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ヲ嬢様と完璧従者の華麗なる日常 〜金と気品とボケと胃痛と〜  作者: 清士朗
第二章 従者のお見合いを妨害せよ

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34 料理の基本、さしすせそ

「陽毬さんと放課後こうしてご一緒するのは初めてですね……ここ最近は、ずっとクラブ活動でお忙しそうでしたよね?」


 レシュリアから休部の連絡を受けた陽毬は、同じく休みだった陽子と「甘いものでも食べに行こう」という話になり、今に至る。


「先輩方に何かあったみたいで……そういえば昼休憩の時に要先輩に会いましたよね? どんな感じだったんですか?


「普段のお姿を存じ上げないので比較は難しいですが……お話に聞く通り、完璧な給仕でしたね。別段落ち込んでいるようなところもありませんでしたし……」


「まあ、レシュリア先輩に振り回されないだけ、要先輩としては平和な一日だったのかもしれませんね……」






 そんな他愛もない会話を続けながら歩き、目的のカフェへ。


 窓の外から少しばかり中を覗くと、時間帯のせいか客は少ない。これなら待たずに席へつけそうだ。


「ここのカフェ。文香先輩のおすすめなんです。雰囲気がいいって聞いて……ここでもいいですか?」


「まあ。源道寺様おすすめのお店なのですね。ぜひここに入りましょう」


 ドアに手をかけ、入店する。


「いらっしゃいませ、ご主人様!!」


 金髪のメイドが深々とお辞儀した。

 ——どう見ても知っている顔だった。


 陽毬は反射的にドアを閉めた。


 メイド喫茶と間違えていないよな? 看板をもう一度確認する。


「あの……陽毬さん。今の……」


「いやいやいや、気のせいですよ……めちゃくちゃレシュリア先輩でしたけど……気のせいってことにしましょう……そうしましょう……」


 あははと笑いながら、もう一度ドアを開ける。


「あら、やっぱり陽毬さんでしたのね!!」


 ——気のせいではなかった。完全にレシュリアである。


「なにやってるんですか……レシュリア先輩」


「いや、これはまことにやんごとなき理由がありまして……あら、隣の方は……先日、朝お見かけした」


 陽毬の隣にいた陽子に視線を向け、レシュリアはほんの少しだけ姿勢を正す。陽子に向けた視線は少し警戒の色が見える。


「初めまして富士宮様。十島陽子と申します。その……陽毬さんに対しての私の行いについて、思うところがあるのは承知しています」


 やや俯き加減の陽子に、陽毬が慌てて割り込む。


「レシュリア先輩、本当に陽子さんとは今は仲良しなんです!! 大丈夫です!!」


「陽毬さんがおっしゃるなら……私が目くじらを立てる道理はありませんわね……レシュリア・レンハート・富士宮と申します。改めてよろしくお願いします」


 和解の空気がようやく漂った——その直後。


「ちょっとレシュリア、いつまで入口で油売ってるのよ。……って、あら。陽毬さんに、十島さん?」


 奥から姿を見せたのは、メイド服姿の文香だった。


「文香先輩まで!? なんでメイド服なんですか!?」






「えーと、そと。つまり……要先輩と入山瀬先輩ともう一人。その三人がデートのようなことをしていて、おそらくここに来店するであろうから徹底的に妨害すると……」


「その通りですわ。我らがIGLは理解が早くて助かりますの!!」


「いや、一ミリも理解したくないのですが……え? あれだけお見合いの時に怒られて、またやるんですか?」


「それはそれ、これはこれですわ。これで入山瀬さんのお株を下げれば、要も復職を希望するかもしれませんし」


 ダメだこいつ。頭のネジが消し飛んでいると陽毬は頭が痛くなる。


 隣の陽子も「な、なるほど……」と頷いてはいるが、脳が理解と共感を拒否した上での脊髄反射の社交辞令だろう。


「それで、まさか料理もお二人が? え? この店を潰す気ですか?」


 調理実習の件は少しばかりだが聞き及んでいる。人体がダメージを負うような対人兵器を作る二人の料理を提供したら、この店は風評被害によって閉店待ったなしだ。


「安心なさって。料理はさすがに綾が作りますわ。私たちも傷害罪で捕まる気は毛頭ありませんの」


「それに、この店のことには迷惑かけないわ。万が一妨害が飛び火しても大丈夫なように。今この店にいる客は私たちが用意したらサクラなのよぉ」


 冗談っぽく言った後に笑うレシュリア。それに釣られて文香も笑う。


 ——いや、あなたたちは私に睡眠薬を盛った上に、天井裏に縛りつけた前科があるじゃなか。


 あまりにも都合のいい記憶の改竄に陽毬は理解が追いつかなかった。






「そもそも、調理実習で負ったダメージが残っているって、どんな料理を作ったんですか……?」


 陽毬と陽子を席に案内したレシュリアと文香は、さも当然のように自分達も席に着く。


「実は味噌汁でして……陽毬さん、確かお昼にクッキーや、味噌汁くらいなら作れると仰ってましたよね。もしよければぜひアドバイスをくださいまし」


「と言っても、料理は"さしすせそ"を守れば大抵は食べられる味になる気が……

 好き嫌いを抜きにして、ある程度のものがそれなりに作れるようになると思います……」


 さしすせその意味がわからず首を傾げるレシュリア。


「さしすせそ……? ああ、確か聞いたことありますわ!!」


 最初こそ首を傾げていたが、何かを思いだしたであろうレシュリアの反応。


「さすが、知らなかった、すごーい、センスある、そうなんだ。この頭文字でさしすせそ。ですわよね……?」


「いや、そんな軟派なさしすせそ、料理を作る時にどう使えと? むしろ作ってる人の隣で邪魔してる人のさしすせそじゃないですか」


「レシュリア、あなたそんなこと知らないの? 料理の味付けに用いる基本的な調味料のことよ。砂糖、塩、酢、醤油、そして、"そ"はソイソースのことよ!!」


 文香がドヤ顔で言う。


「いや、醤油二回言ってますよ……しかもソイソースって、なぜそこだけ英語」


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