1話 伝説?
この世界には伝説がある。
それだけ聞くとどの世界でも同じだと言われるだろうがこの世界では実在する。
伝説と呼ばれる人間が世界に存在し、誰もが憧れ、目指す目標のような人物たち。そんな人間の中でも最も有名で最も強いと言われる人間の物語。
「ふう......今日はこいつで終わりでいいのか?」
「......ん。お父さんとお母さんが話あるって。早く帰ったほうがいい」
「GYAAAAAAAAAA!」
30mもあるファイアドラゴンが叫んでいるのにもかかわらず、会話をしているものが居た。戦闘中の会話とは思えないほど落ち着いた声色が響く。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ドラゴンがそう叫びながら首がずり落ちていく。二人が動いたようには見えず、ドラゴンは何故死んだのか分からずに死んでゆく。
巨大な魔物を倒した者は筋骨隆々な男ではなく16歳ほどの男女で、通りすがれば10人中10人が振り返るほど美しい白髮に純白のコートを着ていた。二人はファイアドラゴンが死んでゆく様をつまらなそうに眺めため息をついていたが、手際よくドラゴンの剥ぎ取りを終えると凄まじい速度でその場を後にし、冒険者ギルドへと帰っていった。
ギルドに素材を持って入るが周りの冒険者たちは慣れているのかあまり驚きはなかった。それも当然で、この二人組は銀翼と呼ばれるSS級冒険者だからだった。最年少記録を多く塗り替えた生きる伝説である。まだSS級冒険者となってから半年も経っていないので未だに帝国内では注目の的だ。二人は周りの視線を鬱陶しそうにしながら受付へと向かう。
「こうも注目されると流石に鬱陶しいな...どうにかできない?」
「無理。SS級冒険者になるときから分かっていたこと。今更文句は言えない」
「だよなぁ...っとエリシアさん換金をお願いできますか?」
レイの呼びかけに応えたのは深い栗色をポニーテールにまとめた美女だった。
「レイさんにセラさんですか。大丈夫ですよ。素材は今お持ちのものでよろしかったですか?」
「ああ、頼むよ。あんまり急いでないからゆっくりでいい」
「わかりました。それといつも言ってますが依頼書も一緒に提出してくださいね?」
そう目が笑っていない笑顔で言われ、SS級冒険者のレイも気圧されながら答える。
「わ、分かってますよ...はい、これで大丈夫なはずです」
「はい。依頼の達成を確認しました。料金は現金でお渡ししますか?」
「いや、急ぎの用事があるから口座の方に入れておいてください」
そう言ってコートを翻しながらギルドを出て、家へと帰っていった。
「父さん、母さん帰ったよー」
「ただいま」
その声にドタドタと階段を降りる音がして姿を表したのは母であるセレナだ。光の加減によっては白銀にも見えるプラチナブロンドをハーフアップにまとめた美女でアランとともに冒険者としてここら一帯では有名だった。
「おかえりなさい。この家の稼ぎを任せてしまってごめんなさいね。まだ16歳なのに......」
「いいって母さん。言ったでしょ?僕達だって役に立ちたいって。養子にとって幸せな生活をさせてくれてたんだからさ。恩返しくらいするって」
「そう。もっと自信を持つべき。あのとき拾ってもらえなかったら、私達はここにいない」
「......ありがとう。さあ!ご飯ができてるから早く席につきなさい。冷めちゃうわよ?」
「やった!今日のご飯は何かな~」
「私も楽しみ。でも兄さんはしゃぎすぎ。もっと静かにして」
そう遠ざかっていく声を聞いて、セレナは微笑みを浮かべる。
「うるさいけど、元気で良かったわ。子どもに心配されるなんて情けないわね......」
その呟きを聞いた者はいない。
「「「いただきます」」」
「さて、今日早く帰ってきた理由の話をしようか」
そう言い出したのはレイとセラの父であるアランだった。アランは180cm以上の高身長で少し暗い銀髪をしている元Bランク冒険者である。
「遠回しに言ったところで意味なんかないからな。単刀直入に言おうか」
そうアランが言うとレイとセラに緊張が走り、無意識に喉が鳴る。冒険者をしている時にはこのようなことはないのだが鳴ってしまったのは家の中ではリラックスしている証拠だろう。
「学園に通ってもらう」
25/03/25 21:30 レイの一人称を下記の通りに変更しました。
「俺」→「僕」