5話
筋肉隆々のゴブリンは、俺を睨みつけると周囲のゴブリン達を恐喝しゴブリン達を仕掛ける。
「もしかしてこのフロアのボスか!」
いかにもボスという風格に俺はフロアボスとあのゴブリンを決めつけた。
大剣でゴブリン達を薙ぎ払いフロアボスに近づく
フロアボスは、味方から棍棒を奪い取り俺目掛けて投げる。
大剣でその棍棒を払いのけるとは、フロアボスの姿は、視界から消えていた。
「どこ行きやがった!」
周囲をゴブリンに紛れているのかと思いゴブリン達を斬り払うと背後から殴られ態勢を崩した。
「はぁ!?」
フロアボスに頭を鷲掴みされ投げ飛ばせる。
落下地点のゴブリン達は、慌てふためいて俺をキャッチするかキャッチしないか相談していた。
そのまま相談しているところに落ちてゴブリン達がクッションとなって大きな怪我を防ぐことができた。
「早く体勢を整えないと次が・・・」
着地と同時にフロアボスは、ゴブリン達をかき分けてボクサーのように右ストレートの構えをしていた。
やばっと思った時には、遅かった。
迫力のある右ストレートを咄嗟に大剣の腹で防ぐがミシミシと腕の骨が鳴り、その威力で吹き飛ばされ地面に横たわる。大剣は、蜃気楼の前方まで滑り込む。
強烈な痛みで腕は上がらず立つこともままならない。
のしのしと足音をたて俺に近づいてくる。
「速い・・・【ヒーリング】」
フロアボスは、勝ちを確信したのかゆっくりと踏みつけようと足を上げる。
「今だ!!」
起き上がった瞬間にタックルをして体勢を崩し困惑しているフロアボスに跨り顔を殴る。
数度殴った所でを掴まれ投げ飛ばされるも綺麗に着地してすぐさま、フロアボスに向かって走り出す。
フロアボスも負けじと起き上がり俺に向かって走る。
互いに殴れる間合いになり同時に顔を殴る。
よろめく俺とフロアボスは、ニヤリと笑い。
「・・・ふっ。こんな程度か!ゴブリン野郎!」
スッと真顔になって全力の殴り合いを始めた。
ボクサーのような殴り合い。
一発一発が重く鈍い音が鳴り響く。周囲のゴブリン達は、この光景を見てはしゃぎ、試合の観客のように盛り上がりを見せる。
互いに瀕死寸前。
肩で息をして焦点が合わない。
ぼんやりとフロアボスの輪郭が見える。
千鳥足でふらつくフロアボスは最後の力を振り絞って右ストレートを放つ。奇跡的に身体の重心が左側に逸れたお陰で回避することができた。
ゴブリンの呼吸に合わせて右アッパーを繰り出しフロアボスの顎へとクリーンヒットして後ろにゆっくりと倒れノックアウトした。
フロアボスに勝ったという感情が爆発し天高く右拳をあげる。
「おっしゃーー!勝った!」
観客は、黄色い声援があげ俺の勝利を祝う。
ふと気づく何故彼らは襲って来ない。周囲を見るとゴブリン達は弱った獲物のように俺を見ていた。
「えと。あいつ、フロアボスじゃない?・・・まずいなこれ。」
背筋が凍る。
すぐさまに大剣の元を目指しゴブリン達をかき分けて走り出す。
しかし行手を阻むゴブリン達。
「【身体強化】!!」
身体強化をした瞬間。強烈な痛みと筋肉と骨が軋む音が聞こえ立つのでやっと状態になってしまった。
歯を食い縛り無理矢理に身体を動かす。
動かす度に激痛が走る。
身体強化を解消すれば痛みは無くなるだろうが解消すれば力負けしてこの大量のゴブリンに敗北し袋叩きにあうだろ。
「イッテェな!【ヒーリング】!」
軋む身体に治癒して無理矢理にでも戦うしか他無かった。
俺の大剣を拾おうと一体のゴブリンは大剣を持ち上げようとするが持ち上がらなかった。持てなかった事に激怒して大剣を蹴るが逆に蹴った足を負傷してのたうち回る。
ゴブリン共を蹴散らし必死の思いで大剣に辿り着きのたうち回るゴブリンを蹴り飛ばして大剣を軽々と拾い上げる。
蹴られたゴブリンは、その大剣は、俺のだと威嚇する。
ムッときた俺は、前方に跳躍と同時に振り上げ大剣と自分の体重を乗せて振り下ろしゴブリンを斬り倒す。
周囲のゴブリン共を睨みつけて威圧する。
