第五章
国際自警団協会マクガルド支部には仮眠室が三部屋用意されていた。第一仮眠室は大型で男性職員用、第二仮眠室は中型で女性職員が使うよう暗黙の了解が出来ている事を案内を任された職員から聞いた。つまり二人は第三仮眠室を使用する事が最初から決まっていた訳である。第三仮眠室は二段ベットが二つある四人部屋で、まあゲスト用という名目にはなっているそうだが使用される事は滅多に無いそうだった。
とりあえずマキと二人の荷物を置き、生活できる状況を形成する。
ロッカーが備え付けられているのでそこに荷物を収納すればなんとかなりそうだ。とは言えやはり仮眠室、長期の生活にはかなり相応しくない出来となっているが、そこはまあ我慢しよう。
じゃあとりあえず、姉に自分のアイデアを披露しよう。先程の会談途中で思い付いた今回の麻薬事件とは全く別の案件。姉が呆れるか反対するかどうかは分からない。まあだけどこの街の不公平さを是正する、手前勝手な考えだ。
ジャニィ・ジャニスが思うに、この街の悪徳は無くならない。いや、悪徳がこの世から無くなることなんてあり得ないけれどここの犯罪組織による悪徳の支配は無くならない。それは誰もが分かっているのだろうけれど。だけどそれを少しでも減らす事は出来るはずだし、それを努力すべきだ。そして自分のアイデアはそれに関連する事。勿論マキの決定が必要だけど。もう一つの目的にも有用だと思うし。問題は可能な規模か、なだけだ、とジャニィ・ジャニスは思う。思いながら荷物の片付けを行うのだった。
実際、マキにそのアイデアを相談した所、心底呆れた表情をし少し考えた後、「どうせ他の賞金稼ぎの情報集めてもしょうがないんだから、調べるだけ調べてみましょ。やるかどうかは別として」と言ったのだった。
で、だ。これからの方針に関して。麻薬盗難事件の捜査が警察の手によって行われている以上、ジャニィ・ジャニス達に何か能動的に行える事はない。何らかの事由が発生した場合には逐一連絡を入れてもらえるよう手配は取ったものの、それがいつ入るかは当然分からない。色々と話し合った結果、ほぼ自由行動に費やす事に二人で決めた。こちらから動く事が出来ないのだからしょうがない、というのが結論だった。ジャニィ・ジャニスはそこで旅に出て今まで出来なかった、やってなかった事をやる事にした。ああ、でももう一つやる事もあるな。こちらも忘れないようにしよう。
ジャニィ・ジャニスは目を覚ます。二段ベットの下からもう一つの二段ベットのやはり下の段を見るとマキはまだ熟睡している。姉よりも目覚めがいいのはジャニィ・ジャニスの自慢の一つだ。まあその代わり夜に弱いのでその点では相殺なのだけれども。マキを起こさないよう静かにベットから出るとそそくさと寝間着を脱いで前日の夜に用意をしておいた焦げ茶色のジャージへと着替え、腰にベルトと二本の大型ナイフを付ける。そしてもう一度マキを見る。起きる様子はない。少し音がしたけれど、姉の睡眠を妨げる事は無かったようだ。そうしてジャニィ・ジャニスは静かに扉を開け、仮眠室を出た。
「すいませーん、屋上の鍵貸して下さーい」
この建物に屋上がある事は事前に聞いていたので事務室へと向かい、鍵の借用を頼む。事務員には屋上で何をするかを聞かれたので、正直に「運動ですっ!」と無闇に元気を出して鍵を借りた。ついでにこれから頻繁に借りに来る事を言っておいた。
屋上の扉を開けるとまだ陽が上がりきって無く薄暗かった。目を凝らすと片隅に何かに使われているであろう外付けの蒸気機関があるだけでかなり拓けた場所である事が分かる。また屋上の縁には危険防止の為、金網が備えられている。気になるのはあの蒸気機関が何に使われているか、だがそういった面に全く疎いジャニィ・ジャニスには分からないのでとりあえず壊してしまったら問題になる事は明白だろうからなるべく近づかないよう決めた。後は片隅に洗濯機が置いてあるがこれは気にしなくていいか。と言うかこれからお世話になるんだろうな、あの洗濯機。
