早速の遭遇 08
たしかアキトはA++を捕獲または処分するって言ってっけ……。このまま無事に捕獲できればいいのだが、どうも難しそうだ。コガラシの拳は先ほどから何回もあたっているがどうにも大きなダメージとなっていないように見える。アキトは隙を見て切りかかっているも、その回数は少なかった。このまましばらくこう着状態が続くかと思われた。が、コガラシの拳が鬼のあごを殴り上げた時点で鬼が唸り、鬼の纏う空気がいっそう重くなった。
「うわあああ、こいつそっちに移りやがった! アキトさん!」
悪態をつきつつ鬼から距離をとったコガラシと入れ替わるようにアキトの猛攻が開始される。一体何が起こったのだろう。コガラシになにかが起こったのか。心配になって彼を見て違和感を感じた。
「あれ、なんか半透明度が上がっている……?」
先ほどよりも身体が透けているように見える。慌てて瞬きをしてみるがその様子は変わらなかった。
「こっちの次元じゃ、倒せない。捕獲の準備できるか!?」
「もっと弱らせないと厳しいっす!」
「やっぱりか!」
そんな会話をしつつも、アキトは攻撃の手を緩めない。その時、背後から足音が聞こえた。びっくりして振り返れば、公園前の道をおじいさんが買い物袋を提げて歩いてくる。
「なっ!? 止まって! こっちきちゃやばいって!?」
慌てておじいさんのほうに駆け寄って目の前に立ちはだかるが、
「!」
お爺さんは俺が目の前に立ったことに気がつかないようで、あろうことか俺を通過して行った。そうだった、俺は今半透明……!焦る俺をよそにお爺さんは公園の入り口の前も通過していた。もしかして、俺が見えていないようにアキトや鬼もみえていないのか……!ほっと安心しかけるも、
「やべ!」
公園ないから焦ったコガラシの声が聞こえたかと思うと鬼がぬっと姿を現し、お爺さんへとその手を伸ばした。おいおい、嘘だろう?!
「させっか!」
コガラシがそう叫びながら背後から鬼の横っ腹へと蹴りを叩き込む。鬼は伸ばしかけていた手をそのままハエでも払うかのように大きく、後ろへと振りかぶる。無論、ソレを食らうようなへまをせずコガラシはさっと距離をとった。そこに遅れてアキトがたどり着き、刀でその腕を切りつける。今までの攻撃と違う、その鋭い切り込みは鬼の腕を落とした。
「やっべ。瘴気がっ」
アキトの焦り声とともに、切られた鬼の腕から血とは別のなにか黒いものが吹き出てくる。なんだこれ、気持ち悪い。今までで一番大きな唸り声を鬼が上げた。それと同時にまた辺りの風景が変化する。お爺さんが歩いていた住宅街の道は田んぼのあぜ道となっていて、その姿が消えた。公園と神社だけは変わらない。ついでにコガラシの透明具合が最初のころに戻った。




