4話 試験
「あれ?止まっちゃった?」
「まあ、そうだよね。だって文字通り格が違う相手の実技試験をするってなったら嫌でも止まるでしょ」
「そんなもん?」
「そんなもん」
自分の噂を禄に聞いてこなかったせいで世間との乖離が激しいことを改めてレイは理解した。
「恥ずかしいから聞いてこなかったけど、自分の事の情報収集もしなきゃだね......」
「そうしよう」
レイとセラが今後の方針を決めた冒険者たちの再起動が完了したようだ。レイが呼ばれる。
「銀y...レイさん、こちらにどうぞ......」
諦めた様子で冒険者の男はレイを呼んだ。
「はーい!じゃあ行ってくるね」
「兄さんなら大丈夫」
冒険者のところに来るとやりたくない雰囲気を漂わせながらレイに話しかける。
「もう分かりきってることだが、一応聞いておこう。銀翼で間違いないな?」
「そうだけど、安心して。本気でやったりはしないからさ。本気で来なよ」
「それを言うのは俺だったのになぁ。まあいいや、それじゃあ開始!」
少しでも勝率を上げるためか、試験官としては褒められない不意打ちから試合が始まる。
『閃影斬!』
そう冒険者が宣言した瞬間、上段の構えから真向斬りを放つ。普通の15歳が対応できるものではないが、当然レイが対応できないはずがない。
「んー判断はいいと思うけど、仕方ないね」
レイは右前にずれながら右薙ぎに刀を合わせて対応する。が、鍔迫り合いになる直前、レイは切っ先を引き相手の剣は空を切り裂いた。スキルを解除したがついた勢いが消えるわけではない。対応出来るはずも無く、冒険者の首にレイの木刀が添えられていた。
「はい、終わり」
周りがシーンとしているがレイは全く気にしていなかった。SS級冒険者とは言えスキルを使うと思っていたのに、技術だけでスキル持ちを圧倒したからだ。
この世界ではレベルとスキルが存在しており、レベルは10、スキルは2個、数が違えば絶対に勝てないといわれていたのだ。それが目の前で覆れば驚くのも無理はないだろう。だが、B級冒険者以上はほとんど知っている事実として、SS級冒険者にはレベル、スキルが存在しないというものがある。つまり、SS級冒険者には適正やクールタイム関係なしに剣を振るい、魔法を使えるようになる。まあ、だからと言ってわざわざ剣の道を極めていたのに魔法を練習し始めるものはレイとセラを除いて全くいなく、SS級冒険者には特化型しかいないのが現実だった。その点レイとセラは師匠からどちらもやるように言われていたので得意は違うが万能型となっている。
「で、戻っていいの?それともまだ何かあるの?」
レイの問いにまだ理解が追い付かないといった様子で答える。
「あ、ああ。戻って構わない。だが、SS級冒険者というのは規格外なんだな......」
「そんなこともないんだけどね?ま、いいや」
そう言ってレイは戻っていく。そして、呼ばれるのは受付順らしく次に呼ばれたのは当然レイと一緒に受付をしたセラだった。さらに言えばレイが一瞬で終わらせてしまったためにほかの冒険者はまだ終わっていない。つまり......
「セ、セラ...だと?また俺かよぉぉおおおお!」
同じ冒険者が対応するわけだ。諦めつつも叫んでいる冒険者に近づき、面倒とばかりに辛辣に対応する。
「早くして。苦しむなら短いほうがいい」
「だ、誰のせいで......はい、はじめまーす」
セラのジト目に耐えられなくなった冒険者は文句もほどほどに開始の合図を送った。
その瞬間セラは突きを冒険者の首に放たれ、冒険者は対応できずに試験は終わった。ただ、最速の突きを放ったわけではなく見る人が見ればセラの実力をより高く評価するだろう。その突きは冒険者がギリギリ対応できない速度で放たれていた。もっと言うならセラは冒険者が試験をしているところを見ておらず、呼ばれてからの短い間で相手の力量を測りきっていた。
美少女が自分に勝てなかった冒険者に勝つという光景にほとんどの男子が歓声を上げていたが、セラは眼中に無いといった様子でレイの方を向いて褒めろという視線を送っていた。それに気づいた男子たちがレイに恨めしい視線を送っていた。気まずそうにセラの頭を撫でた瞬間、男子たちの絶望の叫び声が聞こえてくる。兄さんと呼んでいたことを聞いていた人らが励ましていたが、それも正しくは兄さんではなく義兄さんが正解だ。端的に言えば二人は恋仲にあるからチャンスは無いのだが分かるはずも無く男子たちは元気を取り戻す。
「はぁ、ユージンかリリィどこにいるかなぁ」
レイはこれからの学園生活に苦難が多くありそうだと悩みつつも、初めてできた同年代の友達に思いをはせていた。
戦闘シーンはやはり難しい。やっと書けたけど軽くになってしまった。ごめんなさい......