じゃあ、始めよう。まずは準備運動。腰のベルトを外して、体を動かす。軽めのものは毎日やっているけれど今日は丹念に。じっくりと。体を伸ばして、縮めて。うん、鈍って無い。広い場所で気にせず体を動かせる開放感からか、かなり長い間準備運動をやってしまった。最後に地面に座って足を広げる。ほぼ足を百八十度にして体を地面に付ける。何の抵抗もなく顎が地面に付くのがちょっと悲しいけれどそれは個人差だからしょうがないと自分を慰めてみる。
「よし、っと」
そのままの体勢から流れるように立ち上がると次に何をやるかをちょっと考える。やっぱりナイフかな。ナイフの振りの確認作業をするか。そう考えて一度外したベルトを装着して、まずは右の大型ナイフをすらりと抜くと左足を前に出しまっすぐナイフを後方に振りかぶる。そのまま肩・肘・手首の可動域を確認しながら正面へとゆっくりと振り、刃が地面にすれすれの所でピタリと止める。これを五回繰り返し、次に同じ動作を速度を上げて次は十回振る。
これは師匠の受け売りだが刃物はどう正確に、自分の思い通りに動かすか、それだけだそうだ。他の人達からは薫陶を受けた事は無いのでこれが正しい理論かどうかはジャニィ・ジャニスには分からない。ただ、これしか刃物の振り方を習ってないのでこれをやる。ただそれだけ。考える事もない。 次に右から水平に、左から水平に、右斜め上から左斜め下に、左斜め上から右斜め下に、右斜め下から左斜め上に、左斜め下から右斜め上に、最後に正面に突きを繰り出す、と言う作業を同じ手順で繰り返す。ポイントは可動域の確認と全く同じ軌道で振れているかどうか。自分が刃物を完全に扱えているかどうか。もし少しでもずれていたらやり直し。
しかしジャニィ・ジャニスはやり直さない。それはずれていないから。自信はあるし、実際ずれている感触はない。ずっと練習してきた事だ。体は覚えている。そのまま次に前足を右に変えて同じ作業。右が終わったら次は左のナイフで。最初は右足を前、次に左足を前。一度のやり直しも無し。正確に振れている。大丈夫だ、半年間の鍛錬は自分に嘘を付いていない。
これで今日の素振りの鍛錬は終わりだ。完璧に出来ているのでこれ以上やる必要はない。ただ体を疲れさせるだけだ。それは体を痛めるだけで何の効果もない。これも当然師匠の受け売りだ。そうしてジャニィ・ジャニスは左手に持っている大型ナイフを鞘に収めると両腕を上空に挙げ、うーんと声を上げながら背伸びをする。素振りをしている間に陽は上がり空は明るくなっている。いい天気だ。ジャニィ・ジャニスは故郷の家族の事を思い出す。もう朝の仕事は終わって食事を取っている頃だろうか。自分が卵料理を好きになったのもナタリア義母さんのオムレツが美味しかったからだ。皆元気だろうか。手紙は機会があればちょくちょく出しているけれど、こちらは居場所を定めていないから返事は返ってこない。そんな事を考え出すと自分が何故賞金稼ぎの仕事をしているのか、しようと思ったのかを考えてしまう。エリザの一件を聞いた時、それでマキが賞金稼ぎになって旅に出てエリザを探すと言い出した時、自分も一緒に行くと言い張った。はっきり言えばあの時の自分はへなちょこだった。人との戦い方も見も知らずの人間を殺す事の重さも何も知らず、感情だけで、自分も何か出来る筈だと信じてマキに付いて行くと言い張った。もしあの時師匠が来なかったらどうなっていたんだろう。もし旅に出ていたらもう死んでいただろうな。ジャニィ・ジャニスにもそれぐらいは分かる。例え人よりも運動神経がいいと言っても限界がある。今の自分は師匠との修行のおかげで生きていられる。
