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7話 嫡男

2話投稿...できちゃった。

何てことだ......ストックにしとけばいいのに投稿してしまったぜ

 一度家に戻り両親と別れの挨拶をしたレイとセラは学園へと戻ってきて、また寮に入る。

「んじゃ、また明日な」

「義兄さんほんとに大丈夫?朝あんなに弱いのに一人部屋って。また今日みたいなのは嫌」

「だ、大丈夫だ......多分」

 最後は消え入りそうなほど小声だったのだが読唇術ができないセラではない。当然レイが何と言ったか分かっていた。

「多分じゃダメ。絶対起きて。絶対」

「わ、分かったから、その振り上げた拳をおろしてもらえないでしょうか......」

「分かったならいい」

 拳を下ろしたセラにほっとしながら二人は寮に入っていく。レイが男子寮に入ると、入ってすぐのところにレオンハルトがいた。何を考えたのかレイに近づき、話しかけてくる。

「なあ、その、レイ!」

 なんとも煮え切らない様子でレイに話しかけてきたレオンハルトだったが、レイを呼ぶとき思ったより声が出たことに自分でも驚いていた。

「なんだよ?セラの話ならもう片付いただろ?」

「ああ、そのことなんだが......悪かった」

 そう言ってレオンハルトは頭を下げた。先の様子からは想像もできない姿に思わずレイは目を擦る。それは周りも同じだったらしく、意味が分からないとばかりに動揺が伝わってきた。

「おい、どういうことだ?態度が違い過ぎるだろうが」

「その...だな......お前に負けただろう?それも何もできずに。それで目が覚めたんだ。少し俺の過去の話をしたいんだが、いいか?」

 レイが頷いたのを確認してレオンハルトは話始める。

「俺はヴェルナー伯爵家に長男として生まれた。当然、貴族だから情報収集は欠かしてなかったんだが、そうやってしているある時、変な噂が流れていた。それがお前の...いやお前たちの噂だよ」

「俺たちの...ねぇ」

「ああ、何やら俺と変わらない年齢の子供二人組が最速でA級冒険者まで上がってきた......なんてバカみたいな噂だった。事実かどうか確認する為に諜報員に映像記録ができる魔道具を持たせて、戦闘しているところを撮影させていたんだ。帰ってきた諜報員はなんて言ったと思う?『本物でした!』だ。興奮を滲ませながら帰ってきた諜報員を怪しみながら映像を見たとき、衝撃だったよ。あんなに美しい戦闘は見たことがなかった。憧れてしまった。いや、憧れざるを得ないだろう。そして、家の魔石が無くなるほど繰り返し見て、刀を扱う訓練だってした」

 そう何でもないように言っているが、映像だけでレイとセラが驚くほど似た体さばきを習得できたのは紛れもなく努力と才能があったからだろう。

「でも、俺に才能はなかったんだ。体さばきの方は何とか形にはなったんだが、刀は扱えなかった」

 レイとセラが使っている体さばきは刀の切れ味があってこそのものだった。西洋剣の叩き斬るスタイルではどこかで無理が出るはずだが、そこはオリジナルを交えていたらしい。

「何度も刀を折ってるうちに使用人にも嗤われるようになった。そこからだろう、俺が高圧的に出るようになったのは。自分の方が立場は上なはずなのに馬鹿にされるのが耐えられなかった。だから高圧的に出ることによって自分を大きく見せようとしていた......のだと思う。だが、もう一度憧れを目にしてまた目指したくなったんだ。もう周りの目は気にしない......気にしてはいけないというのがお前と対峙して思ったことだ」

 確かにレイは子供だったのもあり、冒険者になりたての頃は侮られていた。それを剣を交えることで少なからず似た境遇だったことを感じ取ったのだろう。そうして語り終わったレオンハルトの過去に質問を投げかける。

「一つ聞こうか。君の家に刀を扱える人はいたのかな?」

「い、いや、居なかったな。長剣使いと話し合って訓練していた」

「ま、だろうね」

 意味が分からないといった風なレオンハルトにレイは説明する。

「そもそも刀っていうのは刀身がめちゃめちゃ薄いんだ。そのせいで碌に扱ったことがない人が使っても曲がるか折れるだけで無闇矢鱈に訓練してどうにかなるものじゃない。......いくら才能があってもね」

「な!?ほ、本当なのか......」

「一応言っておくけど、君は刀の才能はあるよ。それも長剣以上にね」

 驚きと喜びで声が出なくなっているレオンハルトを見つつ、解説を続ける。

「だからさ、教えられてみる気はないかな?一応初めての弟子なんだけど」

「い、いいのか?俺に良い印象などないだろう?お前の彼女を物扱いした位だしな...」

「まあ、イラついてはいるけどこの才能を見逃すのは惜しいかな。それに悪い奴じゃないのは剣筋を見たらわかるしね」

「あ、ありがとう......ありがとう......」

 涙を流すほどの喜びと、レイの優しさに触れてついに泣いてしまった。周りの痛い視線を浴びつつも、宥めるのにはかなり時間がかかったそう。

 

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