2話
巨大スライムが待つ部屋へとつくと入り口には、灰色の霧が覆われて内部が見えなくなっていた。
まるでここから先は、ボス部屋ですよと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。
「ソウルライクゲームかな?。ステイタスと装備確認しますか」
俺の装備品。右袖が溶けてなくている学ラン、所々スライムに溶かされて穴の空いた学生ズボン、身の丈ぐらいのありそうな大楯と刃渡り一メールぐらいの簡素な作りの直剣。
俺のステイタスは、以下の通りだ。
種族 【ヒューマン】
名前 【大空 ハル】
アビリティ【治癒師 Lv.10】
スキル
・治癒魔法
【ヒーリング】【リフレッシュ】【キュア】【リジェネ】
・強化魔法
【身体強化】【魔力付与】
これが俺の全部だ。
「【身体強化】、【リジェネ】」
身体強化。身体能力を体感で十分間強化する魔法。
リジェネ。体感で十分間、傷を回復し続ける魔法。
準備と覚悟をして一つ目のボスに挑むために霧の中へと入っていく。
霧の先には、巨大スライムが待ち構えていた。
様子見と言わばかりの触手を一本、生やして鞭のように攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃、大楯で防ぐ。触手の一撃は、重く左腕が痺れた。
その痺れを我慢して巨大スライムの距離をつめる。
すると巨大スライムから石ころサイズの何かが顔目掛けて飛んできた。咄嗟に顔をずらすが頬を掠め背後の頑丈な壁に穴を開けた。呆然となった。
「・・・あれまともに食らったらお陀仏じゃん。」
掠めた頬から滲み出た血を拭き取り大楯を前方に構えた瞬間。巨大スライムは、マシンガンのように弾を乱射する。力負けした俺は、ゆっくりと下がり、壁際まで戻されてしまった。するとマシンガンは収まり今度は、複数の触手を生やす。
「今度は触手攻撃ですか!クソが!近付くことも出来ないのかよ!こちとら遠距離武器ないちゅうねん!!」
愚痴を言いながら壁沿いを走る。
おそらく巨大スライムは俺のスタミナ切れを狙っているのだろう。
このまま、壁際を走りつつ作戦立てるしかないか。
作戦1。
無理矢理でも巨大スライムに近づきヒーリング+リジェネの魔法をかけ続けながら巨大スライムの中に入り核を壊す。
作戦2。
巨大スライムの触手を斬って続け弱るのを待ちヒーリング+リジェネをかけ続けて巨大スライムの中へと入り核を壊す。
「・・・結局、体内に入ることは確定ですか。そうですよね。あの大きさですもんねぇ。剣は届かんし、この楯で潰せんし。体内に入るしかないですもんねぇ」
そんなことを口走っていると巨大スライムは、俺の行く手を阻むように俺の目の前に触手で突き攻撃され、俺は一瞬、立ち止まさせられた。
その隙を狙い俺の頭上から触手を振り下ろす。
俺は咄嗟に盾で防ぐも重い一撃に受けきれず前方に流してバックステップをする。
巨大スライムと向かい合い。
沈黙が続く。
息を整え、剣を強く握り巨大スライムへと走り出す。
巨大スライムから再びマシンガンのように弾が撃ち込まれる。
大楯を前に出して身を隠すように構え今度は押し負けないように力を込めて前へと進む。
嵐のなか、傘をさしてるような感覚が大楯から伝わってくる。その攻撃に吹き飛ばされそうになりながらもゆっくりと巨大スライムへと進む。
「ほんと、身の丈ぐらいのある大楯で良かったよ。じゃなかったら死んでたわ。」
ピタリとマシンガンが収まり、大楯から少し出して巨大スライムを見ると数十本の触手を束にしてランスを整形している。
「まさかな。」
悪寒が走り、右側に横跳びした瞬間。ふるんっと揺れた巨大スライムからランスの突きが放たれ大楯を貫通しその威力には、力負してしまい手放してしまった。
その威力に青ざめる。もし横に跳んでいなれば俺はあのランスでお陀仏だった。
最悪な事に大楯を失ったのは、とても痛い。
