20 トロフィーをあなたに
「私が優勝トロフィーを持ちますわ!!」
「いーや、私ですぅ!!」
大会が終わって週が明けた月曜日の放課後。
娯楽遊戯倶楽部の部室には、今日もにぎやかな声が響いていた。
——話は、大会終了直後にさかのぼる。
『優勝は——GYCゲーミング!!』
歓声が鳴り響く中、閉会式のアナウンスが流れる。
オンライン開催のため、実物のトロフィーは後日郵送とのことだった。
「まあ! そんな悠長なこと、言っていられますの!?」
配信を見ながらレシュリアがテーブルを叩く。
「協賛企業のひとつに富士宮グループが名を連ねているんですのよ!? 少しくらい優先してくださってもよくってよ!」
「お嬢様、運営の都合もありますし、そもそも参加枠に無理やり滑り込んだ前科があります……」
要が苦笑しながら肩をすくめる。
「……あ、それなら」
陽毬が控えめに手を挙げた。
「今日、父が運営対応で会社に出社してるはずなので、そのままトロフィーを持ってきてもらえないか連絡してみます」
「まあっ! 陽毬さん、それはグッドニュースですわ!!」
「さすが運営の娘ねぇ〜。こういう時に頼りになるわぁ」
こうして話はまとまり、週明けの月曜日。
陽毬の父が運営本部からトロフィーを届けてくれた。
それを受け取った陽毬は、部室へとまっすぐ持ってきたのである。
「せっかくだし、皆で写真を撮りましょうよ!」
レシュリアの提案に全員が賛同し、自然とカメラを構えることに。
——だが、冒頭の騒ぎに戻る。
「私の華麗なる爆破で何度もチームの窮地を救ったのですから、当然この私が持ちますわ!!」
「なにを寝ぼけたことを言ってるのこの自爆テロリストは。何度もチームを窮地に立たせたの間違いでしょ!? それよりも毎試合。キルを重ねたこの私こそ!!」
「あらその歳でもう物忘れかしら!? キルスコアトップは陽毬さんですわ!!」
レシュリアと文香がトロフィーを取り合う。
今日は奪い合う二人の真ん中ポジションにはトロフィーがいるため、平和を享受している要はニコニコと穏やかな顔でスマホ用の三脚を設置している。
「お嬢様方、いい加減になさってください。それに大切なことをお忘れですよ」
綾が咳払いしてピシャリと告げる。
「陽毬さんがいなければ、一勝どころか参加すらできなかったのですから——最大の功労者は陽毬さんです」
「……そ、それもそうですわね」
確かにその通りと納得した二人は陽毬にトロフィーを渡す。
「わ、私がトロフィーを!? え、ええっ!」
「そうよぉ。ささ、真ん中に立って。その隣は私よぉ」
「ずるいですわ! なら空いている隣はこの私が!」
陽毬を中心にレシュリアと文香が並ぶ。
「……では、よろしいでしょうか?」
要がタイマーを押し、綾と並んで外側に駆け寄った。
「——さあ! 笑って!」
レシュリアの声に合わせてシャッター音が響く。
その瞬間、トロフィーよりもまぶしい笑顔が、一枚の写真に焼き付けられた。
これにて第一章は終了です。ここまで拙作にお付き合いいただき本当にありがとうございます。
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第二章もすぐに投稿させていただく予定ですので、よろしければお付き合いのほどを頂けましたら嬉しいです。




