6話
階段を降りている途中で妙に明るいことに気づく。
まるでカーテンで閉め切った暗い部屋に陽の光が差し込んでいるような明るさだ。
もしかしてと思い駆け足で階段を降りる。
小部屋に着くと小部屋の出入り口から陽の光が差し込んでいるのが見えて嬉しさのあまり出口に走る。
ホワイトホール現象で一瞬周りが見えない。
徐々に視界は回復する。
果てなき空間。涼しい風が優しく吹き草木の匂い。柔らかい土の感触。揺れる草花。眩しい太陽。
晴れやかな雰囲気になり、ふと空を見上げ絶句した。
あるはずの空は無く。そこにあったのは、岩か何かで出来た天井だった。
太陽みたいに輝く鍾乳石が天井から数個が垂れている。その鍾乳石のお陰でこの広い空間は明るく過ごしやすい環境になっていた。
「そうですよね。地下に進んでるだからそりゃー。空なんてあるわけないですよね。」
ため息を溢し遠くの方に目を向けると森があった。
「今度は森ですか。・・・なんで森あんの?。ここ牢獄だよね。・・・考えても仕方ないか。気になるけど・・・手記あるかなぁ。」
考えることを放棄して俺は森へと向かった。
森へ向かう道中。
平らな岩の上で寝ている可愛らしい白いウサギを発見した。
青空に浮かぶ白い雲のような毛並み。足音に気づき耳をピンッと立てムクっと立ち上がりこちらを警戒して見る瞳はルビーのような赤く輝いている。そんな可愛らしいウサギには、額から灰色の角が一本生えていた。
「あ、モンスターですか。・・・触りたい。モフモフしたい。」
モンスターとは、言えモフモフしていそう。触りたい。忍び足でウサギに近づく。
ウサギは、シューっと鳴き耳を後ろに倒し低い体勢をとる。
さらに一歩踏み込んだ瞬間。俺は、宙を舞い綺麗な放物線を描き頭から落下した。
グキッと怪しい音が鳴る。
腹部に激痛が走り確認してみると腹部から大量の血が吹き出していた。
「やばいな。」
急いでヒーリングをして治療してすぐに立ち上がる。
岩の上で立つウサギは、前足で口元を抑え「にっしっしっ」と人を小馬鹿にして笑う。
その態度に苛立ちを覚えた俺は大剣を抜いて足に魔力を集中させてウサギへと跳躍しと同時に腕に魔力を集中させて全力で振り下ろす。
岩が爆散して砂煙が舞う。
煙が薄くなり気づくそこにウサギの姿はなかった。
ウサギは爆散したと考え大剣を納め周囲に敵がいないか確認するとさっきのウサギが少し離れた場所でこちらを見て笑っていた。
再度大剣を抜き怒りのままにウサギを斬る。
しかし、ウサギに当たらない。
よく狙いを定め大剣を振り下ろすが攻撃は掠りもしない。
遠くで哀れな目で俺を見るウサギは、一瞬にして俺の一歩前まで来て微笑んだ瞬間。
ウサギは、俺の顔付近まで跳躍し回し蹴りする。
強烈な頬の痛みと顔面が地面に埋まっている状況に理解できないうえ、ウサギに頭を踏まれていた。
無理に起き上がるとウサギは、バク転をして俺から離れ哀れな目で俺を見る。
ウサギに腹を立てウサギを斬り倒そうとするがあしらわれ鼻で笑われる。
「このウサギ!いい加減に倒させろ!!」
ウサギに向けて振り落とした大剣は、怒りで威力が増され地面を砕きクレーターが出来てしまった。
ウサギはその威力に怯えて一目散に森へと逃げ出した。
怒りで己を忘れウサギを追いかける。
ウサギが森へと消えた瞬間。
木の上から嫌な気配を感じ恐る恐る木の方に目を向けると複数のウサギが弓を引いていた。
「あのこれは誤解です。」
ウサギと会話ができるはずがないのにも関わらず俺は、弁明をしながら大剣を背負い両手をあげてゆっくりと後ずさる。
焦る俺の疑いの目は消えない。
ウサギを倒そうと追いかけた俺を敵として認識するのは当たり前だ。
一体のウサギは矢を放つ。
頬を掠め地面へと突き刺さった瞬間。
一斉射撃が始まり逃げるしかなかった。
森から大分離れ降りてきた洞窟の入り口付近まで逃げてきた。
森から殺気がビシビシと伝わる。
一旦、森の周囲を探索しながらウサギの攻略法を考えるか。
森には入らず周囲を探索していると天井に届きそうな大樹を見つけ近づくと大樹の根元に扉を見つけた。
大剣に手をかけ恐る恐る扉を開く。
そこは、何もない部屋だった。
ポツンっと手記が入ったシャボン玉が部屋の中央でふかふかと浮いていた。
シャボン玉を破り手記を読む。
これを読む汝へ。
私は、ウサギにボコボコに負けてこの部屋を作り手記を書きいている。
あのウサギは素早く氣と呼ばれる力を使う厄介なモンスターだ。
氣については、知っているだろうか割愛する。
あのウサギたちは、拳王の部下だけあって他のモンスターたちよりも遥かに強い。
あれに勝てる奴がいるならそいつも化け物だな。
さて話は変わるがこの手記を残している理由だがこの迷宮に呼ばれた異世界人にこの世界を知ってもらうために書いている。ほとんどは、私の愚痴になると思う。
あのお方達のお陰で女神は、力を行使出来なくなり少しは世界は、瘴気がこれ以上溢れることはないだろ。
しかし、溢れてしまった瘴気は、新たな魔物の王を複数生み出し、奴らは魔物同士で争い、一つの集団になろうとしている。
これを止められるのは、勇者様以外居ないのだ。
だが秩序は、新たな勇者を生み出そうとしない。