多分、ジャニィ・ジャニスはこれからも悪人を狩り、殺し続ける。エリザがすぐに見つかればこの修羅の旅も終わるけれど、世の中そんなにうまくは行かないだろう。自分達のやり方だって全く持って非効率だ。自分達の育ての親が盗賊狩りの盗賊だったから思いついた、それだけである。だけど世の中から悪人を減らしている、と考える事によって心のバランスを取って、仕事をやっている。
そうしてジャニィ・ジャニスはそんな事を思いながら腕時計を確認すると朝食にちょうどいい時間だったので、屋上を一旦後にした。
事務室に屋上の鍵を返し、仮眠室に戻るとマキの姿は見られなかった。まあ今回は二人別々に単独行動する事をあらかじめ決めておいたので驚く事は何も無い。おそらく朝食を摂るのと試射をする為、外出したのだろう。特にライフルを撃つ機会が今まで無かった為、それを気にしていたので思い切り撃っているんだろうなあ。マキはライフルをナタリア義母さんに無理やり持たされたと言っていたが、本人も絶対にライフル自体を気に入っている。でなければあれほど毎日手入れを行う訳が無い。ただ自分の装備に愛着を持つのはいい事だ、とジャニィ・ジャニスは思う。
まあ、とりあえず自分も食事だ。一日の始まりはミルクと卵から始まるのだ。もう体は動かしてしまったけれど。まあそれはさておき流石にジャージで外に出る勇気は無いのでいつものネルシャツにフレアスカート、レギンスに着替えてから最後にコートを羽織って建物から外に出た。
ジャニィ・ジャニスはハンター街を散歩も兼ねてぶらつく。どうしようも無いほど空腹ではないので気楽に食事を摂る所を決める腹積もりだったからだ。どうせなら今まで入った事のない店がいい。と言っても今までの食事は全て宿屋の食堂で済ましていたのだけれど。
街はまだ早い時間にも関わらずそれなりに賑わっていた。それが街の特徴なのかどうかはジャニィ・ジャニスには分からないけれど、この時間にも食堂がいくつか開いているのはありがたい。自炊も考えたけれど協会支部にはそれを行う場所がないし、食材調達はこの街ではかなり困難で自分達はこの街から出る事を実質禁じられている。こう思うと初日ながら面倒くさいという気持ちが湧き出てくる。あー、自分達の仕事をしただけのにこの扱いはないんじゃない? なんて事を思いつつ、かなり賑わっている食堂を見かけたので今日の朝食はそこで摂る事にした。
ドアを開けて中に入ると賑やかだった店内が別の意味でざわつく。それは『年端も行かない少女が店に入ってきたから』なのか「噂の『黒いコートを着た魔女(よく考えたら失礼な二つ名だ。ちゃんと“ブラックウィドウ”って名乗っているのに)が来たから』なのかは当然ながら分からない。そんなざわめきと視線を軽く無視してジャニィ・ジャニスは空いているカウンター席の隅に座り、メニューを見る。当然探すのは卵料理とミルクの有無だ。よし、両方共ある。と、同時に恰幅のいい中年女性が注文を取りに来た。
「あらあら、可愛いお嬢ちゃんだね。決まったかい?」
「はい、トーストを一枚とベーコンエッグ、これは黄身を柔らかめにしてください。あとは冷たいミルクを。氷は入れないで」
「トーストにはなにか塗るかい? うちはマーマレードが自慢なんだけど」
「じゃあそれを塗ってくださいますか?」
「ハイ、じゃあちょっと待っておくれよ」
