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ヲ嬢様と完璧従者の華麗なる日常 〜金と気品とボケと胃痛と〜  作者: 清士朗
第一章 新年度にはチーター討伐を

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17 破竹の進行

 私の技量のなさで、やっと大会の中身に入って参りました。

 このままダラダラと毎日投稿しても中弛みになってしまうと判断したので、本日はこのまま大会終了(一章終了)までまとめて投稿させて頂きます。

 宜しければお付き合いの程をお願い致します。

『いやあ、あっというまに二回戦も終了ですよ!! どうですか近藤さん! 気になるハイライトシーンはありますか?』 


 二回戦後のインターバル。

 先ほどと同様。運営の独断によるハイライトシーンが流れる。一通りシーンを流したあとに、実況が解説の近藤に会話を振る。振られた近藤の肩はどこか小刻みに震えていた。


『い……いや。も、もうこれでしょ……!! このGYCゲーミングの特攻爆破でしょ……!! あー、もう無理、めっちゃ面白いよ!! いいねいいね、これ。最高にぶっ飛んでるよ!!』


 近藤がそう言ってマイクの音が割れるのも気にせず笑い出す。近藤のお墨付きをうけてしまったからか、運営のスイッチャーがひたすらにレシュリアのカミカゼ特攻シーンをクローズアップする。繰り返し放送される大爆発。 


「テコンドーさんに褒められましたわ!!」


 レシュリアは飛び跳ねて喜ぶ。その様子を要はどこかやるせない表情で見ていた。


「……はあ。自爆でウケをとるのはレシュリア様くらいですよ」






 二回戦の勝利を皮切りに、GYCゲーミングはまさに破竹の勢いで勝ち上がっていった。


 三回戦《高架下市場》では、文香と綾の主従コンビが見事な連携で敵を翻弄。まさにこれぞFPSといったキルを量産し、見事に勝利。


 四回戦《硝煙のアトリウム》では、レシュリアの“珍プレーゼロ"で試合を終えるという歴史的快挙を達成。


 五回戦《砂塵のドーム》では、IGLである陽毬の予想と、それに対する指示がとにかく噛み合い、敵チームが一度もリードを奪えなかった。






「いよいよ準決勝ですわね……」


 レシュリアにはいつもの覇気がなかった。

 それもそのはず。ここまでノンストップで試合をこなしてきた一同。さすがに疲労が溜まりに溜まっている。


「このあたり、特に首周りが強張ってるわねぇ。綾ぁお願い」


「はいはい、わかりましたよ」


 綾が文香の肩周りをマッサージする。


「あ、あん……いい、わぁ……そこ、もっと強く……くっ、イク……」


 妙に生々しい声を出す文香の隣で、陽毬は蒸しタオルで目を包んでいる。こんなこともあろうかと要が用意したものだ。

 アロマがほんの少しだけ垂らされた蒸しタオルに包み込まれた陽毬の表情はだらしなく溶けている。


 そんな中、レシュリアは一人だけPCのモニターを凝視している。


「次の試合ですが、なかなか運営からメッセージが届きませんわね……」


 先ほどまでスピーディーに試合が行われていたのだが、次の試合についてのアナウンスがない。


『えーと、ここで重要なインフォメーションをさせて頂きます!! ——GYCゲーミングの代表者の方!! ただいま送信されたメッセージから運営のVCアプリサーバーに入室してください!!』


