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慣れ、愛?~気楽な同い年と情熱的な年下男の子に揺れる恋~  作者: 中道舞夜(Nakamichi_Maya)


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10.無邪気さと背伸びと

(一馬と別れてもう10年近く経つというのに、今更思い出すなんて…)


別れたばかりは悲しくて一馬の言葉ばかり思い出していた。

数年経ってから、次第に傷は癒えて何人かと付き合ったがどれも長続きはせずに半年もしないで終わっている。そして2年の婚活……。


一馬と別れてからは長続きした恋はない。名前や顔は覚えていても、別れた今でも誕生日や記念日を思い出せる相手は一馬だけだった。彼と別れた後も婚活でどんなに好条件の人と出会っても、つい一馬と比べてしまうところがあった。


しかし、だからと言って今も一馬に未練があると言うわけではない。「私は仕事を選んだのだからこの人生を恥じないようにしこごとに集中しよう」とどこか吹っ切れた部分もあるくらいだ。



信吾に言われるまで一馬のことは忘れていて、心の奥にある幸せだったいい思い出として眠っていた。信吾といい雰囲気になった時に、お酒に酔って一馬に伝えた台詞を信吾に言ってしまったと知り驚いた。

しかし、事実を知り頭をよぎったのは一馬とヨリを戻したいという気持ちではなく信吾に誤解を与えてしまったという後悔だった。



(キスして抱き合っていたのに、他の人と間違えているような言葉を言ったなんて誰かと重ね合わせていると思われてもおかしくないよな……。)


あの時、怪訝そうな態度を取った信吾の気持ちもよく分かる。



数日が経ち、いつもより1日早い木曜日に信吾にメールを送った。

「週末どう?」


すぐさま信吾からも返事が来たが期待していた内容ではなかった。

「ごめん、無理」


今までも都合が悪ければ断られることはあったが、今日はなんだか避けられているのではないかと不安がよぎり寂しくなった。


(このまま信吾との関係が微妙になって連絡しなくなる可能性とかもあるの??)




ピコンーーー


スマホが新しい通知を知らせる。相手は信吾からだった。

いつもは都合が合わなければそこでやり取りが終わるのだが、今日は新たなメッセージが届いた。


「来週どう?」

不安になっていた私だがこの5文字で一気に安心をした。私は10年たってもまだまだ子どものままだ。


「大丈夫」

駆ける気持ちを押さえきれなくて、先ほどよりも早く返信をする。



(一馬は元気にしているだろうか…今、幸せだろうか。)


窓の外に目を向け、久しぶりに思い出した恋人の今を思う。


一馬との付き合いは、今までの誰よりも深く濃いものだった。

親元を離れての生活で仕送りなど金銭的に頼る部分は多かったが、日々の食事や洗濯など生活していく上で必要なスキルを身につけていった。子どもから成人になる社会勉強の過程で無邪気さと大人になりたい、自立したいという背伸びした感情を合わせ持ち、お互いに時に励まし、寄り添い、支え合っていた。


喧嘩別れでも、浮気など相手に不満があったわけではなく、相手の未来を輝かしい物にするための選択だった。今、その輝かしさを手に入れたのかは分からないが、まだ子どもで相手の将来を背負えるまでの責任も自信もなかった私たち。それでも、相手のことを思っての別れは今になっても美しい想い出として蘇ってくる。



あの時は、『側にいたい』と素直に自分の気持ちが言えた。

私はいつから正直な気持ちを言えなくなってしまったのだろう……。


大人になって年を重ねるにつれて言えなくなった『寂しい』『好きなのはあなただけ』『一緒にいたい』などの恋人への愛や甘えの言葉。口に出さずに自分の気持ちを自分で処理をするのが成熟した女性になる過程だとしたら少しだけ寂しい気がした。


(次に信吾に会った時は、もう遠巻きな表現は言わない。誤解も解きたい。ちゃんと信吾と話がしたい。あの日、お酒に酔って口にした遠い昔に口にした一馬への言葉は、これから信吾と向き合うための必要なステップできっと一馬が応援してくれたんだ。)


都合のいいように解釈をして自分を励ました。




お読みいただきありがとうございます。

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@MAYA183232

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