ジャニィ・ジャニスが入ってきた時のざわめきは既に鳴りを潜め、喧騒に変わっている。これは平和の証明なのか? いや違う、後ろのハンター達は次の獲物を何にするかの算段をしているのか、それともただ命の洗濯の後始末をここでしているのか。どちらにしろこのハンター街に安寧なんて言葉は似合わない。それは勿論自分にも。今はこんな状態になって狩りに行けない状況になっているけれど、それは蜘蛛の牙を砥いでいる状況なんだと自分に言い聞かせる。
ジャニィ・ジャニスがそんな事を考えている間に、頼んだメニューが運ばれてくる。
マーマレードがたっぷり塗られたトースト。
黄身の部分が柔らかめで今にも溢れそうなベーコンエッグ。
そしてミルク。頼んだ通り氷は入っていない。
ジャニィ・ジャニスはまずトーストを口に運んでみる。柑橘系独特の酸味と長く砂糖で煮たジャムの甘みが口の中に広がる。流石に自慢というだけはあり、はっきり言えば美味しい。しかしこのままだとそのままトーストを一枚食べてしまいそうな勢いだったので一旦冷静になってフォークとナイフを取り、ベーコンエッグへと取り掛かる。白身をフォークで突き刺し、黄身の真ん中へとざっくりナイフを刺し、そのまま切る。柔らかめにと頼んだオーダー通り、黄身が溢れ白身へと流れる。ジャニィ・ジャニスは四分の一程の角度に狙いを付けて一切れを切り取ると口の中へと放り込む。うん、これも美味しい。卵はやはり一日の初めを飾るに相応しい素晴らしい食材だ。そのままベーコンも食べる。塩漬けされたベーコンがちょうどいい具合に焼かれている。そしてミルクをごくごくと飲むとおかわりを頼む。ミルクの程よい甘さが朝食にあまりにもはまっていた為、勢いのまま全部飲んでしまった。そのまま美味しさのあまりかなりの速度で食事を終えてしまう。もしこの場にマキがいたら『食事はもっとゆっくり食べなさい』と注意されたであろう速度で。でもたまにはこういう食べ方をしたっていいだろう。正直言えばマーマレードが塗られたトーストはもう一枚食べてもいいかな、とは思うけれど腹八分目が相応だ。店員に礼を言いながら勘定を払い店を出る。また利用してもいいな、この食堂。
そのまま店を出ると協会の仮眠室に戻る。本来ならすぐにでも次の鍛錬にでも入りたいがご飯を食べた後にすぐ運動を行うのは体に悪い。なのでナイフの手入れを行う。これは毎日行っているので問題は何も無い。むしろうまい時間の使い方だと自画自賛したくなる程だ。と言っても当然ながら丁寧に作業を行う。自分の命を守り、相手の命を奪う道具の手入れに抜かりなど起きていい筈がない。そのまま全ての道具のチェックを終えた後、再び焦げ茶色のジャージに着替え屋上の鍵を借り、屋上へと上がった。
次の鍛錬はもう朝食を摂る前からやる事を決めていた。歩き方だ。ジャニィ・ジャニスが人間で二足歩行で生きている以上、歩くという行為は重要な事案である事この上ない。言うならば何をするにしても全て歩法から始まると言っても過言ではない。まあこれも師匠からの受け売りだ。ジャニィ・ジャニスの考えは師匠によってすべてを仕込まれているので当然なのだが。
とりあえず一歩踏み出す。難しい事はない。親指の付け根に重心を掛けて歩く。それを意識して行うだけだ。それをする事自体は今のジャニィ・ジャニスにとって何でもない。師匠の元で毎日行っていた事だ、無意識に出来る。実際もう普段から意識せずにどんな時もこの歩き方をしている。これは無意識に行なっている事を意識的にやる、そうする事で自分の能力を再確認する為の鍛錬だ。だからジャニィ・ジャニスは足に、親指の付け根に集中して屋上をグルグルと回る。何周か回った後は逆方向に、またグルグルと。常に足に集中し、体幹がぶれないよう、顔を前に向けて。これを何度か繰り返した後、ジャニィ・ジャニスは別の動きに鍛錬を変える。足に少し力を込め、斜め前方へとジャンプのように歩幅を大きく移動する。これを繰り返しながらぐるりと屋上を回る。当然ながら重心は親指の付け根だ。