届いたもの 04
差し出された包みをアキトは慎重に受け取り、中身を出した。紅色の風呂敷からでてきたのは、刀である。妖刀というのだからもっとおどろおどろしいものかと思ったが、そうでもないらしい。
「これでごまかしになればいいんですけど……」
「なんとかして、ごまかしきるんだよ」
不安げなコガラシに、アキトはにっこりと笑いつつも言い切った。そんなやり取りをみてナツクサはあきれたようにアキトの頭をはたく。
「なんとかした後始末を、こっちに毎回やらせるのはやめてほしい」
「しっかりと口止め分含めてお金をぶんどっているじゃないか」
「当たり前だ。慈善で寿命を縮めるほどいい性格はしてないもんでね」
「でもなんだかんだで手伝ってくれるナツクサちゃん、大好きっす!」
コガラシがそういいつつ、アキトの頭上にいるナツクサに近寄るがそれを再びふわりと飛んで避けた。
「さて、巻き込まれないうちに今度こそお暇するよ。仕事はまだまだあるんだ」
随分と仲がいいようなやり取りだ……コガラシのあしらいが少し見ていてかわいそうな気もする。
「引き留めて悪かったな。使い終わり次第、また連絡する」
「ああ。壊すなよ」
そう言い残し、最後までナツクサはコガラシを無視する形で、飛び立っていった。
「ナツクサちゃん、またね!」
めげずに手を振り送り出すコガラシであったが、アキトが咳払いをするとさっと緩みきった表情を改めた。それにつられて俺もなんとなく地面にしっかりと立つような感じで漂う。
「さて、とりあえず準備は整ったわけだ。手筈は昨日の戦闘と同じでいいな?」
書類のやり取りといい、コガラシが敬語を使っていることからアキトはわりと偉い立場だったりするのだろうか。人にお願いするのに慣れてる感じもするしな。
「はい! あとは呼び寄せの方法なんですけど、地道に鬼呼びでいいですかね?」
「あれか……地道すぎないか?」
「一応、雑魚の鬼は昨日で片づけたので確率は低くはないかと。妖刀の慣らしに何匹か無関係なのもいた方がいいと思うっす」
「なるほどねえ……。坂月君もいるし、二人でやってもらえばいいかな」
「俺も?」
ひょうたんを扱う以外にさらになにかやらされるらしい。鬼呼びってなんだか専門的なことっぽいんだが、なんなんだ?
「簡単な呼ぶ儀式だよ。幼いころに友達がいれば遊んだことあると思うよ。まあコガラシが説明してくれるさ」
「ほら、鬼さんこちら、手の鳴る方にーって鬼ごっこしたことない?」
軽く手を打ち鳴らす動作をしたコガラシに思わず俺は驚いた。
「そんなんで鬼が呼べるのか?!」
目隠し鬼以外でも鬼ごっこで鬼をおちょくるのに使ったことはある。子供の遊びに日常的に使われるような言葉だぞ?!
「これが呼べちゃうんだな。いつからこの言葉並びが使われていたと思う?」
「あーえっと、だいぶ前から……?」
そんなことは考えたこともなかったが、目隠し鬼以外にも確か遊女との遊びの言葉でもあったはずだ。そうなると江戸時代だから……300年ぐらい前とかなのだろうか。
「古くから、多くの人に使われた一節だから力があるんだ。昨日かごめの歌で捕獲をしようとしたの覚えているだろう?」
「そういえば、そうだな」
「あれも、リズムと言葉と動作は昔とは違うものもあるだろうが、型としては昔からあるだろう? 昔から使われているモノには力が宿る。妖力とか呪力がないやつでも使えるんだ」




