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4.イブの夜

翌日の朝、目が覚めると一人だった。服は一か所にまとめられ何も身にまとっていない。テーブルの上にはメモが置かれていた。


”仕事だから行くね。玄関にあった鍵で戸締りします。鍵はポストにいれておきます”


(やってしまった……。)


昨夜、普段と何も変わらないことに嫌気がさして後半ワインを飲むペースをあげたのがあだとなった。二日酔いで頭はズキズキと痛い。起きてからひたすら水を飲んで過ごしていた。




夕方になると信吾からメールがきた。

「おはよう、起きた?」


もうとっくに起きているがなんて返事をしていいのか分からない。こちらが既読のまま画面と睨めあっていると新たなメッセージが来た。


「28日が仕事納めなんだけれど、理沙の家行ってもいい?」


こちらから会いたいと誘うのは照れくさいが会いたかった。いや、色々と話をしたいし、話すべきこともあるだろうと思った。


「分かった、待っている」


普段と変わらないように努めて、長い時間をかけたが短い返事をした。


(この前は、翌朝仕事でゆっくりと話す時間がなかったけど28日は付き合おうとか、好きだったとか何かしら話があるかもしれない。)


そんな期待を胸に私は信吾の到着を待った。


「おつかれ。」

お歳暮でもらったのか銘柄違いのビールを何種類も持って信吾が家にやってきた。

私が好きなイカゲソの唐揚げや春雨サラダもある。


何かあるかもしれない、そう思っていたが普段と同じように食事をしてTVを見て過ごしていた。会話も男女を感じるような甘いものはなく、お歳暮のビール上手いなど独り言に近い言葉を二言、三言交わすくらいだった。


「俺、明日から実家帰省するからもう行くわ。」

時計が22時を回り信吾は立ち上がり帰り支度を始めた。


(えっ……まさか本当にこのまま帰っちゃうの?え、イブの日のことは何もなし?)


「あ、あのさ、イブの日のことなんだけど……」

玄関で靴を履き立ち上がった信吾の服の袖を掴み、恐る恐る尋ねてみた。

「うん……」


「私たちキス、したよね……それで、そのあと……」


なんと言っていいか分からず口ごもった。


「……。もしかして覚えていない?」


「覚えているよ、でもなんで寝ちゃったか、信吾がいつ帰ったかは覚えていないの。だから変なことしてないかなって。」

必死で取り繕うと早口で信吾に伝える。


「別に。気にするようなことはないよ。」

そう言ってぶっきらぼうに信吾は玄関を出ていった


(え、え、えーーー?気にするようなことはないってどういうこと?)


私は釈然としない気持ちで信吾の後姿を見送った。知りたいのに、信吾の素っ気ない態度と事実を聞くのが怖くなり玄関で立ちすくんでいた。



その後も年が明けるまで連絡はなく、モヤモヤした気分のまま私は新年を迎えたのであった。





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@MAYA183232

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