3話 学園
なんだか投稿したくなっちゃったから本日二話目投入
学園の入学試験当日の朝。レイ一家は慌ただしく動いていた。
「兄さん起きるの遅すぎ。遅れそうだよ?」
「ちょ、ごめんって言ってるじゃん。朝は苦手なんだよ、分かってるでしょ?」
「分かってたけど対処法がない。兄さんの努力次第」
「そりゃそうだけどさぁ......」
実はレイは朝にとても弱かった。そのせいで試験に遅刻しかけていることを考えるとセラに責められても文句は言えないはずだが、レイは言い返していた。......当然言い負けるが。
「文句言う暇あったら早く行く。じゃあいってきます」
「行ってきます!」
そう言って二人は急いで学園に走っていった。
「着いたけど、案の定見られてるね?」
「当たり前。SS級冒険者が入学試験に来るとは思わない」
「反応を見ている感じは試験官として呼ばれてると思われてそうだね。受付したらどうなっちゃうんだろう?」
学園について直ぐにレイたちは多くの好奇の視線にさらされていた。時々聞こえてくる噂をまとめると試験官として戦う相手として雇われたと思われているらしい。そこに恐る恐る近づいて話しかけてくる者がいた。
「お、おい。お前らの恰好ってよ、本物か...?」
そう話しかけてきたのは少し癖のある明るめの金髪の男だった。その両腰には短剣が差してありスピードタイプの二刀流であることが窺える。
「話しかけてくるのはいいけど、名前を言わないのは失礼じゃないかな?」
「あ、ああ。悪かった。俺はユージンだ。それで本物なのか?」
どうしても聞きたいという様子でレイに問いかける。
「本物かどうかと言われてもね。偽物がいるのかい?」
「俺らの年齢じゃ憧れだろ?......でもその反応は本物らしいな」
「銀翼のことなら僕らだけどね。......憧れは言い過ぎじゃないかな?」
「言い過ぎなことあるかよ!俺らと同じ15歳でSS級冒険者まで上り詰めて依頼の達成率は100%だろ?他にも......」
「も、もういいって!分かったから」
褒められすぎて耐えられないとばかりに顔を赤くしながらユージンのまだ続きそうな褒めを止めた。そしてそれた話を戻すためにレイは本題を問う。
「そんなことはどうでも良くてさ、何か用かな?」
「どうでも良くないんだが......そうだな、単刀直入に聞こう。この学園に何をしに来たんだ?」
ようやく本題に入れたが捉え方によっては角が立つことに気づいたのか、慌てて訂正を挟んだ。
「あ、別に来るなと言ってるわけじゃなくてな?単純にSS級冒険者まで上り詰めた人が学園にいるのが信じられなくてな......」
その慌てように笑いが漏れたのがいけなかったのだろう。ユージンに怒られてしまった。
「な、なに笑ってんだよ!」
「ごめんごめん。慌てようがね......別に試験官をしに来たわけじゃないよ。こんなに遅れてたら怒られちゃうしね」
「じゃあなんだ?まさか入学か?」
ありえないが一応といった様子で聞いてきた。
「そのまさかなんだよねー。遅れかけたけど間に合ってよかったよ」
意外そうな顔をしながらユージンは返す。
「その、あれなんだな。思ったよりも話しやすいんだな」
「なんだと思われてるの、僕?確かにこいつはほんっとに話しにくいだろうけどね?」
レイがそう言った瞬間、セラがいる方向からナイフが飛んできて、頬を掠った。ご丁寧にナイフが他人に当たらないようレイの横を過ぎたところで空間魔術を使い回収されていた。
「......あ、あぶねぇ。でなんだっけ...そうだ。噂に過ぎないからね、そんなの。ほんとに。」
「ら、らしいな」
まだ物凄い勢いで横を通って行ったナイフのインパクトが残りながらレイの言に同意する。
「なるべく話しやすい奴だって広めといてよ。それでさ......受付ってどこにあるの?」
「ああそれなら第一体育館でやってるよ...じゃあな」
「ありがとうね、同じクラスに入れることを祈ってるよ。セラ、行くよ」
「手続きは全部任せた。私は面倒」
「お前なぁ...すみません。入学試験を受けたいんですけど...」
「え?レイさん?」
「ってエリシアさん!何故ここに?」
「ギルマスに言われて来たんですけど、そういうことらしいですね?」
アランとギルマスは繋がっていたらしい。レイ達が学園に来ることを聞いたギルマスが絡まれることの無いよう、手を回してくれていたらしい。
「あ、入学試験の話でしたね。一応ギルドカードを貰えますか?」
「分かりました!ほら、セラも渡して」
「言われなくても分かる。過保護すぎ」
文句を言いながらもセラはギルドカードを渡す。受け取ったエリシアは慣れた手つきで手続きを終わらせていく。
さほど時間もかからずに手続きは終わった。
「はい、カードはお返ししますね。入学試験についてですが、グラウンドで行います。場所はすぐそこですね」
「ありがとうございます!じゃあ、行ってきますね」
グラウンドに着いたレイ達は未だ好奇の視線を感じながら試験官の冒険者らしき人に呼ばれるのを待つ。
「うわぁ、広くて人が多いせいで視線が痛いね...って試験官は冒険者を雇うことになってたんだ。そりゃそういう噂になるわけだね」
「そんな依頼あったんだ。討伐系しか見てなかった弊害。考えてなかった。兄さん、これからは情報収集をもっとするべき。自分たちの噂すらあまり知らないのはおかしい」
「そうだね、見るだけになるけど得られることはありそうだ。試験官は......大体C級くらいか」
そうやって周りが話していた噂の理由が分かったところで試験官の強さを大方把握できた。レイ達には到底叶わない強さだが、冒険者としては一人前といわれているランクだ。15歳が勝つにはかなり厳しいであろう相手が用意されていた。
「って今の女の子勝っちゃったね。でも、まだ粗削りだから磨けば光りそうだ。話しかけてみる?」
「私も?」
「友達は作ったほうがいいんじゃないの?知らないけど」
「まだいらない」
「ならいいけどさ......ねぇ君!僕はレイって言うんだけど、なんていうの?」
そうレイが話しかけたのは淡いピンクをした紙を肩につくくらいのボブカットの美少女だった。少女はすぐにレイに気づき反応する。
「え?本物?」
「またかよ......どうもー銀翼でーす」
少女は強かったおかげかレイの実力を感じ取ったらしい。一言話しただけで本物だと判断した。
「え、えっとリリィって言います!あの、サインもらってもいいですか!」
「サイン?その程度ならいいけど......」
そういってリリィがどこからか取り出した色紙にサインを書いて渡した。
「あ、ありがとうございます!うわぁ......サイン貰っちゃった......」
レイは自分の世界に完全に入られる前に本題を話す。
「リリィはかなり強いみたいだね?習った人とかいるのかな?」
「いや、全部我流でやってます!でも最近限界を感じてるんですよね...」
とても元気な子なのだろうとても大きな声で我流だと宣言したことで周りの人達が驚くのが分かった。
「きっとSクラスでしょ?レイピアは専門じゃないけど、体さばきなら教えられると思うよ。それと、敬語はやめてよ」
「ほ、ほんと!?お願いします!あ、お願い!」
そうやって話していたらようやくレイの番が回ってきたようだ。
レイが反応した瞬間、それに気づいた冒険者たち全員の時が止まった。
レイ。早く戦闘シーンに入ってくれ......