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桜並木にて 05
混乱する俺に更なる追い討ちがかかった。俺そっくりなやつを吹く飛ばしたであろうナニカがこちらに近づいてきたのだ。
何だ、あれは?あれは何なんだっ――
薄汚れた腰巻のような物体の下から足が、上には筋肉隆々な腹回りや胸とふとましい腕が見える。顔もある伸びて手入れされていないであろう髪も見える。容は人間に近い。でも人間じゃない。
「逃げろっ」
切羽詰まった声が聞こえた。そうだ、逃げないと。アレから逃げないと。
そこらに設置されている自動販売機よりもでかいナニカは
悠々と
俺との距離を縮め
「ぐっ」
大きな手で俺の首をつかんだ。ゆっくりと、しかし手には力をこめてナニカは俺を持ち上げる。
苦しがる俺を見てゆがんだ口もとから覗く牙のようなとがった歯が、つぶれたような鼻が、赤い瞳が俺の視界に映っては消えていく。
太くてたくましい腕と足を持ち、人間と同じような顔の造詣をしていながらでも人間じゃないナニカ。
額に突起物をもつナニカはきっと、こういうのだろう
「この糞鬼がっ!お前の相手はこの俺だってーのっ!」