気を取りするゴブリン共の一掃を開始する。
数十分後。
ようやく見えているゴブリン共を一掃することができた。
高みの見物かのようにゆらゆらと蜃気楼は、俺を見つめ徐々にその姿を現す。
杖を持った少し小柄なゴブリン。
苛立っているのか杖を何度も地面に叩きつけていた。
ふとそのゴブリンと目が合う。
しばらくの沈黙のあとゴブリンは慌てて蜃気楼の中へと消えた。
「・・・アイツ。逃げた?」
何処から見られている感覚がある。きっと何処かにいる。この視線に辿ればそこに居るはずだ。
感覚を研ぎ澄ましゆっくりと周囲を観察し揺らぎがないか確認する。
ゆらゆらと蜃気楼が揺れる。
歌が聞こえる。
大気は、蜃気楼へと集まるように流れ徐々に大気が圧縮されていく。
「あれ。やばいよな。」
危険に感じ蜃気楼へと走り出す。
圧縮されて大気は電撃を纏い今にも爆発しそうな雰囲気だ。
蜃気楼まであと数歩という所で大気は、雷撃の球へ変貌し放たれた。
轟音と共に放たれた雷球。
それを喰らって仕舞えば俺は、消し炭になると確信できる。一か八か。雷球を斬る。
「賭けるしか無いよな。ふぅー。」
何故かこの剣なら魔法だって斬れる気がした。
深呼吸をして大剣をグッと力強く握り一歩前に出て全力で大剣を振り落とす。
雷球に反発され押し前そうになるが歯を食い縛り無理矢理に叩き潰すように斬る。
真っ二つになった雷球は、後方で爆発した。
「ギィギィ!?」
「もう遅いよ。」
全力で蜃気楼の数メートル手前まで走り蜃気楼目掛け跳躍して大剣を振り下ろす。
裂ける蜃気楼から現す杖を持ったゴブリンは、見事に真っ二つなって倒れていた。
何かが崩れるような音が聞こえた。
崩れた音がした方へ目を向けると地下へと続く階段を見つけた。
「そこのアンタ。やってくれたわねぇ」
背後から女性の声が聞こえ振り返るとそこにはエルフがいた。
金が溶け流れがゆっくりな川のようなサラサラした美しい髪が腰まで伸び華奢な身体にちょっこんと乗った整った顔。全てを見通しているかのようなサファイアの瞳、ファンタジーによく出るエルフの特徴尖った耳の半透明な女性がそこにいた。
思わず見惚れてしまう程美しかったが何故か何とも感じない。
そして察した。
さっきのゴブリンがボスだったということに。
「えと。貴女は?」
そう問うと彼女はキョトンとした表情を見せた。まさか私の事を知らないのと言いたそうな顔をしている。
はぁーとため息を吐いて口を開いた。
「私はエルフ族の女王にして【大賢者】の呼ばれていた大魔導士、リーファ様よ。崇めなさい。」
・・・何だろ。この人の事を知らないのに知っている気がする。ガジルさんの時にも感じたけど何故なんだろか。今は気にしても無駄か。
「大空ハルです。リーファさん。よろしく」
リーファさんと握手を交わさそうと手を差し伸べたが手を払われた。
・・・何だこいつ。ムカつくわ。
「・・・誰がアンタと握手するわけないでしょ。・・・魔力操作も未熟なうえ治癒魔法が何たるかもわかってない奴が私に勝ったなんて許さない」
凄い睨まれる。余程俺に倒されて悔しいみたいだ。
未熟って言われても誰からも教わってないし何となくでやってる我流だし。そもそも魔法が発動する理屈も分かってないのに。文句言われる筋合い無い気がする。
じーっと彼女を見ると目を逸らし頬を少し赤らめる。
「何よ。・・・し、仕方ないわねぇ。教えてあげるわよ。」
何だろか。この苛立ちは・・・。二次元なら萌えるが現実でのツンデレ。やだな。・・・しかし教えてくれるというなら仕方ない。教わるか。
「よろしくお願いします」
深々とお辞儀をする。
その姿を見てリーファさんは、満足そうな顔をしていた。
やっぱりムカつく。
リーファさんは、パッと手を叩くと何処からともなく宙に浮く黒板が出てきた。
そこに簡易的な人の形を描く。
「じゃー授業を始めるわよ。まず魔力とは、精神力であるけど魂の力とも言えるわ。だから魔力総量は、生涯変わることはない。・・・でも例外も存在するでも今は省くわ。どうせアンタには無理だろうし。」
