6話 対決
2話投稿は厳しそう......ごめんなさい!
「で?誰が合図するわけ?」
イラつきを隠そうともせずにレオンハルトに問いかける。
「そこの女にやらせとけばいいだろう」
未だにセラを下に見つつレオンハルトは命じる。セラは無表情を少し不快に歪めながらも答える。
「まあ、いい。やってあげる」
「お、ありがとうな。......準備はいいか?」
「誰にものを言っている?かかってきやがれ」
二人が同意したのを確認した後、セラから合図が出される。
「それじゃあ......開始」
開始の合図を聞いても二人が動き出すことはなかった。互いに見下しているので、先に動こうとはしなかった。
「来いよ、先手は譲ってやるからよ?」
「君程度に本気出したら死んじゃうよ?まあ死にたいなら良いんだけど」
「なんとでも言ってろ」
よくあるモブはここで怒りに任せて突っ込んでくるのだが、レオンハルトは冷静だった。それはレオンハルトは性格はともかく戦闘においては優秀であることを示していた。
勿論それに気付かないレイではない。評価を一段階上げるが、警戒には値しなかった。
「意外と冷静なんだね?最初はゆっくり行くから楽しもうか」
無自覚にレイは少し狂気的な笑みをこぼしながら宣言通りゆっくりレオンハルトに向かって歩いていく。一見侮辱に見える行為だがレオンハルトは警戒を緩めることはなかった。
『瞬穿』
レイがレオンハルトの間合いに入った瞬間、腰だめから突きが放たれる。それをレイは最小限の動きでよけ、レオンハルトの突きと同じ速度で居合を放つ。
『極閃!』
驚きつつも対応したレオンハルト。レイの居合を上に受け流し、空いている脇腹に向かって斬撃が放たれる。が、一度大きく後ろに下がることでそれをよけた。間合いがあいたことにより一度仕切り直しになったところでレイが話しかける。
「危ないなぁ。もっと準備運動に付き合ってくれてもいいじゃん」
「てめぇ、スキルを使わないだと?舐めてんじゃねぇぞ!」
今にも切りかかりそうな雰囲気を漂わせながらレオンハルトは叫んでいた。それでも剣士としての本能が止めたのか、切りかかることはなかったのは流石だろう。
「そんなこと言われてもね。使えないものは使えないんだけど?瞬穿......ね?」
「なんだと?......!」
隠されているわけではないが知っている人が少ないSS級冒険者のステータス事情だが、伯爵という高位の貴族だったせいか知られていたらしい。本物の可能性がとても高いことに気付たのだろう。SS級冒険者に喧嘩を売ったという事実に顔を青くしながら引くに引けない現状を忌々しく思っているようだった。
「ああ、セラの事は気にしてないといえば噓になるけど報復をするつもりはないよ。今は戦いを楽しもう?」
その言葉が開始の合図となり、目で追えるギリギリの速度でレオンハルトに迫っていく。ほとんどの学園生は対応できない速度だったがレオンハルトは対応して見せた。
『......極閃!』
「おお!反応するんだ!......でも、それだけじゃ届かないよ」
極閃の反撃の斬撃を微動だにせずに刀で受け止めてしまった。鍔迫り合いになり振り下ろしの形になっているレオンハルトの方が有利なはずだが、レイの片手で持っている刀は微動だにしなかった。
「動かないだと!?」
「技術の一つだよ。レオンハルトの力を地面に伝えてるだけ。つまり、君は地面と力比べをしているわけだ」
その言葉に勝ち目がないことを理解したレオンハルトは即座に後ろに跳んで間合いをあけた。それを追うでもなく褒めるような目で見ていたレイに文句が飛んでくる。
「義兄さん遊びすぎ。楽しいのはわかるけどそろそろ終わらせて」
「えーもうちょっとだけ......分かったから」
セラのジト目に耐えられなくなったレイは終わらせることにしたようだった。
「文句も飛んできたことだし、次で終わらせるよ......シッ」
レイの息遣いが聞こえたと思った瞬間、レオンハルトの首元に鈍く光るソレが当てられていた。
「終了。義兄さんの勝ち」
セラの宣言を聞いたレオンハルトはSS級冒険者の実力に乾いた笑みしか出ないようだった。レイは一言だけ残してセラとともに一度家に戻る。
「結構楽しかったよ。またやれることを楽しみにしてるよ」
家へ向かっている途中、珍しくセラが話しかけてくる。
「義兄さん、あいつあのままでいいの?」
「お、自分に絡んできた相手に慈悲をかけるなんて珍しいね?」
「誤魔化さないで。あいつの動き、どこで見たのか知らないけど明らかに義兄さんと私の動きを参考にしてる」
「付け足すなら剣筋も素直だったよ。そんな子が何で高圧的な態度をとってるかでしょ?しかも使ってる武器は刀じゃなくて長剣だったし。まあ、話を聞くつもりではあるよ。刀の才能も有りそうだったからね」
「考えてるならいい」
それだけ言ってセラはまた黙ってしまった。
「はは、まさか本物だとは......」
一度憧れ、鍛え、諦めた道を極めた男と戦った後レオンハルトはその場にへたり込んでいた。
「何故、今更になって現れるのか......」
絶望している声色でレオンハルトは呟く。その絶望がどんなものかは、本人にしか分からないだろう。
意味深にするのにはとても苦労しますね......
伏線ってどうやって張るんだ?他の方はどうしてるんだ?というのがとても気になります。