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どうしてこうなった〜私は愛人にも妻にもなりません

作者: あひる3世

 少女は困惑した。



 目の前でなぜか自分に対して告白してくる人物を見て。



「好きだ! 俺と結婚してくれ!」 



 彼女の名前はリリー・プラネット。身分は平民。由緒正しき貴族のご子息、ご令嬢が多く通う王立アストレイ学園に特待生として入学した才女である。



 そんな才能溢れる少女に公衆の面前で告白した男。

 それはこのアストレイ王国の第3王子であるグレアム・アストレイ・スペディングだった。



 

「あのグレアム様」



「何かな? 私の可愛いプリセンス」



「もしかしたら聞き間違いかもしれないのですが、私に求婚されましたか?」



「ああ。君の聞き間違いではない」



「そうですか」



 グレアムが即答したのを聞いて、リリーは聞き間違いであってほしかったと心底思った。



 そして彼女はそもそもなんで第3王子が学園にいるのだろうと疑問に思う。

 第3王子といえば自堕落なことで有名で、学園に籍を入れてはいるが、登校してくることは滅多にない。



 たまにしか見ることの出来ないレアキャラということは有名で、もし学園内で見かけることができたら幸運が訪れると一部生徒から噂されているほどだ。




 自分には幸運どころか不幸が訪れてるけどとリリーは内心で毒づく。



「あの、私たちってどこかでお会いしたことありましたっけ?」



「いや、俺が思うに今日が初対面だ」



 もしかしたら自分が過去に好意を持たれるような行動をしてしまったのかと考えたリリーだったが、これも王子が否定したことで、その可能性はなくなった。



「それでは何故このようなことを?」



 初対面で告白された理由を問うリリー。



「このようなこと?」



 何のことか分からないと言った表情を浮かべるグレアム。



「私に告白したことです」



「ああ、そんなの君が好きだからだよ。それ以外に理由は特にないよ」



「初対面なのにですか?」



「うん。一目惚れ」



「一目惚れですか」



 リリーは自分の美貌にかなりの自信を持っている少女だ。それこそ、自分がこの世で1番可愛いと思うぐらいには。



 だからこそ自分の美貌に一目惚れしてまったのならしょうがないと思った。

 しかし、顔がいいというのは災いを運んでくることがあるのを、彼女は今までの経験から理解している。



 ああ、何で自分は罪な女なんだ。



 胸の内でそんなことを思うリリー。

 自分に酔いまくりである。



「一目見た瞬間に凄い衝撃が背中を走ってさ」



「それで私にいきなり求婚を?」



「そう」



「しかし平民の私では殿下と釣り合いが取れません。ましてや結婚なんて…」



「大丈夫。他の兄弟と違って婚約者はいないし、俺は結婚も自由にしていいって王に言われてるから」



「そうですか」



「で、どうかな? 俺と結婚してくれない? 俺と結婚してくれたら好きなものはなんでも買ってあげるし、生活に苦労させないよ」



「すいません。あまりにも急なことだったので動揺してしまって。頭の中を整理するための時間をもらってもいいでしょうか?」



 相手は王族ということもあり、簡単に断ることはできない。

 とりあえずリリーは時間稼ぎをすることにした。



「分かった。君の気持ちが落ち着くのを待つよ」



「ありがとうございます」



 グレアムの了承を得ることができてホッとしたリリー。




 そして、彼女はこう思った。

 どうしてこうなったと。





 翌日。

 リリーにはまたも災難が訪れていた。




「あのバカが求婚したという女はお前か?」



 彼女に話しかけているのは第一王子であるウィルソン・アストレイ・スリム。

 まさかの2日連続で王族に絡まれるという事態にリリーは疲れを感じた。



「恐れながら殿下。あのバカというのは?」



 バカという言葉は恐らく第3王子であるグレアムのことを指しているのだろう。

 そうは思っても王子をバカ呼ばわりするわけにもいかず、それが誰のこと言っているのか聞き返すリリー。



「グレアムのバカだ」



「グレアム様のことでしたか」



「ふむ。しかし、平民の癖に美しいな」



 この時すでに彼女は面倒なことが起こる予感がしていた。

 何故なら第一王子であるウィルソンは、権力を糧に好き放題やっている男だからである。




 自分の気に入らない人間がいたら兵士に殺すように命じ、好みの女がいれば夫がいようが関係なく手を出し、飽きればゴミのように捨てる。



 ある時は劇団のショーがつまらないと言い団員を皆殺しにした。

