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届いたもの 03

「ちょっとばかし借りたんだよ・・・坂月くんいつまで埋まってるんだい?」


 振り向いたアキトが呆れた様にいうので、俺はすっと地面から抜け出した。そしてふよふよとアキトの隣に並び立つ。


「借りたね……。まあ深く追及はしないさ」


「そうしてくれると助かる。これ、瘴気専用のやつだよな?」


 肩をすくめたナツクサに、アキトはお礼を言いつつ、受け取った包みを開けた。俺も気になって見てみれば、なんの驚くこともない。出てきたのは、大きいひょうたんだった。これであの黒いやつを吸うわけか。


「ああ。栓を抜いて瘴気に向けてくれれば、勝手に吸い込む。瘴気以外は吸い込まない優れものさ」


「だそうだ。坂月君、頼んだよ」


「ええ?! 俺が使うの?!」


 びっくりして聞き返す俺に、アキトは笑顔でひょうたんを渡そうとしてくる。受け取らないように距離をとるが、それでもアキトはひょうたんを差し出してくる。まじかよっ


「だって、俺もコガラシもそれが必要な状況になってたら手が離せそうにないからな。なに、簡単だよ。大丈夫だって」


 とうとうひょうたんを持たされた。ひょうたんこそ、日常生活で見るモノではないが、お店で売ってそうな普通のものに見えるし、対して重いってわけでもない。本当に使えるのか、これ……。戸惑う俺をよそに二人は会話を進めていった。


「なるほど、だからいつものと違って、専用のを指定してきたのか。浄化の鈴のほうがよかったか?」


「いや、高級鈴でも使わないと効かなそうだからいいよ。こっちのほうが安価で強力だからな」


「ふむ。店的には鈴のほうが嬉しいんだが……。まあ、いい。やかましいのが来る前に私は退散しよう」


「コガラシの扱いが相変わらずだな……。ありがとう。気をつけて帰るんだよ」


「ああ。今後とも4-4商店をごひいきに」


 ナツクサは軽いお辞儀をしたかと思うと、ダンっと右足で地を踏み鳴らした。すると再び煙が立ちあがり彼女を覆い隠す。それから間を置かずカラスの鳴き声と、羽ばたく音が聞こえたかと思うと煙が晴れた。


「アキトさんお疲れ様っす!」


 不意に背後からコガラシの声が聞こえた。振り返ってみれば、やや半透明な状態のコガラシが神社内へと姿を現していた。背中には細長い荷物を背負っている。なんともタイミングのいいやつである。


「おお。いいタイミングできたな」

 

 笑顔で迎えたアキトに比べて、カラス姿であるから分かりにくいが、ナツクサはめんどくさそうな雰囲気だ。


「ん? どういう意味です……ナツクサちゃん!!」


 こちらに向かって歩きつつも、俺たちの背後にいるカラスに気が付いたらしい。コガラシは嬉しそうにナツクサに勢いよく駆け寄った。それを見てナツクサは嫌そうに一鳴きしたかと思うと、ふわりと飛びあがって、向かってくるコガラシを避ける。そのついでに、コガラシの頭に羽をたたきつけ、アキトの頭の上へと避難した。


「こいつは馴れ馴れしすぎるのさ」


 カラスの口から女の子の声が聞こえるって変な感じがするけど、一体どういった仕組みなんだろ。そして、俺の頭皮傷つかないよな……?


「ちょーっと軽いハグっすよ? 馴れ馴れしくないっすよね……」


「それで、申請できたかい?」


 がっくりと肩を落とすコガラシに慣れているのか、アキトは取り合わずに質問をした。コガラシの方もそのあしらいに慣れているのか、さっとたたずまいを直す。


「はい。申請して、ちょっとばかし強引ですが借りてきました」


 そういってコガラシは背中の包みをおろし、アキトに差し出した。






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