息を整え、次の攻撃に備える。だが追撃が来ない。再び大楯の方を見る。
巨大スライムは、大楯からランスが抜けなくてイライラしている。
これは、チャンスだ。心なしか巨大スライムが小さく見える。もしかしたらこの状態の巨大スライムなら核を斬れるかも知れない。
好機と見た俺は、迷わず巨大スライムに突撃する。その時、正面の死角から地面を這うように一本の触手が俺の左下腿を貫かれ前のめりに倒れながらその触手を斬る。
本体から離れた触手は、傷口で液体へと変わり更なる激痛が走りすぐには、立ち上げれず、傷口を押させながら歯を食いしばりゆっくりと立ち上がる。
視界にあるのものが映り込んだ。息を吞んだ。
大楯から抜けたと思われる触手の束が再び巨大スライムの頭上でランスを成形している。
あれが放たれてしまったら終わりだ。
「わっははは。もう、笑うしかねえよ」
もう術がない。どうしようもない。
怪我をした所を治癒をしつつもすべてを諦めようとした。
その時、ふと、とあるゲームのセリフを思い出した。
『生きることから逃げるな』
何を諦めてるんだ。まだ、死んでないだろ。俺は、生きている。目的の果たせないまま、死を受け入れようとしてんじゃねよ。
巨大スライムをにらみつけ両手で剣を強く握る。
血がある程度抜けたお陰か頭が冴え周りがよく見える。
ランスが大きくなるにつれ巨大スライムが小さくなっている。あれは、やはり見間違いではなかった。
「・・・いい事。思いついた。」
とある作戦が浮かんだ。それに賭けるしか他に選択肢がない。今度は確実に殺しに来るはずだ。
タイミングは、一瞬だ。それを逃せば俺は死ぬ。巨大スライムの行動を先読みしろ。巨大スライムから目を逸らすな。
俺なら出来るはずだろ。何度も触手攻撃を避けてきたんだから。
巨大スライムがふるんっと揺れた。
ランスが上半身を目掛け放たれる。直撃する寸前、剣の腹で進路を変えランスは勢いよく背後の地面に突き刺さる。
地面に強く刺さり抜けず慌てる巨大スライムは、そのランスの成形に身体のほとんどを使用し、通常個体と同じくらいの大きさになっていた。
俺は、ニヤリと笑う。
「チャーンス」
慌ている本体に走り出しランスと本体が繋がっている根元を叩き切る。
切り離されたランスは、瞬時に液体となり切り離されたことに本体はパニックしたのかゴロゴロと転がり始めた。
「あとは核を壊せば俺の勝ちだな」
暴れ回る元巨大スライムの核に狙いを定め剣を突き刺す。
パリンッと核は真っ二つに割れスライムは、ゆっくりと液体に変わっていく。
途端に身体の力が抜け左腿の痛さを思い出しへたり込む。
自然と涙が出てくる。
強敵に勝利したという嬉しさ。
激痛と身体が疲れからくる節々の悲鳴で生きていると実感させられる。
その場に横たわり大の字になって剣を投げ捨て右手を強く握りしめ天高く掲げる。
「手記の天使さん。俺、勝ったぜ。」
「いやーまさか。こんなガキがオレを助けてくれたとはな。」
その野太い声に驚いたがこの迷宮に俺以外の人間がいたということに嬉しさを覚え声へ顔を向ける。
巨大スライムがいた場所にドワーフがいた。
130センチぐらいの背丈に臍の辺りまで伸びた髭は綺麗に整えられていた。
その風格から背丈は、低いというのに巨漢と感じてしまう。
「わっははは。驚いて声も出んか。しゃーないな。これがオレたちの救世主ってのも悪くないか。いや、むしろいいか。リーダーみたいでよ。」
ドワーフは、笑いながらそう言うにも関わらず心なしか寂しそうである。
「えと。貴方は誰ですか?」
そう言うとドワーフは、キョトンとしてまた大笑いする。
「そういやー。名乗ってなかったな。元ドワーフ族の王であり鍛治の最高峰とも呼ばれた男にしてヘファイストスの子、ガジルだ。よろしくな。救世主殿!」
「大空ハルです、ガジルさん、よろしくお願いします。」
ガジルさんと握手を合わそうとするもすり抜けてしまう。
「やはり、ムリか、ガッハハハハ」
「ん?どういうことですか?」