秩序は、まるで奴らは魔物ではないと認識しているように思える。
さて続きが気になるだろうが私は次の階層へ向かうとする。逃げ道は、確保しているから次の階層に続きを書く。楽しみにしていてくれ。
俺はまだページが残ってるにも関わらず読む事をやめ怒りのままに手記を地面に叩きつけた。
「ふざけんな!こんな過酷な状況で呑気に続かせるな!」
叩きつけた手記を何度も踏みつける。
「【氣】ってなんだよ。詳しく解説しろや!ここにきた理由とか絶対後付けだろ。お前、仕事でミスしてここに連れてこられたんだろうが!」
しばらくお待ちください。
それから怒りのままに手記を投げたり踏みつけたりしたが全くボロボロにならない。それどころか破けもしない。
「何だ・・・この手記は」
偶然にも風で手記が開いた。
そこに記されていたのは、【悪魔】についてだった。
彼らは瘴気を糧に生きる精神生物のようでこの世界の住人ではないとが記されていた。
俺はそっと手記閉じポケットへとしまい見なかった事にした。
「これ以上。余計な情報いらん。」
洞窟を後してウサギたちの対策をするために森を訪れた。
まだ森に足を踏み入れていないにも関わらず森全体から殺意を感じる。
呼吸を整えて森に足を踏み入れた瞬間。
足元に矢が飛んできた。
入ってくるなという警告のように感じたが覚悟を決めて大剣を構える。
空を切る音が聞こえ大剣を盾のように構えるとバンっと銃弾にでも撃たれたかのような音と共に何が大剣に激突した衝撃が伝ってきた。
バタンっと前方で何が倒れるような聞こえ大剣を少し逸らし見るとそこには、ウサギが伸びていた。
どうやら俺を自慢の角で刺そうとしたところに大剣でガードして避け切れず大剣に激突したようだ。
「流石のウサギも空中では避けられなかったか。・・・待てよ。あえて突進させてそこを斬り落とせば。・・・いやあの素早さに対応できないよな。」
さっきよりも鋭く空を切る音が聞こえた。
ズドン。
その音共に左腕が吹き飛ばれた。
強烈な痛みが走りその場に座り込んで痛みを我慢しながら左腕を探す。
2メートル後方に吹き飛ばれられた左腕をみけ早く治さないと思い次から次へと飛んでくる矢を気にしながら左腕へと向かう。
タラタラと左腕から血が溢れ吹き飛ばれられた腕を拾い元の位置につけてヒーリングを唱え左腕を治す。
強烈な痛みは未だ違和感とともに残り続ける。
そんな痛みを気にしている場合じゃない。深く深呼吸をして乱れた呼吸と混乱する頭をリセットする。
視覚だけに頼らず耳、肌からも情報を読み解き微かな音、空気の流れ逃さないように神経を研ぎ澄ます。
背後から微かに空気の流れが変わった。
何となくだがヘッドショットを狙った矢が飛んでくるような気がする。
振り返り頭を重視して身体全体を大剣でガードする。
バンっと大剣に矢が当たる。
防がれ動揺したのか。草木が揺れる。
石ころを拾い全力で揺れた草木に狙いを定め投げる。
鈍い音がなる。
どうやら当たったみたいだ。罠の可能性を考え注意して確認するか。
草木を掻き分けて進むと頭から血を流しウサギが横たわっていた。
ピクピクと動いている。
まだ、終わってなかったか。今、楽にしてやるからな。
ウサギの首に狙いを定め大剣を振り下ろすが大剣に矢があたり軌道が逸れウサギの頭部を掠めた。
撃たれたと思われる方へ目を向けるがすでにそこには誰も居らず再び瀕死のウサギに目を向ける。
瀕死のウサギは、そこには居らず。瀕死のウサギと思われる痕跡しか残られていなかった。
気配を探っても周囲の物音すら聞こえない。
完全に逃げられたようだ。
悔しさは残るが今は見逃した方が良さそうな予感がする。
遠くの方が視線を感じる。監視と言うよりは、動きを重視して見られているような。変な感覚を覚える。
視線の方を見てるとスッと視線は消える。
一先ずその場から逃げますか。
その後もウサギたちの奇襲に遭うも徐々にウサギたちのスピードに目が慣れ無傷で対象できるようになった。
そして、ウサギたちは、奇襲ではなく。正面から襲い始めてきた。
周りを囲まれた。
集団で闘うのかと思いきや。一対一の闘いが始まりその場にいたウサギたちを重症を負いながら全て倒した。
満身創痍。
周囲には、ウサギの気配がなくここで一息つくことにした。
余程疲れていたのだろう。そのまま寝てしまった。
草むらからウサギはひょっこり現れキョロキョロと周りを見渡し安全を確認してから寝ている俺へと近づき完全に寝ていることを注意深く観察する。
寝ていると判断したウサギは仲間たちを呼び俺を持ち上げようとするが持ち上がらない。
ウサギたちは相談し俺が握る大剣を引き剥がそうとするがなかなか引き剥がせない。
一匹のウサギが腹を立て俺を蹴ろうとするがタイミングよく寝返りをしウサギに攻撃を回避した。
寝返りをついた時に大剣を離してしまった。
その大剣に興味を持ったウサギは、大剣に触れた瞬間。高圧の電流が流れ一瞬にして丸焦げになってしまった。
ウサギたちは、話し合い大剣を無視して俺を運ぶことにした。
寝ている俺を数匹で持ち上げとある場所へと運ぶ。
しばらくして大剣は浮遊し俺たちを追いかける。
続く。




