届いたもの 02
それからしばらくして、俺たちは特に鬼に遭遇することなく神社へとたどり着いた。神社の中に入って俺は真下のアキトに声をかける。もちろん、あたりに人がいないことは確認済みだ。
「それで荷物ってなんなんだよ?」
「昨日鬼を切ったときへんに黒いやつがでただろう? あれを吸い込むものを頼んだんだよ」
アキトは俺と視線を合わせるように一歩下がってこちらを見上げた。
「あれってやばいものなのか?」
「ああ。毒みたいなものだからな」
色やアキトたちの対応を思い出すと納得である。
「そう手に入りにくいものでもないし、伝えた時間通りに来てくれると思うんだけど……」
そういいつつアキトは俺から視線を外すと右へ、左へと視線を走らした。それにつられて俺も辺りを見回してみる。空から来るのか……?そう疑問を声に出す前に、遠くから何かが飛んでくるのがわかった。ばさりばさりと近づいてくるのは
「カラス?」
小さなカラスだった。カラスなんて街中にいるから違和感がないはずだが、飛んでくるカラスはなぜだか大きな風呂敷袋を足にひっさげている。タイミング的にアキトの言って荷物か?
「お、来たか」
俺の言葉に反応し、アキトもカラスを見た。どうやら正解らしい。そのままカラスの来る方へと何歩か近づくと手を挙げた。その間にもカラス神社の敷地内へとたどり着き、アキトめがけてゆるやかに下降する。俺の方に向かってきて突っ込むのではないかと身構えていたので安心だ。カラスがアキトの足もとに着地するとともに少し首をかしげた。
「……! 俺アキトです。姿違うけど」
カラスが首をかしげたことに一瞬不思議そうにしたが、すぐに名前を名乗った。するとカラスは怪訝そうな感じをかもし出したが、アキトが何も言わないとそのまま一鳴きする。
「?!」
するとポンと軽い音とともに煙がカラスを覆い、やや大きめのシルエットが浮かび上がった。
「4ー4商店より届けにきたぜ」
気の強そうな声の主はその煙から現れた。
「カラスが人に?!」
いや、人と言うのは語弊があるかもしれない。なんせ煙の中から現れたその姿は人の形をしているが、背中に真っ黒い羽をつけているのだ。上から見ているため顔が見えないが声からして、もしかして美少女だったりするのか……!つい気になって慌てて下に降りてみる。慌てすぎて腰まで地面に埋まったがそこは置いておく。って、ちょうどアキトの真後ろに埋まってしまった……! 身を乗り出すようにとはいかないが、アキト背後から顔だけなんとか覗かせ、少女の顔を見た。
「ナツクサちゃんありがとう!助かったよ!」
「これが飲み込んでポイだ。確かに届けたからな」
ナツクサと呼ばれたカラスの子は、そういって手に持っていた風呂敷をアキトに渡した。カラスがこんな黒髪の美少女になるなんて……どうせなら筋肉隆々な鬼よりもこんな異形と出会いたかったっ……! 今まで出くわした異形はパンイチなナイスガイって風貌だ。それに比べてこのカラスっ子はやや小柄な体型で、筋肉とは程遠そうである。
「ん?」
そこで彼女は俺に気がついた。
「あーこんにちは?」
彼女の少しつりあがった眼と視線がばっちり合ったので、とりあえず挨拶しとく。するとアキトと俺の顔を何度も見てきた。
「いつもと違う面してるなと思ったけど……変化とかじゃないのか?」