 公式生放送から自分たちのチーム名が呼び出されると先ほどまで緩んでいた空気が瞬時に張り詰める。


「い、いまGYCゲーミングってアナウンスされましたわ!!」


「レシュリア様、とにかくメッセージを確認してください」






「相手チームがチート行為を働いていた……ですか」


 レシュリアの代わりに要が運営とやり取りをする。


『はい。断定とそれについての対応で少々時間がかかりまして……お待たせして申し訳ありません』


「いえお気になさらずに。であるなら、我々の相手は先ほどの試合でそのチートチームに敗北した方々ですか?」


『本来であればそうしたいのですが、ここまで試合が進行した中で、当該チームによって敗退したチームがいくつもあります。

 直近の試合だけで判断するのは他のチームにあまりに不公平かと……』


 準々決勝まで、もうすでに全試合が終了している。


 運営スタッフの言うとおり、例えば初戦でそのチームと当たって負けたチームにとってはあまりに不公平な処置だ。


『運営本部としてはこのままGYCゲーミングさんには不戦勝として決勝に進んでいただこうと思います。

 被害に遭われたチームにはゲーム内通貨にて補填させて頂くことで折り合いはついております』


「なるほど……我々としてはそれは願ったり叶ったりです」


『ご理解頂きありがとうございます。現在、別の準決勝が開催されております。試合終了後、休憩時間を設けます。

 そのため決勝戦は今から一時間後でお願いいたします』






 思いがけない不戦勝で決勝進出が決まった。


 現在進行中のもう一つの準決勝で、決勝進出を争う二チームのうち——陽毬は片方のチームが気になっていた。


「おそらく決勝の相手は《Team LIBRA》だと思います」


 その言葉に全員の視線が陽毬に向かう。


「有名なチームなんですか?」


 そう切り出したのは要だ。


「社会人のゲームクランです。でも実力はアマではありません。プロも参加している大会に出場して上位入賞をしていたのを覚えています。

 はっきり言って、今の私たちでは勝つのは厳しいかも、です……」


「そ、そんな……せっかくここまで勝ち進んできたのに……」


 レシュリアの発言とトーンはまるで戦う前から負けを認めるかのようだった。


 全戦快勝とはいかず、危ないシーンも多々あった今大会。その上でチームのIGLである陽毬が厳しいと評価を下すのならば、普段から前向きかつ能天気なレシュリアでもさすがに気分が沈む。


 再びため息をつくレシュリア。そんなレシュリアの頭に軽いチョップが落とされた。それは文香だった。


「らしくないじゃない……そうやって落ち込んで、猫背になるといつもより"お腹"出てくるわよぉ」


「は、はぁ!? いまお腹の話は関係ないですわ!! それにご覧なさい!! 私のこのパーフェクトボディを——」


「ふーん。まだ大きな声だせるじゃない……耳障りだけど、お通夜みたいな、ため息交じりの貴方の声よりはマシだわぁ」


 そう言ってニコリと微笑む文香。


「文香、貴方……」


「貴方はおバカさんだけど、諦めの悪いおバカさんでしょ?」


 「バカはよけいですわ」と言い返すレシュリアの目に熱が戻っていた。


「ふんっ……文香の言うことが正しいなんて、まったく珍しいこともありますわ!!」


「私はいつでも正しいのよぉ。人生の二択を常に間違える貴方と違ってねぇ」


 プッツン——。


 何かが切れる音がした。


「確かに私は間違いを犯してしまいましたわ。文香が正しいなんて……!! 乳に栄養が行ってる文香の脳みそで、正しい判断なんてできるわけありませんわ!!」

 

「どういうことよそれぇ!! 貴方こそ、頭空っぽだから上に伸びるんでしょ!?」


(……やれやれ、まったく)


 要が苦笑いを浮かべ、綾はこめかみを押さえる。陽毬は少しだけ嬉しそうだ。


「バカのっぽ!!」


「アホ垂れ乳!!」


「垂れ乳ですってぇ!?!? あーあ、いま地雷を踏み抜いたわ!! 踏み抜いたどころか、その上でバービージャンプしたわ!!」


 文香が要の腕を掴む。


「要様、聞きました!? あのひどい言葉!! 文香はとても傷つきました!! 決勝戦開始まで膝枕をして、良い子良い子と文香の頭を撫でてください!!」


「あら? 横になるとその垂れ乳が左右でバランス悪くなるかもしれませんわよ? ——だから要から離れなさい!!」

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