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2.婚活疲れ


25歳を過ぎても結婚しない私を父はひどく心配をしていた。


「将来を考えている相手がいないなら、お金は出すから頼むから結婚相談所に行って欲しい。」


ある日、そう言って泣きつかれた。

両親は共に晩婚、結婚願望がなかったわけではなく結婚相手が見つからなかった。


父はお見合いを何回もしたが縁がなかった。そんな時に職場に母がやってきた。

その時、母は一度目の結婚生活を終わらせたばかりのバツイチだった。


『この人と付き合いたい』父は一目惚れをした。しかし、離婚したばかりの母は恋愛にも結婚にも前向きになれず父からの告白もあっさりと断った。それでも粘り強くアプローチを続けた結果、努力の甲斐あって結婚。今も結婚生活を継続している。


父の時代は『12/25のクリスマスを過ぎたらケーキも売れ残って安売りされるように女も25歳過ぎたら売れ残り』と揶揄されていたそうだ。母もバツイチだが最初の結婚は23歳の時だった。


そんなわけで25歳を過ぎても結婚もせずに、彼氏もいない、働きづめで仕事しかない娘の将来は危ないかもしれないと感じたらしい。大きなお世話この上ないのだが、父にとっては娘への愛情表現だったのだろう。


学生時代から進路や友人関係など何かと口を出してくることが多かったのも実家を出たかった理由の一つだ。最初はのらりくらりと交わしていたが徐々にしつこくなっていった。面倒だったが、嘘の恋人を用意する気も、頼む相手もいなく仕方なしに27歳の時に入会した。



【結婚相談!運命の相手に出会えるように全力サポート!】


素敵な言葉だが、婚活は減点方式の面接だ。

プロフィール写真は白やピンク、淡いブルーなどパステル系が印象がいい。好感を持たれやすい趣味や特技など男性受けを意識して事細かに指導される。


相手の男性を選ぶ時もたくさんの候補の中から学歴や年収、顔写真、趣味などたくさんの項目から絞り込んでいくのは、就活時代のエントリーシートを眺めているみたいだった。



また何度か会ったが、合わないと思った人には断りの連絡をいれなくてはならない。

これが相談所ではなく飲み会で知り合った相手なら連絡するのを止めてしまえば、そのうち自然消滅するのだが、そうはいかない。断りの言葉を考えるのも、逆に相手から断りの言葉を受け取るのも次第にストレスになっていった。



『〇〇〇の理由で交際は見送りさせてほしいと連絡がありました。須藤様に素敵なご縁が訪れることをお祈りしています。』


断りの理由と一緒にお祈りされるメールも見るのが嫌になってきた。断りメールを受け取るうちに自分に魅力がないから出逢えないのではないかと気分が落ちていく。



婚活は2年にわたり続いたが成果はなし。正月の帰省時に、婚活のことを言われたときにお酒も入っていたこともあり盛大にストレスだったことをぶちまけた。


「あーーー。結婚、結婚ってね、うるさいんだよ。断りの理由や上手くいきますようになんてお祈りもいらないんだよ。こっちは仕事に集中したいの。女の幸せイコール結婚みたいな考えやめてくれないかな。こっちは独立して、やっと認められはじめていいところなの。」


最初は激怒したものの無理矢理入会させたことに多少の罪悪感を感じたのか、それ以降は何も言わなくなった。



婚活から解放され自由の身になった時、もっと自由を感じたいと友人に誘われていたBBQに参加した。


都会のオフィスビルに囲まれるのではなく、休日くらいは緑あふれる新鮮な空気を感じたい。田舎を飛び出した私だったが、落ち着きたいときに求めるのはのどかな自然を感じられる場所だった。



そして、そこで信吾と出会った。信吾も同じく大学進学のために上京しそのまま東京でシステムエンジニアとして働いていた。


フルリモートのフリーランスWEBデザイナーとシステムエンジニア。

職業柄か信吾も周りと賑やかに話しながら仕事をするよりも自分のペースで黙々と作業をする方が好きだ。そのためか初めて会った時からどこか波長の合う感覚があった。お互い無理に話題を探して話しかけようとはしない。なんとなく相手が言った独り言を拾って話を発展させる。


無理に会話を続けるようなこともなく、沈黙が気まずいと感じることもない。まるで昔からの友達のように自然体でいられた。


『相手のことを好きになれるか』、『空気が悪くならないように会話を繋げなくては』、婚活の時はそんなことばかり考えていて良い人だと思って出かけても、会った日の帰りは疲労感が強かった。お互い気を遣うことなく過ごす信吾との時間は心地よくて新鮮だった。


BBQという場で変に気合をいれすぎていないところも、黒縁の伊達メガネとTシャツと緩いデニムでラフな感じも『自然体』という感じで好感が持てた。それは久々に感じたときめきに似たものだったかもしれない。



それから、信吾とは二人だけで会うようになった。最初は、私が外に出る日にカフェでコーヒーを飲む程度だったが夜に食事に行くようになった。そのうち私の家で映画を観たり、休日は昼間から来て夕食も一緒に食べるようになった。


部屋にいても何かあるわけではなく、お菓子をつまみながら映画を見たりゲームをやったり学生時代の友達と過ごしているような感じだった。部屋にいても甘い雰囲気になることもなく、緊張している様子もない。信吾は気楽な男友達という存在で、信吾も私のことも女として意識していないと思っていた。


あのクリスマスイブを迎えるまでは……。







お読みいただきありがとうございます。

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