届いたもの 05
「先にオレがやってみせるから、あとはマネして一緒にやればいいぜ! アキトさんいいですか?」
「準備は万端だ。いつでもどうぞ」
アキトはコガラシが説明をしている間に、妖刀を身につけたらしい。やばいヤツを呼び出すってのに気負った様子は見られなかった。
「ちなみに、このひょうたんはどのタイミングで使えばいいんだ?」
「そうだな…本命が釣れてた時点で、ひょうたんを使う準備をしてくれればいいかな。あとは俺たちが戦闘を開始した時点で使い始めてくれ」
「さあ、少年は安全のために空中に行ってくれ。んで、オレと一緒に鬼呼びしようぜ!」
そう言ってコガラシは二回テンポよく手を打ち鳴らすと、大きな声で叫んだ。俺もあわててジャンプして空中へと浮かび上がる。
「鬼さんこちら、手のなるほうへ!」
「鬼さんこちらっ、手のなるほうへ!」
「まだまだ声が小さいっ!ほれ気合をいれて!手のなるほうへ!」
「わかったよ、鬼さんこちらっ!手のなるほうへっ!」
小さいころでさえこんなにこのセリフをここまで大きな声ではやし立てたことはないんじゃないか。いや、そもそも鬼ごっこで真面目にセリフを言ったことがあったっけ。二人で何回か叫んでいたら、いつの間にやら2,3匹の小鬼たちがどこからともなく現れた。
「引きがいいね……うん。使い心地に違和感はないね」
アキトはそいつらに難なく接近すると妖刀で切り捨てた。まじでこれで呼び出せるらしい。
「よっし、少年!この調子でどんどんはやしたてていくぜ!」
「はいはい。鬼さんこちらっ!手のなるほうへっ!」
何回か声を張り上げて鬼呼びを行った時だっだ。それは唐突に起こった。身に覚えのある重たい空気が辺りを支配したかと思うと、こないだの鬼が姿を現す。ちょうど俺の真下に現れたそれは、真っ赤でよどんだ瞳をこちらに向けていた。目が合ったっ……?!
「今回でケリをつけるぞ!」
「了解っす!こっちを向けってっ――!」
コガラシが元気よく返事をしつつ鬼へ駆け寄り足払いを仕掛ける。俺のほうへ視線をやっていたにも関わらず、それをひょいと避けた。しかし、避けられるのは想定内だったのか、コガラシは手足を使って流れるよう3連撃を叩き込む。
「 」
決定打にはならないものの、意識をコガラシたちに向けるのは成功したようだった。鬼は俺から視線をはずとコガラシたちに狙いを定めたのだった。




