事後承諾 03
いや、こいつの存在に頭を悩ますよりかはもっと先にするべきことがある。
「俺に体を届けにきてくれたんだろ。早く返してくれ」
すっかり流れに乗せられていたがいつまでアキトは俺の体を使うつもりなんだ? もう鬼退治は終わったから返してもらってもいいだろう。にらむ俺をものともせずアキトは
「あーすまん。事後承諾になるがしばらく貸してくれ」
ちょっと教科書を貸してくれというトーンと同じようにそうのたまった。
「はっ?」
「ちょっとまだ厄介ごとが片付かなさそうでな。しばらくこっちの方の次元にいたほうがいいんだよ。んで、こっちで動くにはこの状態のほうが都合がいいんだ。だから借りるわ」
「いや、ちょっとまてよ! 俺の都合は?! 俺この状態でどうすればいいんだよっ」
「お前は俺に借りがあるよな? 鬼から助けられた借り。それでチャラってことで。そのままの状態で体の周りを漂ってていいぞ」
俺は気にしないから、めったに体験できない魂の状態を楽しむとといい。そう笑顔をいただいたが、楽しめる気がしないし、俺が気にするわっ。必死でわめくもののアキトはものともしない。この状態では触れられないのがもどかしい。
「なるべく早く返すさ。ふぁ……さすがに疲れたわ。他人の体だからかな。ってことで俺は寝るわ!」
「いや、待てって。俺は認めてないっ」
「認めたほうが楽だぞー。この現状は君じゃあどうしようもない」
まあ、一晩時間はあるんだ。ゆっくり落ち着けよ。そういってアキトは俺の布団へともぐりこんで言った。
おいおい。学校行くのにあと4時間しか時間が……
「あ。明日学校じゃねえかっ、起きろっ、明日どうすんだよっ」
触ろうにも触れない俺は必死に耳元で叫ぶが、アキトはすでに夢の中のようだ。
「まじでどうすんだよ……」
途方にくれる俺の横で、目覚まし時計がゆっくり、確実に時を刻むのであった。