表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

平安貴族とオレ3

作者: 正記貞信

本日快晴。風無し、お金無し、湿度有り。

まもなく正午。

日差しは、時間と共に強くなる。


「いつものことだが…暑い。」

団扇変わりに、プリントの束で扇ぐ。

「地球温暖化、てやつかい?まったく。昔は過ごしやすかっただろうな。」

半袖のシャツに、汗が滲む。

研究室で夜を明し、牛丼屋で、遅い朝食を採ってきた所だ。


戻ってすぐに、窓を全開にする。

開け放った窓からは、風の代りに、セミの声が聞こえる。


「先生は当然のように、言うけど、俺には京の配置とか、わかんねーっての。」


レポートについて質問にいった時、さも

「常識」といった顔で、京における貴族の邸宅の配置について、あれこれ言われた。

残念ながら俺には、さっぱりわからないため、自分で調べるしかない。



本棚の中段にある、大判の事典を引っ張りだし、目的のものをさがす。本棚は背が高いから、よく使うものは、中段に置いてある。

「平安京の図は、どれだったかな、と」ふんふんと、他のページに見とれつつ、暫くして、見つけた。


図は折り畳み式になっていて、広げてみる。


「字がちいせーよ」

老眼のように、思わず図を目から遠ざけとしまう。


細かな字で、一条とか二条とか、色々ある。


京の図では、よく言われる通り、碁盤の目のように道が整備されている。

よくもまあ、こんだけのものを造ったもんだ。


「摂関家の家はどこだっけ、か。…おお、あったあった。」


ごちゃついた文字の中から、その旨を記したものを見つけた。


地図を見て右側、左京には、道長・頼通等で摂関家の邸宅がある。

他にも、有力貴族の邸宅が並ぶ。


「こりゃすごい。さしずめ、永田町みたいなものか?詳しいことはよく知らんがね。」


「ながたちょう」というものが、どういう所かわかりませんので、なんとも言えませんが…京の中心区画ですよ。御幸の際にも、この辺りの道を、よく通りますし―


「ふーん。」

この

「声」にも、いい加減、慣れて来る。


いつか読んだ、貴族の日記やその他の記録を思い出す。

そこには、たしかに

「彼」に言われた通り、『二条を通った』という記述があった気がする。「お前、結構詳しいのな。」

素直に感心する俺。


―そうでしょう、そうでしょう。なんてったって私は…そりゃ、そんなに偉くはありませんでしたけど…―

明らかに、誇らしげな、嬉しそうな声で、

「彼」は続ける。



それから暫く、

「彼」の話を聞いて、また、レポートに取組む。

なんて、真面目な大学生なんだろうと、少しだけ、偉ぶってみる。



少し、風が出てきた。これなら涼しく、快適に勉強できそうだ。

「んんっ」

大きく伸びをして、机に向う。

快調、快調。



―なんですか!私の話、殆ど聞流していたくせに!―

上機嫌だった

「彼」は、不機嫌になっていた。



後ほど、参考文献とかもあげとかないと、いけないですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初から読ませて頂きました。いきなり史実の人物の声が聞こえるなんて面白いですね。主人公の事もなげに受け入れている部分はびっくりですけど、平安時代は好きなので読んでいて楽しいです。残念だったの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