5話 入寮
二日連続本日二話目。今書き終わりました。ストックはありませんので明日も同じことをやれと言われても難しいです......
試験を無事に終えたレイとセラは今日から入ることになる寮へと向かうことにした。そこで今朝は慌ただしく確認できなかったことをセラに問いかけた。
「なあ、セラ。そういえば荷物って持ってきてるの?」
「馬鹿にしないで。義兄さんと違って準備万端」
レイにしかわからないほど小さく表情を変えながらセラは答える。ちなみにレイは行き当たりばったりで事に臨むことが多いのだが、セラは準備を万全にしてからでないと気が済まない性質だった。
「僕と違ってって......確かにセラほど準備はしてないけどさ...」
若干しょんぼりして歩くのが遅くなったレイを横目にセラは気にせずに寮に向かって進んでいく。置いて行かれてることに気付いたレイが急いで追いかけているうちに寮に着いた。
「結構大きいんだね、寮って。じゃあ、ここで別れようか。荷物を置いたら相手の寮の前で待ってようか。すぐ終わると思うけど」
「それでいい。じゃあね」
セラはレイと短く言葉を交わしてすぐに女子寮の方へと行ってしまった。女子寮に入るのを見送った後、レイも男子寮に入る。
入ってすぐに受付があり、担当は180cm近い灰色が混じった黒髪の男だった。
「あのー今日から入寮することになってるレイ・エルヴェルです。手続する場所はここで合ってます?」
「ああ、合ってますよ。っとその前に自己紹介をしておきましょう。オスカー・グレンフィールドです。男子寮の管理を任されています。何かわからないこと、困ったことがあれば遠慮なく教えてください。......名前の確認が完了しましたので、入って大丈夫です。部屋の鍵はこれです」
そうやって渡された鍵には205と書かれていた。
「ありがとうございます!」
そう言ってレイは部屋に向かう。幸いこの学園の寮は一人部屋らしいので誰にも気を使わずに自由に暮らせるらしい。階段を上がってすぐにある角部屋だった。
「よっしゃ!角部屋だ!」
小さくガッツポーズをして小声で喜ぶのも程々に、部屋を開ける。
そこには一人で住むには余りそうなほど広々とした空間が広がっていた。ただ、事前情報として、高級宿を改修して寮にしていたとパンフレットに書いてあったため、そこまで驚きはなかった。
「おお、やっぱり広いな。っとさっさと終わらせないとまたセラを怒らせちゃうな」
セラを待たせることを気にして空間魔術を使って持ってきていた私物をしまっていく。少し時間がかかってしまい疲労を感じていたがセラを待たせる訳にはいかない。すぐに部屋を出て寮の前に向かう。
寮を出た先ではセラが待っていたが、美少女が男子寮にいるせいで余計なお客さんがついてきているようだった。
「おい!いい加減にしやがれ!俺が誰だか分からないわけじゃないだろう?」
「知らないし、興味もない。さっさと消えて」
セラに軽くあしらわれているが自分に従うのが当然だといった様子で上から目線で話しかけている。だが、レイが寮から出てきたことに気付いたセラがレイのそばに駆け寄る。
「むぅ、義兄さんが遅いせいで変なのに絡まれた。何とかして」
「てめぇ俺が変なのだと?ふざけんな!」
よほど相手は短気だったんだろう。セラに対して拳を振り上げた......ところでレイが止めに入る。
「まあまあ、そこは申し訳ないけど手を出すほどじゃないでしょ。さすがに見逃せないよ」
「見逃せないだと?ふん。たがだが銀翼に憧れているだけの馬鹿共が。身分の違いも分らんか」
あくまで自分が上だということを確信しながらレイを馬鹿にしていく。
「言っても分からないだろうけど本物なんだよ?」
「SS級冒険者が学園に来るはずがないだろう。そんな暇があるなら依頼をして金を稼いだ方が何倍も有意義だからな」
「だから、僕はなんだと思われてるのさ。孤高で筋金入りの金好きだと思われてるわけ?心が折れそうだよ......」
「大丈夫。義兄さんのいいところは私が一番知ってる。それで十分でしょ?」
狙っていた女が自然にいちゃついているところを見せられてこの短気な男が冷静でいられるはずがない。知っている者が聞けば卒倒してしまうほど無茶な勝負を挑んでしまった。
「てめぇ、俺と勝負しやがれ。当然賭けるのはそこの女だ。勝ったほうがそいつを手に入れる。どうだ?」
普通に考えたら受けるはずがない。そもそもレイはセラを賭けに使うもの扱いはしたくなかった。それ以前にセラはレイ以外は眼中に無いのだ。受けるメリットはレイに存在しなかった。
「セラをもの扱いしたくないんだけど......まあいいや。SS級冒険者たる所以を見せてあげるよ。せいぜい頑張ってよね。お前のせいでセラの機嫌取りしなきゃいけないんだから......ごめんて。で?お前の名前は?」
レイがイラついている理由を話したところで脇腹をセラに思い切りつねられた。それを見た相手は馬鹿にされたと思い、物凄く機嫌が悪くなっていた。
「ヴェルナー伯爵家の嫡男たる俺、レオンハルト・ヴェルナーを馬鹿にしやがって。まあ、せいぜいセラとか言ったか?との最後の時を楽しむんだな」
次はまた戦闘シーンになります。前回よりも長くするつもりではありますが、どうなるかわかりません。