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事後承諾 09


「俺がお前の体を借りているのは、この次元に紛れ込んだA+級の異形を捕獲、もしくは処分するためだ。そいつが捕まらない限りは返せない。それまで幽体離脱状態で申し訳ないが耐えれくれ」


「そんな・・・」


そいつが捕まらなかったらどうするつもりなんだ、一生このままってことなのか? そしてももしすぐに確保できたとしても、その時、俺の体は怪我なく無事なんだろうか。警察官が凶悪犯罪者を捕まえるみたいなものだろうと思ってる。そんな相手に無事で済むのか……?


「もちろん時間をかけるつもりもないぜ。早急に返さないと俺もお前もいろいろ都合が悪いからな。だが、いつまでにとは明確に言えないんだ。すまない。それで俺が追っている異形についても軽く教えておくな。簡単に言えば暴れん坊すぎるめんどうなやつだ」


「なんら説明になってねえ……」


 がっくりと思わずうなだれると困ったようにアキトは言葉を付け足した。


「あーお前を襲ってきた鬼よりももっとでっかくてやばいやつだよ。罪状はまーちょっと暴れすぎて他の異形を喰いすぎたってところ」


襲い掛かってきた鬼でも十分なでかさがあった。それなのにそいつよりもでかいやつがいるなんて想像もつかない。そして何よりも


「喰うって……」


「あーお前もさっき鬼に襲われただろう? あいつはお前のこと喰おうと思ってたんだよ。別に俺たちの世界じゃあ異形同士の食う食われるは当たり前なんだけど、そこにはちょっとしたルールがある。それを破るとまずいことが起きるから俺たち異狩がそれを守らせるってわけだ。逃げたA+級ってのがこのまま逃げた先々でいろろいろ喰っちゃいそうで、力を着けられる前にどうにかしたいわけだ」


 気が付かないうちに食い殺されそうになっていたわけだ。今さながらぞっとするし、もしあの鬼に合ってなければ無事、学校に行ってたはずなのにな。


「なんで俺襲われたんだ……」


 そもそも、俺はなんで自分の体を最初忘れていたんだ?鬼に襲われた事実にばかり気を取られていたが、鬼に襲われる前にすでに俺は幽体離脱?をしていたんだよな。


「お前が無防備に霊体で狭間空間さまよってたからだろう。お前気が付いてなかったみたいだが、あの時俺らの次元に近い、狭間空間にいたんだぜ?」


「は?」


「多分幽体離脱の衝撃で紛れ込んだんだろう。なんで幽体離脱したのかはちょっとわからんが」


 普通の桜並木に見えたあの空間が狭間空間……。にわかに信じがたいが、歩いても出口にたどり着かなかったのはもしかするとそのせいなのか。


「なんかもう考えたくない……。ちょっと今はこれだけでいい。自分から説明を求めといて悪いがこれ以上は受け付けそうにもない……」


 明らかにこれは今までの常識を覆されすぎて考えるのが億劫になってきた。


「あーまあ普通はそうだわな。おう。まあ犯罪者捕まえ次第すぐに身体は返すってことで!」


 にっこりと笑う自分の顔がこんなにも恨めしいとは……しかしなにか言い返す気力も湧かず、俺はただふよふよと浮かんだ体でたたずむだけだった。

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