まれは2位だからだ。

そこから4位に上げるために数々の修羅場を潜り抜けてきた。

その成果として多くのスキルを身に付けた。

たかが1位の雑魚には負けない。



 鬱なのは俺が討伐隊の指揮官なんかに選ばれてしまったことだ。

出来れば断りたかったが、所詮貴族になっても元平民の婿入りだし、爵位も一番下のハイナイトだ。

この町の領主であるヴァイカウントには逆らえない。

 それにこれは貴族の義務だ。

義父は貴族なので当然中位種だが、戦える身体ではなく、長く義務を果たしていなかった。

 戦える男が入ったのでこれ幸いと思われたのだろう。

義父の親類が推薦したらしい。死ねよマジで。



 奴らが進軍してくるのは川の反対側だ。

今偵察に行かせているが、その結果によって脅威度が変わる。

100ぐらいの群れなら楽勝だが、500を超えるとやばい。

親父が死に、義父が戦うことができなくなるほどの大怪我を負った時も500を超えていたらしい。


「大変だ!」


 偵察に行かせていた男がテントの中に駆け込んできた。

この男は平民時代からの知り合いだ。今回の出兵にも付き合ってくれた。

そもそもこの討伐隊のほとんどは俺の知り合いだ。

成り上がりの貴族でも軋轢が出ないように領主が配慮してくれたのだ。



「どうした?」

「数は500以上!ゴブリン、ホブも混ざっている!」

「馬鹿な!」


 それだと話が変わってくる。

モブゴブリンが持っている武器は主に棍棒だ。

だが2位のゴブリンとその3位のホブゴブリンはちゃんとした武装をしてくる。

 今から援軍を要請しても間に合わない。

やるしかないか。



 そうしてゴブリンたちとの戦いは始まった。

敵の数は報告通り500以上はいる。

こいつらはモブゴブリンを先頭に川を越えようとする。

ここに橋はないが、流れはそんなに速くないし、浅いので歩いても渡れるのだ。

 

 だが、水の中を進むのは容易ではなく、川幅が広いのでそう簡単には渡り切れないはずだ。

奴らが渡りきるまでにどれだけ数を減らせるかが勝負の分かれ目になる。



 雨のように矢と魔法を降らせているが打ち漏らしも出てくる。

厄介なのは盾持ちの個体だが、それは俺が射殺していく。

盾を構えていてもそこを避ければいいだけだ。

この程度容易い。



「そろそろか……」

 先頭の個体は川の三分の二まで進んでいた。

こちらの前衛に檄を飛ばそうと腹に力を籠める。

 だが、それは途中で中断することになった。

妙な音がする。

何だこの音は?

激しい戦闘音のせいで誰も気づいていない。



 音は上流の方から聞こえる。

視覚強化系スキルを総動員して見えたのはこちらに迫る水の塊だった。


あれは濁流か?ここ数日大雨など降ってないぞ!?


「全員今すぐ川から離れろ!」


檄を飛ばさずに出した命令は退避命令だ。

その指示は長年の信頼関係もあったので速やかに実行された。



 ぎりぎりだったが自軍は退避に成功した。

ただ多くのゴブリンが濁流に呑まれていった。

残存はわずかだ。これならいける!



 そこから全滅させるのに10分も掛からなかった。

こちらの死者はゼロだ。投石などで怪我をしている者もいるが、この程度なら魔法などですぐに治る。

ホブが混ざっている群れを相手にこれは奇跡だ。



 町への帰路の途中、今回の出来事について考える。

あの濁流はおそらく上流で何かが起きたのだろう。

本来であれば、上流の調査を行わなければならないし、その命令もあるはずだ。



 だが、そろそろ奴が来る時期なのでそれは遠慮したい。

五年に一度あるあれの調査は地獄なのだから。

ちょうどいいし、新婚旅行がてらしばらく町を離れよう。

調査はあいつに押し付ければいいしな。

 あいつの実力は3位だが高い。

問題なくこなせるはずだ。

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