拳銃の弾丸を前以て避ける為には大きく移動する必要がある。その為の動きの練習だ。実際に拳銃の前に体を晒している訳ではないので銃線への先読みは出来ないけれど、これも意識しながら行う事でそれを補う。ジャニィ・ジャニスはちらりと横を見る。横軸への動きの練習の為にもそういった動きも取り入れたいんだけど、あの金網はちょっと不安かなあ。壊して怒られるのも嫌だし、地面に落下って可能性も無い訳じゃないし。あとあるのはあの蒸気機関だけどあれには近付かないって決めたし、洗濯機じゃあ流石に役者不足だ。と言う訳で横の動きは無し。縦だけで我慢しよう。
そうしてジャニィ・ジャニスは師匠の元で行った鍛錬を再確認し、ふと腕時計を確認するとお昼を少し過ぎた時間だった。本来なら昼食を食べてからまた鍛錬を行いたい所だが、今の自分は自らが提案した事象に関して調査をしなければいけない。この建物とハンター街の中でどこまでやれるかは分からないが、とりあえずやるしかない。ま、でもまずはご飯だな、とジャニィ・ジャニスは屋上から去っていった。
こうやってジャニィ・ジャニスとマキ(と言ってもほとんど一緒に行動をしなかったのでマキが何をやっていたかは知らない。よくよく考えると旅に出て二人が別行動を取ったのは初めてだ)は十日間暮らし、その十日目に警察と協会、端的に言えばロボス刑事とスイフトから呼び出しを受けたのだった。
「この話、本当ですか?」
マキは葉巻を吹かしながら前の二人に問いかける。
「まあそう言うなよ、お嬢ちゃん。疑心暗鬼なのはこっちも同じだよ」
ロボスはまるでマキに対抗するかのように煙草の煙を口から吐き出す。
「え、えっと、いいですか?」
ジャニィ・ジャニスは軽く右手を挙げて口を開く。もちろんそんな事をする必要がない当事者なのだがなんとなく場の雰囲気が彼女にそれをさせた。
「こんな組織の長が全員集まる時って、こんな倉庫街じゃなくて例えばホテルのスイートルームとか高級レストランのVIP席とか、そういう場所を使うんじゃないでしょうか……」
思わず敬語だ。何故敬語。
「これは推測の域でしかないのですが」
おそらくこの会議室にいる四人の中で一番まともに見えるであろう協会職員のスイフトが口を開く。
「現物、つまり麻薬が目の前にある事が交渉に必要なのではないでしょうか。他の場所ではブラフと疑われる可能性がありますから」
「まあ、とりあえず明日、“赤き狼”、“イルレダ一家”、“スタンケビウス一家”、“ウノ・ゼロ”、の四つの組織のトップが倉庫街に一堂に会する、と。そこでどのような話が行われるかはまだ不明だがもし可能なら……」
「一網打尽だ。まあそこまで上手く行かなくとも必ず麻薬だけは抑える。これが警察の方針だ」
「“協会”はそれに全力で協力する手筈です」
マキはまた葉巻を吹かす。
「で、ここに呼ばれたって事は私達にも仕事はある、って事でいいんですよね?」
「当然です。作戦にはお二人とも加わっていただきます」
スイフトは眼鏡の弦を少し直しながら答え、レポート用紙の束を二つ取り出す。
「お二人にやっていただきたい作業をここに記してきました。スケジュールもきっちりと決まっていますので、何卒よろしくお願い致します」
二人はそれを受け取る。ジャニィ・ジャニスはパラパラと捲ってみるが確かにきっちりとしたレシートだ。いかにもスイフトが作成したのがよく分る。
「分かりました。じゃあまた明日」
「え? もう行っちゃうの?」
「準備があるでしょう、私達にも、ロボスさんにも、スイフトさんにも。こういうのは迅速に行うのが吉よ、JJ」
「ま、待ってよマキお姉ちゃん!」
こうして協会内での十日間の生活は終わり、明日から蜘蛛の活動がまた始まる事となった。