こいつ。いちいち。棘あること言うな。イラっとくるぞ。もう一度。倒したいわ。
「魔力は魂の力。故に魔力が枯渇すれば人は死ぬ。この精神世界でも同じことなのよ。」
今、精神世界って言った?。
「え?ここって精神世界なの?」
そう発言するとリーファさんは、鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしている。
「アンタ。知らずにここにいるわけ」
「はい。」
リーファさんは、クソデカため息を吐いて呆れたような顔をして、再びため息を吐いた。
「全く。何も知らずにここにいるって異世界人でもあるまいし」
「ん?異世界人ですが?」
「今なんて?」
「異世界人」
俺をまるで幻想生物でも見ているかのような顔したと思ったら目を擦って二度見した。
「そー。そーなのね。異世界人なのね。・・・でも彼の魂は、こっちの魂の形に似てる。・・・どう言うこと。」
リーファさんは、じーっと俺を睨みつけ、ブツクサと独り言を呟いている。
その瞳は、俺を実験動物にでも見えているかのような恐ろしい視線だ。正直、怖い。
リーファさんは、咳払いをして黒板を叩き口を開く。
「魔力操作について話すわよ。魔力・・・」
そこから体感で2日間に及ぶ授業はみっちりと行われ頭が痛くなるほどだった。
授業だけはなく、実技もあり。それはそれは大変だった。悪夢だと思えるほどだった。
だから実りはあったと思う。
魔力操作もできるようになりムラなく身体強化ができるようになったお陰でインパクト時のみの強化ができるようになり攻撃力は格段に上がった。
さらに重ねがけによる身体強化も出来るようなった。
治癒魔法も教えてもらったが・・・思い出したくもないほどトラウマになった。でもほんとあのスパルタ授業は夢に出そう。
疲れ果て地面に寝転がる俺を横目に何かを考えているリーファさんは、独り言呟いていた。
「・・・この子。アイツに似ている。・・・でもあり得るの。・・・いや。他人の空似か。」
アイツ。誰の事だろう。ダメだ。身体に力が入らん。
リーファさんは目の前でしゃがみ、俺の頬をつつく。何が面白いのかわからないが楽しそうだ。
「そろそろ。起きなさいよ。あの程度の授業で何、バテてるのよ」
そう言うリーファさんは頬をつつくのをやめない。顔をずらしてもつつくのやめない。
バサっと起き上がりリーファさんから距離を取る。
リーファさんは不貞腐れた表情を浮かべ俺を睨みつける。
逃げようとさらに距離を取って気づいた。
リーファさんの身体が最初あった時よりも薄くなっていた。
「なに、暗い顔してるのよ。」
「リーファさん。身体が」
「そろそろ還る時間なのよ。・・・本来なら数年かけて学ぶことを圧縮して教えたんだから私の仲間たちを救いなさいよねぇ。」
リーファさんの瞳から雫から溢れそっぽを向いて話を続けた。
「アンタは、私とガジルが認めた救世主なんだからさっさと世界を救ってあの女神を捌きなさいよね。」
「・・・はい。」
気のない返事をしてしまった。
リーファさんは、悲しむ俺の頭をわさわさっと撫でくりまわす。
「落ち込むんじゃないよ。また、会えるさ。・・・今度会う時まで治癒魔法と強化魔法、完璧にしとくんだよ。・・・またねぇ。」
消えゆくリーファさんにお辞儀で泣き顔を隠して見送り。
「はい。」
力強くそう答えた。
リーファさんは、青色に光る星屑となって天へと還っていく。微量の星屑は、大剣に付着し吸収された。
短くもリーファさんは、俺の師となってくれた。
もっと話していたかった。
自然と出た涙を拭いて俺は次の階層へと向かった。
背後で俺を見ている存在には、気づかなかった。
「・・・さて、これで二柱は、輪廻に還った。残りは五柱。・・・さてあのクソ女神に彼とここを隠しますか。・・・頑張ってくださいね。」
そう言い残し何処かへと消えていった。
続く




