桜並木にて 06
横からそんな声が聞こえたかと思うと俺は地面に落ちた。ナニカ――鬼の手が消えて、俺はケツから地面へと落ちた。あっちこっちが痛い。痛すぎる。
「げほっげほっ」
咳をしつつ前を顔をゆるりと上げ見てれば、鬼と俺の間に人がいた。見覚えのある学ラン姿に髪の色。ただし手に持っている刀が覚えがない。
「失せやがれっ!」
って、刀?!なんでそんなものをこいつは持っているんだ。銃刀法違反?えっ、どういうことだ。俺が混乱している間に、鋭い声とともにそいつが刀を鬼へと突き刺した。
「――――」
断末魔というのだろうか、すさまじい声を鬼があげ消えていく。まるでそこに最初からなにもいなかったかのように。空気へと溶け込むように一瞬で。
唖然とする俺の前で、そいつは振り返った。
「いやあー危ないところだったな」
俺は思わず息を呑んだ。別にそいつが超絶のイケメンとか不細工だったとこではない。ただ、そいつはひどく見覚えのある顔をしていた。
「は、え。なんで?」
「忘れ物を届けに来てよかったぜ」
そいつはドヤ顔でこちらを見下ろしつつ自分の胸をたたく。どうみても俺そっくりな顔である。
「忘れ物……?」
まったくもって状況がつかめない。しかし、ひとつだけわかったことがある。自分のドヤ顔なんて見たことがないが腹正しい。
「これこれ。体を忘れてたんだよ。ちょっと俺がいま使ってるけど、届けたから問題ないよな」