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早速の遭遇 09

 「無理やりだけど、捕獲儀式開始するんで、アキトさんは鬼の足を止めといてください!」


 コガラシはそうアキトに宣言したかと思うと、ズボンのポケットから人型の紙を取り出した。それに息を吹きかると、ふわりと紙が浮き上がり鬼とアキトを取り囲む。


「かーごめ、かごーめ、かごの中の鬼は 何時、何時、出遣る」


「かごめ……?」


 歌に合わせて紙がぐるぐると鬼の周りを回る。コガラシが謡う間に、アキトは辺りに漂う黒い瘴気を刀で振り払い、身体を低くして鬼へと駆ける。そして、激昂した鬼の残った手で繰り出される攻撃をさっと見切って、足へと切りつけた。切り付け自体は浅かったらしい、しかしそこに追い打ちをかけるようにして足払いをかけると片腕の鬼はバランスが取りにくかったのか、倒れる。


「かーごめ、かごめ、かごの中の鬼は、何時、何時、出遣る」


 コガラシはずっとかごめの一節を謡って、紙たちはだんだんとその包囲網を縮めていた。起き上がろうとする鬼の右足へとアキトは刀を突き刺し、地に縫い留める。ぐるぐると回る紙はアキトを避け、鬼へとぴたりと張り付いた。まさしくファンタジー。


「夜明けの晩に、鶴の声が響いた 」

 

 なんだか聞いたことのない歌詞になったが、そろそろこの捕獲が終わりそうである。しばらく自分が息を潜めていたことに気がついて、少し力を抜いた。時間がかかって、すぐに自分の身体に戻れそうもないと思ったがなんとかなりそうだ。そう安心してまた鬼とコガラシたちのほうに意識をやって、そこでコガラシの足元に動くものを見つけてしまう。


「コガラシ、後ろっ!」


 切られたはずの手がいつのまにかコガラシの足元を這って、彼の足を引っかこうとしていた。俺の忠告も空しく、コガラシが逃げようとした時にはもう遅かった。


「うし!? ってぇ!」


 鬼の鋭い爪によって彼のふくらはぎが切り裂かれる。唄が止まった瞬間にびりっと紙が破れる音がした。再度襲い掛かろうとする手をコガラシが蹴り上げると、小さな破裂音とともその手が爆発する。あたりに濃い瘴気がたちこめた。


「っくそ!」


 アキトの悪態をつくと、鬼の足に突き刺していた刀を抜き取り、瘴気が最も濃いと思われる場所に向かって走り出した。刀をその空間に向かって一振りすると多少薄まるものの黒い。2,3回さらに刀でその空間を切ることでやっとそれはなくなった。

そして――何時の間にやら地に付していた鬼の姿も消えていたのであった。



 


 

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