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2話 お話

「ちょっと!?どういうことさ!」

 そう声を上げたのはレイだった。気を許した空間で冒険者をやめるように言われたものだろう。さらに言えばアランとセレナはレイとセラにはバレないよう細心の注意を払って行動していたのだ。驚いて当然だった。予想していたのだろう、アランは気にした様子も見せずに言う。

「まあ落ち着けって。別に冒険者をやめろと言ってるわけでも現状に不満があるわけでも......いや、あるから行ってもらうのか?」

 そうやって一人で納得しだしたアランだったが、セラの一言で我に返る。

「一人で話してないで早く説明して。意味が分からない」

「...ああ、悪かったな。とは言っても学園に行ってもらうだけだ。不満があるといったが、お前たちがやってることに対してじゃない。ただ、同年代の知り合いが少な......いないだろう?だから親としては複雑だったんだよ」

 親としての本音をこぼしたアランは申し訳なさそうで寂しそうな顔をしていた。それを見たレイはそれでもといった様子で答える。

「で、でも!学費はどうするのさ?僕たちは今までみたいに稼げるわけじゃなくなるよ?」

「そのことなら大丈夫だ。これでも貯金はそれなりにあるし、お前たちが上に上がっていくのを見て冒険者の血が騒ぐんだよ。まだ引退を考える年でもないし、復帰するさ」

「私もそのつもりですから、心配せずとも大丈夫ですよ」

 そのセレナの追撃に渋々といった様子でレイとセラは頷く。

「わかったよ...そこまで言うなら止めないけどブランクがあることを忘れないでよ?」

「兄さんの言う通り。最初から討伐依頼をしちゃ駄目」

 その二人の様子に苦笑交じりに両親は答える。

「分かってるっつうの。体は前のように動くはずがないのは俺が一番分かってるよ......」

「大丈夫です。アランが暴走しかけたら気絶させてでも止めますから」

「怖すぎるって...っと話がそれたな」

 セレナの言葉で話し始めのような緊張感は雲散していた。そのことに内心でアランは感謝しながら話を戻す。

「突然の話になるのは申し訳ないが、来週の月曜日に試験があるんだ。とは言っても実技だけらしいからお前たちなら大丈夫だろう」

「は?あと2日しかないんだけど?そこのところはどうなってるのさ」

「まぁまぁ、実技しかないんだからさ?いけるいける。それとこれがパンフレットな」

 そうして渡されたパンフレットに書いてあったことを要約するとこうだ。

 まず名前はグラディウス剣術学園らしい。名前の通り剣術を教えてくれるところのようだが、魔術や兵法など科によっては剣術に留まらない。

 また、この学園は国内で一番二番を争うほど大きく、受験倍率もとんでもないことになってるようだ。......実技しかないのに。そのことに気づかないレイではなかった。それなりに大きな声を出して抗議をする。

「ちょっと!実技だけの試験で200倍ってどうなってんの!?受かるだろうけど絶対注目されるよね、それ」

「いや、知らないが...慣れっこだろ?SS級冒険者(ダブル)様?」

 その煽り方はしっかりレイをイラつかせることとなった。

「やっぱり僕ぅパパが冒険者やるのは心配だからさぁ?鍛えてあげるよぉ。SS級冒険者(ダブル)に鍛えてもらえるんだから感謝してよね?」

「い、いや大丈夫だ。そ、そこまで息子に頼るのも悪いからな、うん」

 そのアランの言にそれはそれは残念そうに答えた。

「そっかぁ。必要になったら言ってね?」

「ああ、必要になったらな、必要になったら」

「そんなことはどうでもいい。報告はそれだけ?」

 アランが念を押していると、セラが冷たく言い放つ。その問いにセレナが動揺しながら答えた。

「えぇ、そのはずだからもう部屋に戻っても大丈夫よ?」

「分かった。兄さんは話があるからあとで部屋に来て」

 それだけ言ってレイの返事も聞かずにセラはそそくさと部屋に戻って行ってしまった。そのせいで、娘に冷たくあしらわれて絶望しているアランとそれを慰めるセレナ、そして「返事...僕の意思は......?関係ないの...?」と動揺しているレイが残るというカオスが出来上がっていた。







「ん、やっと来た。兄さん遅い」

「いや、お前の食べる速度が速いんだが?それに返事くらい聞いてから戻れっての」

 そのレイの文句に気にした様子を全く見せずにセラは答えて見せた。

「兄さんはどうせいいって言ってた。聞く意味がない」

「意味がないってお前......会話しようぜ?兄ちゃん悲しいよ」

「義理だからせーふ」

 そんな意味の分からない言い合いもほどほどに呼ばれた理由をレイが聞く。

「で?僕は何で呼ばれたわけ?そこらの説明もされてないんだけど」

「これからの話」

「これからの話って言っても学園に行くだけだろ?なんか話すことあるか?」

 そうレイは一人で考えてみるが答えは出なかった。レイは戦闘以外のことで頭を回すのが嫌いだった。できなくはない。

「戦闘の時ぐらい頭回して。私たちはSS級冒険者(ダブル)としていく?レイとセラとしていく?まずはそこから」

 合点がいったとばかりに頷き、レイは答える。

「ああ、そんなことか。それならSS級冒険者(ダブル)としてでいいだろ。使える肩書は使ったほうがいいしな。急に強すぎるやつが出てくると目立つだろうしな。目立つことが確定してるならどちらでも関係がない」

 諦めを滲ませた顔でレイは答えるが、いつも通りといった様子でセラはあまり気にしていない。その事実に肩を落としつつもレイは返事を待つ。それを見ながらいつもの無表情で答える。

「意外だったけど考えてるならいい。それにまだある」

 そうやって話し合いを続けているうちに、夜は更けていく......

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