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届いたもの 01

 半透明状態で迎える二回目の朝が来た。今日は学校が休みで、欠席しなくていいことに安心する。

 あの後、アキトにアドバイスを貰いながらなんとか浮かび上がり方と落下の仕方を身に付けた。ただ、イメージを補うためにぴょーんとかジャンプ!など言うという条件付きである。たちの悪いことにちゃんと口に出して、ある程度の声量で言わないといい感じに飛び上がれないのだ。……確かに口に出した方がイメージが付きやすいだろうけど、男子高校生がぴょーんと叫ぶなんてやってられない。まあ、これで安全が確保できるし、どうせこの状態なら知り合いには見られないって考えればいいかと納得することにした。

 

「おはよう」


 昨日よりも早く起きてきたアキトが、俺の部屋から出てきたのか、階段を降りてくる。しっかり動きやすそうな服装に着替えているあたり、こいつの適応能力が欲しいもんだ。


「おはよう。母さんがご飯作って仕事行っているから食べていいよ」


「おお! ありがたい……階段の下にいたってことは夜通し練習していたのかい?」


 家の中で浮かび上がるとなると、高さがそれなりにいる。天井を突き破るのは勘弁したかったため、一番天井が高い階段下で浮上の練習をしていた。

 

「夜通しってわけじゃない。見えないからって親とこの状態で遭遇したくないからな」


 初日は出くわさなかった親ではあるが、さすがに二日連続で顔を合わせないというのは無理な話だ。昨日は母親の帰宅に併せて、俺はすかさずアキトをベットに押し込んだ。胃痛が続いている振りをして、夕飯は良くなり次第食べるとアキトを通して伝え、極力顔を合わせないようにする作戦である。返ってきた母さんの反応は心配と不信感の半々であったが、なんとかごまかせたとは思いたい。


「なるほど。夜中にぴょーんって言いながら階段のところにいるの見られるとかきついもんな……」


「えぐるのやめてくれる!? 昨日もいったけどぴょーんは言わないからな!」


 さっと階段を下りてきて台所へ向かうアキトの後ろに着いていき、俺も台所に向かう。


「ぴょーんってイメージしやすい言葉だと思うんだけどな。あ、ご飯を食べたらだけど、昨日の神社にもう一回向かうぜ」


「コガラシと合流するのか?」


「いや、昨日の電話したところからの荷物の受け取りをするんだよ」


「荷物?」


「そそ、荷物。すぐに食べて向かうからちょっと待っててくれ」


 今は詳しく述べるつもりはないらしい。アキトが食べることに集中し始めたのでおとなしく待つことにする。この身体はご飯を食たい欲求がまったくしないから暇なものだ。……物体に触ることすらできない状態じゃ食欲があっても何を食えばいいってなるから、助かるっちゃ助かる。やることがないので、食べるアキトの近くをイメージのみで浮かび上がる練習をしてうろつくことにした。よっし、浮かぶ!心の中で決意し軽くジャンプする。すると高くなる視界だが、大した高さではない。何回も試すものの無言では程よい高さに浮かび上がれないまま神社へと向かう時間となった。


「じゃあ、早速練習した高さに浮かんでくれ」


「おう。ジャンプッ!」


 階段から見上げた二階の高さをイメージして、言葉を発するとともに飛び上がる。すると一気に視界が高くなった。


「よっし、じゃあ神社に向かうぞ」


 高い位置を漂う俺を満足げに見上げると、アキトはさりげなくあたりを見回しつつ神社へと向かうのであった。俺もアキトを見下ろしつつも、なんとなく彼の歩調にあわせて進む。



  





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