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呼び声

 事の始まりは夕食を終えた時だ。

少し離れた場所から甲高い鳴き声が聞こえた。

その明らかに狼類とは違う鳴き声を耳に入れた瞬間、身の毛がよだつような感覚した。

まるで黒板を爪でひっかいた音を聞いた気分だ。



 あまりの不快感に身悶えていると突如、右翼を何者かに噛みつかれた。

バカ犬の時と違って、その牙は俺の体に突き刺さる。

痛みで顔が引き攣るが、大きく翼を動かし、それを振り払う。

 久しぶりの痛みで驚いただけでダメージ自体は大きくない。

一応ステータスを開いて確認したけど、体力値は一桁しか減ってなかった。

周囲から無数の足音と唸り声が聞こえる。どうやら囲まれたみたいだ。



 どこから現れたんだ?近づいてくる音は一切聞こえなかったのに。

考えるのは後だ、こいつらをどうにかしないと。

気合を入れるためにお腹に力を入れて咆哮上げた。これは威嚇も兼ねている。

気合を入れるのは成功したが、威嚇は効果がなかったようで、奴らは逃げ出すことなく今も俺の周囲にいる。

 


 その内の一匹が雄たけびを上げると、それを合図にこいつらは一斉に跳びかかってきた。

両翼を振り、何匹かは落とせたが、数が多すぎる。

撃ち漏らした奴らが俺の全身を噛みついてきた。


上等だ!全員蹴散らしてやる!



 それから20分ほど掛かったけど、全て倒すことに成功した。

バカ犬よりは強かったけど、大したことはない。

これで一安心だ。

そう思っていたら、再びあの甲高い鳴き声が響いた。



 足元からもぞもぞと動く音が聞こえる。

足元だけではない、その音は360度から聞こえてきた。

それから数刻もしない内に再び獣の唸り声が響く。

おいおいまだいるのかよ。いいよ、また蹴散らしてやるさ。




 疲れた……早く寝たい。

襲撃が全く終わらない。

かれこれ何時間戦い続けているんだろうか。

間引き子の敵寄せ効果があったとしてもこれはおかしい。

思い当たる節はある。あの甲高い鳴き声だ。もしかしたら、あれがこいつらを引き寄せているのか?

 だけど、いくらなんでも多すぎる。

最低でも300は倒しているはずだ。

何か種があるはずだ。それを見破らなければやられる。



 現在進行形で噛みつかれているが、ダメージは少ないし振り払うよりも思考を優先しよう。

まずは情報収集だ。感覚を最大限まで研ぎ澄ませる。

 初めは聴覚だ。耳を澄ませても周囲の音で気になる物はない。

予想通りの結果だ。聴覚は常に最大限活用しているのだ。

 次は触覚。これも特に気になるところはない。



 そして、嗅覚。周囲に漂う匂いを嗅ぐ。

草などの植物の匂いにまじって変な臭いがした。何だこの臭いは。

もっと思い出すのおかげですぐにその臭いの正体を思い出せた。

これは肉の腐臭だ。だけどおかしい。腐らせてしまった肉は地中に埋めているはずだ。

まさかこいつらって……



 だが、まだ確信はできない。

確信を得るために最後の味覚を使おう。

一番強い匂いがする奴に喰らい付き、その肉を口に含む。

まずい!

思わず、その肉を吐き出してしまった。


やっぱりそうか。こいつらは死体。ゾンビだ!


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