「なんだ気づかんのか。」
どういうことだ。あ、足がない。てことは、ゆ、幽霊ってことですね。そうだよな。魂が閉じ込められている監獄ですもんね。幽霊ですよね
「どうやら、言われて気づいたらしいな。ワッハハハハハ。」
愉快に笑う人だな。とても魔王には、思えないんだけど。
「ガジルさん。・・・なんで魔王って呼ばれたの?」
そういうとガジルさんは、悲しそうな顔したと思ったら笑顔を見せる。
「そんなこと、簡単だよ。女神に喧嘩売ったから神敵として広められ魔王にでっち上げられたんだよ。オレ達は、世界を守るために女神を裁こうとしただけなんだがな。」
悲しみが微かに含んだ声色に思えその瞳の奥は、燃えているように感じる。
「あのクソ女神に喧嘩・・・・」
「そうだ。まぁ。色々あってこの世界にとってあいつは不要と思ったから神の座から降ろそうとしたんが負けてこのざまだよ。」
詳しく聞こうと思い口を開こうとした途端、ガジルさんからこれ以上聞くんじゃねと目で訴え来る。怖気づいてこれ以上は、聞けなかった。
「聞きたいだろうが今のお前さんには、無理だ。せめて、ここにいる魔王達の魂を救ってから聞け。」
「わかりました。」
納得は、出来ないが最後に倒した魔王にでも聞こう。
ガジルさんは、自分の両手を見て微笑む。
「そろそろ時間みたいだな。・・・救ってくれた礼だ。今着ている服、脱げ。」
こいつ、何を真顔で言ってるんだ。変態か。それとも変人か。ガジルさんのことを変人と呼ぼう。
「・・・あ、いや、お前さんの装備がボロボロだったからよ。直してやろうと思っただけだ。」
慌てた様子で弁明する変人。一旦、信じよう。俺は、Tシャツ、パンツになって変人に渡した。
その場に座った変人は、服を地面に広げると手を合わせ祈りのポーズをすると青白く光る七星陣が描かれ服は逆再生するかように元通りなる。治った服を投げ渡されお礼を言おうとした時には、変人は、剣と大楯を拾い、状態を見てため息をついた。
「これも直してやるよ。」
そういう変人は、何処か嬉しそうに見える。
パンっと手を鳴らす何処から鍛冶工房らしき建物が現れその建物に入る。制服を着替えた俺も入ろうとするが見えない壁に阻まれた。
だが内部を見ることができたのでその場に座って待つことにした。
黙々と鉄を打つその一振りに一切の迷いなどない。その姿は、まるで鍛冶の王と感じさせられる。
凄いという感想しか出てこない。
圧倒され見入る。時間があっという間に溶け一振りの大剣が出来上がった。
・・・ん?。大剣?。なんで?。
ウキウキして変人が工房から出てくる。
変人が持つ大剣は、湯気みたいなモノが出ているように見る。
「出来たぞ。ほれ、魔剣『逾槭r陬√¥蜑」』。・・・言えんな。まあいい、受け取れ」
「・・・はい」
「何度か素振りしてみろ」
「・・・はい?」
ずしっと重いが思った以上に軽かった。
手に馴染む。なんだろうこの感覚は、手が延長したと錯覚させられそれを確かめるように素振りを始める。
剣に見入っていると視界の端でにこやかに変人は笑っている。
「ハル。素振りしながらでいいからよく聞け。その剣は、オレが力のすべて込めてつくった神器に最も近い魔剣だ。この剣は、お前さんの魔力を解析し成長する。そして完全に解析を終えた時、真の姿に進化する。あとは、使って学べ。面白い効果があるからよ」
楽しそうに魔剣について説明している。
魔剣を何度か素振りし感覚を掴み。礼を言おうと変人を見ると身体が透け透けになっていた。
「もー時間だな。ハル。他の奴らも救ってくれ。頼んだぞ。・・・・」
「・・・わかった」
変人、いやガジルさんは、それを言い残して星屑のような光の微粒子となって天へと還っていく。
その思いを受け取って地下へと続く階段を降りる。
「ようやく見つけた」
微かに女性の声が聞こえ、振り向くとそこに誰も居なかった。
一部の星屑が背負っていた魔剣に付着したように思えた。
続く。




