8話 先生
最近投稿できなくてすみません!リアルが忙しくてなかなか執筆をできませんでした。これからはゆっくりにはなりますが投稿していくつもりです。では、お楽しみください
レオンを慰めたあと、ようやく教室に向かうことにした。教室に入るまでの道のりでレオンの改心を知らない生徒たちに憐れむような視線を送られていたが、すぐに良くなるだろうと気にしないことにした。しかし、レオンのほうが気にしてしまうらしく申し訳無さそうに謝ってきた。
「申し訳ない。俺のせいで注目を集めることになってしまった」
「いいってば。別になにかされて、迷惑しているわけでもないしね」
「そう。どうせ直ぐに良くなる。視線を集めるのも今のうちだけ」
レイとセラは全く気にしていない風に、というより事実気にしていないが答えてレオンに変に納得される。
「流石はSS級冒険者ってことか......やっぱり注目を集めるのにも慣れているんだな」
「そういうこと...好きではないけどね」
「まあ、そうだろうな。そういう性格には見えん」
そんなどうでもいい話をしていると驚くほど大きな校舎の最上階にようやく着いた。教室に入ると実力を測るような視線が飛んでくる。クラスの人数はレイとセラ、レオンを入れて12人しかいないようだ。
「やっぱり測ってくるね。それにギルドで見たことあるようなやつもいるし、それなりに実力は高そうだ」
それなり、と言っているが今年のSクラスは特に実力が高いと言われている。Aランク冒険者が2人いることで教師陣も盛り上がっているようだった。
席は自由なようで適当な席について担任が入ってくるのを待っていると、割と直ぐに来たようだった。全員気配を感じ取ってどんな人が来るのかとワクワクしている生徒が大半の中、レイとセラは小さく震えていた。
「おい、二人共どうした?確かに俺達には勝てないほどの実力者らしいがお前らなら勝てるだろう?」
「なんでなんでなんでなんで......セ、セラ!逃げな」
「あら?どうして逃げようとするんです?」
「「ヒッ」」
逃げようとした瞬間に後ろに現れたのは深い紫の長髪をおろしている18歳ほどにしか見えない美女だった。その美しいクリアな琥珀色の瞳には全く光が写っていなかったことを除けば、聖女のようにすら見えるのにレイとセラの震えは止まるどころか増している。
「な、なんでいるの。ずっと山の中に籠っていればいいのに......」
「なにか言いましたか?」
「い、いや。なんでもない...」
いつも無感情に会話をしているセラでさえ気圧されている。少しずつ逃げようとしていたレイを掴んでいるところを見るに、二人は精神的にか肉体的にかは分からないが勝てないような相手らしい。そのままだと進まないと察したレオンは美女に話しかける。
「あの、できれば自己紹介していただけるとありがたいんですけど......」
「ああ、すみませんね。この二人には後で話を付けるとしますか」
その言葉にビクッと震えた二人を横目に美女は教壇に立って自己紹介を始めた。
「これから皆さんの担任を務めます、エリシアと申します。冒険者をやっていたのですが、あの二人が今年から入学するということで今年から教師をすることになりました。ランクはSS級冒険者です」
そうエリシアが言った瞬間十三人しかいないはずの教室が三十人はいるかと思うほど騒がしくなった。だが、エリシアが手を一度叩くとすぐに静になる。
「特にこれからすることも決まっていないんですよね。親睦を深めろと言われても何も知らない儘言われても困ると思うので、自己紹介がわりに模擬戦でもしますか」
「なあ、それだとレイとセラの二人勝ちにならないか?出来ればそれは避けたいんだが」
レイとセラの強さを身を以て体験しているレオンがそう言うが本物だと分かっていない生徒から疑問の声が上がるが、それを無視してエリシアが話し始める。
「それについては序列を決めるわけではないので大丈夫でしょう。それに、私ともしてもらいますしね?」
「え、えっと拒否権は......無いですよね分かってます何でもないです」
エリシアの目が笑っていない微笑みを向けられて白旗を上げてしまったレイとセラに驚きながらレオンが答える。
「まあそういうことなら大丈夫だ。感謝する」
そう言って軽く頭を下げているレオンにざわつく教室を見渡しながらエリシアが呼びかける。
「さあ、そういうことなので運動場に移動しましょう」
全員が頷いたのを見て生徒を先導しながら案内していくが、途中で歩くのが面倒になったらしく、急に止まって空中に手をかざすと金や銀を装飾としてあしらった豪華な扉が現れた。
「歩くのは面倒なので転移しましょうか」
レイとセラ以外のすべての生徒が空間魔術を体験するのは初めてらしく、心を踊らせている様子だったがレイとセラは小声で文句を言い合っていた。
「でたよ、師匠の面倒くさがり。だから近接戦闘が苦手なんでしょ」
「本当にそう。すぐ体力無くなってへばるくせに私達には体力づくりさせてくるのやめてほしい」
「もうおばあちゃんなんだから仕方ないって」
一応言っておくがすぐにへばると言ってもSS級冒険者基準である。とてもじゃないがS級冒険者以下の人間がどうにか出来るレベルではない。
おばあちゃんという言葉にムカついたらしく、いつの間にか持っていた剣がレイの首元に吸い込まれるように振るわれる。
避けられないと判断したレイは幻納で刀を取り出して防ぐ。
「ちょっと、危ないですってば!ほんとに首が飛ぶとこでしたよ!」
「ならあと少しでしたか...惜しかったですね」
何の悪びれもなく言っているが、エリシアの地雷を地雷とわかりながら踏みに行ったのはレイの方だ。文句は言えないのである。
「惜しいって仮にも弟子を殺しかけて言う言葉ですか?」
「仮にも師匠におばあちゃんなんて言うほうがどうかしてると思いますがまあいいでしょう。この扉は運動場に繋がっていますから使ってください」
その言葉に全員が喜びながら通っていくが、レイとセラ、それにエリシアは残っていた。
「それで師匠?本当にここに来た理由はなんですか?貴方があの理由で教師をやるとは思えないんですが」
首が取れんばかりに頷いているセラと疑いの目を向けているレイに視線を合わせて、本当の理由を話し始める。
「まあ、信用ないですね。唯一の弟子だというのに...実際行かないんですけどね。それと、本当の理由ですが、知っているでしょう?魔王の誕生について。それの対策として今年の生徒から私のような実力者が教えて行くことになったんですよ。なんとか生徒を強くしてくれと、それが人間の為になることは分かっているので受けた、ということです」