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下準備 04

「!? 消えた!?」


「あー、俺たちの次元に完全に戻ったんだよ。気にするな。それよりもこれからどうするかが問題だな」


 そういうとアキトはしげしげとこちらを見てきた。


「なんだよ?」


「いや、この身体とどのくらい離れることができるのかなって。戦闘中に近くをうろつかれても困る。が、そんなに離れられるわけでもないとするとどうすればいいのかってな。ちょっと坂月君も下がってみてくれ」


 そう言いつつもゆっくりと俺から距離を開けていく。どのくらい離れても平気なのかを確認するのだろう。アキトの言葉に従い、俺も後退をした。じりじりとお互いに離れて神社の端と端にたどり着く。なんだかそわそわしてきた。


「そろそろ変な感じがしてきた」

 

 やや大きい声でそう告げれば、アキトも大きくうなづきながらこちらへと歩いてきたので俺も彼のもとへ向かう。


「この距離だと戦闘に支障がでそうだな」


「だよな」


 先ほどの戦闘を思い出してみるとだいぶ動き回っての戦いになることが予想される。そうなるとこの大して広くない神社で精一杯だと心ともない距離だ。


「んん……安直だけど、坂月くん。思いっきり飛ぶか、埋まってみてくれないだろうか?」


「え?」


「地表すれすれを漂うよりも、3,4階高さならきっとそこまで戦闘に支障がでないとおもうんだよね。それか地面の中」


 アキトはそういって真上と地面を指し示したが言っている意味が良くわからない。この足のない状態でどう飛び上がれというのだ。ましてやこの宙ぶらりんの状態から地面に潜るなんて、一体全体どうすればいいんだ?


「俺達の追っている鬼はそこまで高さはないし、ここら辺に空中にいる異形はいないはずだ。もちろん地中にも。だから、上に逃げれば安心だ」

 

 戸惑う俺に何か勘違いしたのか、さらに空中と地中の安全性を説明された。


「いや、どう3,4階までの高さに飛び上がればいいんだよ?足がないのに飛び上がれってむちゃぶりだろう」


「じゃあ、君はどうやって今までここにたどり着いたんだよ?」


「あ!……たしかに……いやでも3,4階の高さってもはや人間のジャンプじゃない!」


 言われてみれば、足がないのにも関わらずここまで来ることはできた。でも、それとこれとは違う。そんな高くジャンプなんて出きるはずがない。


「どうかしましたか」


「ひっ!」


 突然、おばあさんの声が俺達の会話に割り込んできた。人の気配なんてしなかったので俺は完全に不意を突かれた形で驚いてしまう。人とは本当に驚いたとき飛び上がるもので、身体という重りがない俺はそのまま勢いよく宙に文字通り飛び上がった。


「ほらな。できるだろう」


 3,4階の高さとは言えないものの、人が飛べる高さよりも十分高い位置で止まった俺を、アキトはドヤ顔で見てくる。腹立たしい気持ちもあるが、そんなことよりも――


「アキト、お、おばあさんが! 見られた! ヤバイ、見られたって!」


 丁度鳥居をくぐったおばあさんが、いぶかしげにこちらを見ていることに気をとられた。


 

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