 またある時は兵士の妻を強姦し、反発した旦那とその親族を皆殺しにした。



 たくさんの悪名を轟かせる王子は、この国の民の間で絶対に遭遇してはいけないと人物と言われている。



 リリーは思う。グレアムと違って、まともに会話ができる相手ではない。



 そしてその考えは決して間違ってはいない。

 何故ならウィルソンは第一王子である自分が神であると思っている男だからだ。




「ありがとうございます」



「よし。俺様の愛人にしてやろう! 喜ぶがいい」



「え?」



「どうだ? 嬉しいだろ?」



 王子はニヤニヤと気持ち悪い笑み浮かべて言った。



「はい、ありがとうございます」



「今日は予定があるから無理だが、明日からは存分に可愛がってやるからな」



 リリーの体をつま先から頭のてっぺんまで見つめたウィルソンは、下品な笑みを浮かべて去っていった。



 平民のリリーは貴族との面倒な争いを避けるべく、学園では目立たないようにひっそりと生活してきた。



 そのはずなのに貴族どころか王族とのトラブル。

 しかも片方は話の通じない残虐非道の王子。



 とはいえ、起きてしまったものはしょうがないと、彼女はこの事件をどう対処するか頭を悩ませる。



「はー、上手くいかない。というか、考えるの面倒くさい」




 そして彼女はまたしても思った。

 どうしてこうなったと。






・・・








 翌日。

 王都に衝撃が走った。



 なんと第一王子であるウィルソンが惨たらしく殺されたのだ。

 体中に拷問された跡があり、表情はこの世のありとあらゆる苦しみを受けたような絶望に満ちたものだった。



 この知らせを受けて民は大いに喜び、ウィルソンを殺した者に感謝した。



 そして、その犯人をリリーは知っていた。




「あの」


 

「どうしたの?」



「第一王子を殺したのはグレアム様ですよね?」



「そうだよ」



 リリーの核心をついた質問に対して即答するグレアム。

 あっさりと自分がやったことを認めたことにリリーは少し驚いた。



「そうですか」



「あのバカがわざわざ俺にリリーは俺のものだってマウントとってきてさ。聞くに耐えないことを言うから苦しめてから殺したんだ」



「グレアム様は大丈夫ですか?」



「うん? なにが?」



「第一王子を殺したのがバレたら大変なことになるのでは」



「まあ、大丈夫じゃない。君以外にはバレてないし」



「バレたらどうするんですか?」



「別にどうもしないよ。その時はその時だし、流れに身を任せるよ」



「余裕ですね」



「まあね。自分の強さに自信があるから」



「強さですか?」



「そう。たとえこの国を敵に回しても勝てるという確信があるから」



「なるほど」



「でもそれは君も同じじゃない?」



「何のことですか?」



「君からは強者のオーラのようなものをヒシヒシと感じる。そして、俺と同じ自分の力に絶対的な自信があるタイプだ」



「…」



「だからそんなに余裕そうなんだろう。最悪の場合は力で解決できるから」



「私がそんな強そうに見えますか? これでもか弱いレディーなのですが」



「見える。それに、そういう強者の雰囲気を纏っているところも好きだ」



「どうやらお見通しのようですね。確かに私は自分の力に自信がある。そして貴方と同じ力こそ正義だと思っている暴力の信仰者」



「やっと素直になってくれたね」



「一つ勝負をしましょうグレアム」



「勝負?」



「ええ、貴方が勝ったら私は恋人だろうと妻だろうがなってあげる」



「それで君が勝ったら?」



「そうね。その時は私の言うことを聞いてもらうわ」



「なるほど。ルールは?」



「私と決闘しなさい。私は自分より弱い相手と結婚するつもりはないから」



「分かりやすくていいじゃん」








・・・






「おはようリリー。今日も朝からいい天気だね」



「そうね」



「うん、塩対応の君も素晴らしい。昨晩とのギャップも相まって最高だ」



「殺すわよ」



「それは無理だね。だって君は僕に負けんたんだから」



 2人の命運をかけた戦いの勝者はリリーではなくグレアムだった。



 彼女は負けのだ。結果としてリリーはグレアムと結婚することになる。

 勝敗がついたあとのグレアムの行動は早く、あっという間に2人は挙式をあげてゴールインすることになった。



 まさか自分が結婚することになるなんて夢にも思わなかったリリー。



 そして、彼女はやっぱり思う。

 


 どうしてこうなったと…

 

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