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下準備 01

 何時の間にやらあたりの様子はもとの住宅街に戻っていた。ここで先ほど戦闘が起こってたなんで嘘のようだ。


「アキトさん、すみません……」


「いや、それよりその傷を早く治療しよう。隣の神社なら落ち着いて治療できるだろうから、そこに移動だな」


 刀を鞘に収めるアキトに、コガラシは少し足を引きずりながら近づいて頭を下げる。血が地面に垂れているし、確かに早く治療したほうがいいだろう。


「えっと、肩貸そうか……?」


 きっともう二人に近づいても大丈夫だろう。そう判断して、歩きにくそうなコガラシに声を掛ける。


「ん、少年まだここにいたのか! 大丈夫だぜ」


「坂月くんも一緒に神社に行くぞ」


「わかった」


 神社のほうに歩くアキトについて行って俺たちは神社の鳥居へと向かった。公園の入り口からそこはたいして離れていないため、あっという間にたどり着く。少々色のはげた鳥居をくぐると、敷地内は公園と比べると清んだ雰囲気であった。平日だからだろうか、辺りを見回しても少し離れた拝殿までの間に人っ子一人いない。鳥居の近くに手水舎とベンチが設置されており、どうやらアキトはそこにコガラシを座らせて治療をすることにしたみたいだ。


「あ、治療道具貸してくれ。俺この身体使ってるから持ってないんだ」


 アキトに言われてコガラシはごそごそと腰の辺りに手をやり、そこから小さなひょうたんを取り出すと、それを手渡す。


「お願いします」


「ん?」


 ひょうたんもコガラシ同様に半透明なものだったが、アキトが受け取ったらほんの少しではあるが、色づきが濃くなったような気がした。違和感を覚える俺をよそに、アキトは器用にその栓をはずすと中身を怪我した足に振りかる。


「っつぅ!しみる」


「治った……」


 ひょうたんの中身の液体がかかっていくそばから傷が消えていった。やや肌に赤みがあるが、破れ、赤く染まったズボンがなければ傷があったとは信じられない。


「いや、まだ治ってない。この傷くらったのって、狭間空間の時だろ?」


「分かってますって。めんどくさい状態のやつの攻撃をもらっちゃいましたよ」


 アキトからひょうたんを返されたコガラシは、傷があった場所へと再度中身を振りかけた。俺にはもう治って見えるんだが、いったいこれはどういうことなんだろう。コガラシやひょうたんの半透明具合が関係しているのだろうか。

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