まだ追加要素ががあるというのか
「気が付くとそこは知らない天井だった。」
これは絶対に言うべきセリフだ。むしろ口に出して言いたい日本語一位だ。
「何を言っておるのじゃこやつは。いや主様じゃったな、こんなのでも。」
「今北産業」
「何を言ってるのか分からんが、とにかく説明は必要じゃな。」
「多分わかる。俺は勇者でこの世界を救えばいいんだろう?お前からもらったチートを使ってな。」
「何と勘違いしておるのか知らんが全く違うぞ。あ、いや多少はあってるのじゃ。」
「で、魔王か邪神を倒せばいいのかな?フフフついに俺の隠された力が目覚めるときが来たようだな。この右腕に封印されたヤツが騒いでるぜ、俺を解き放てとな。」
「魔王も邪神もおらんぞ。いやどこかにおるかもしれんが全く関係ないのじゃ。それに主様の右手には何もおらんのじゃ。というか全く説明をさせてもらえないのじゃ。」
「のじゃのじゃうるさいのじゃ。」
「主様が一向に説明させてくれないからツッコミで精いっぱいなのじゃ。」
「ツッコミならまずはこの体からだろ?何故に若返っているんだ?」
「案外冷静に現状把握しているのじゃな、訳の分からんことばかり言って錯乱しているのかと思ったのじゃが。」
「これでもオタクとしてはや四半世紀、ましてや日本人なら異世界転移など珍しくもない。」
「さすがにそれはないじゃろう?それなりに調べたが主様の世界では異世界への転移の事例はなかったはずじゃぞ?」
「それはお前の調査の力が不足しているからだ。無料で読める小説投稿サイトや新作アニメはむしろそんなのばっかりだ!」
「一体何なのだこの流れは。質問したことぐらいは答えさせるのじゃ!]
「良いだろう。さあ答えるがよい。」
「錯乱してないのにその言葉遣いは一体何なのじゃ。まあいい。そこから説明するのじゃ。」
「モニターが二つ並んだんだ。テンションも上がろうというものだ!」
「まだそこだったのか!いやいかんいかん妾よ落ち着け巻き込まれるな、話が進まないのじゃ。」
さすがにこれくらいで済ますとしよう。のじゃロリエルフもこれ以上は限界だろう。実際話もすすまないからな。
寝ていたベットから足をおろし、座る形でのじゃロリエルフに向き合う。のじゃロリエルフはそこにあった椅子に座って深呼吸をして話し始めた。
「まず主様のその体の事じゃが、この世界に召喚するにあたって作り替わったようじゃ。妾の召喚魔法は基本的には魂の召喚、いやむしろ概念というか存在そのものを召喚するものじゃ。」
と得意げに話すのじゃロリエルフ。
「なるほどな。その結果この世界の法則に従って再構築され、こんなショタボディになったというわけか。」
「いや主様それは少し違うぞ。魔力やオドに適応するための再構築は行われたのは確かじゃが、若返ったのは多分違うのじゃ。」
「んん?そうなのか、じゃ、なんでだ?」
「それは妾の召喚魔法がそのように働いたからだと思うのじゃ。」
「それは一体どういうことだ?」
「では、事の発端から説明するのじゃ。」
ということで改めて最初からの説明を聞き終わって、こっちからもいくつか質問をして状況が理解できた。
まずこのじゃロリエルフ。名前はルナ。
エルフの王族で反逆者。罪状の重さによって罰として奴隷に落とされた。
奴隷に落とされたものの元の身分やこれまでの功績もあって引き取り先が決まらない。それもそのはず。前例がない初めての事だったからだ。
同じ王族だと結局罰にならないし、臣下も恐れ多くて引き取りたがらない。平民が引き取るなどもってのほか。エルフのなかでも決まらないのに多種族に引き渡すなどもってのほか。未婚の王女なのもあって誰が引き受けるのかも決まらない。そこでコンクラーベよろしく三日三晩話し合った結果、長老の一人が採決を下す。
「罪状の原因にもなった召喚魔法で相応しい者を呼び出そう。」
と。
条件は主人として相応しい人格者であること。刑期となる期間が終わった段階で婚姻を結べること。この二点だ。
ずいぶんアバウトな条件だけれど、魔法は術者のイメージで結果が左右されるもの。召喚魔法も同じで使ったもののイメージが反映されるらしい。つまりこののじゃロリエルフの要望通りの俺が選ばれて召喚されたということだ、ただ俺が条件通りだったのは魂レベルでのことで、肉体はこののじゃロリエルフの性癖に引き摺られて再構築された、ということだ。
こいつはただでさえ【のじゃロリエルフ】という多重苦属性なのにさらのショタ好き属性という呪いも発動してやがるのだ。きっと前世で民族浄化レベルの悪行を行ったのに違いない。
というか前世で悪行を重ねたのは俺かもしれない。こんな目に合うとは。というかそれほどでもないな。思ったよりもショックを受けてないし、楽しそうでもある。二台並んだモニターとはもう一生会えないということだがそれ以外の未練は思ったほど、無い。
そういう意味でも世界によって俺が選ばれたのは正しかったのかもしれないな。
「なので、主様は妾の主様で旦那様なのじゃ!」
俺を指さして嬉しそうにそう宣言するのじゃロリショタエルフをみて俺もなぜかかわいいなと思った。PCが気になって気になって仕方なかったのは召喚魔法の影響だったんだろうけど、こいつの絵をみて好きになってしまったのは召喚魔法の影響とか魅了魔法とかじゃなくて、運命とかそういうものだったのかもしれない。うかつにもそう思ってしまったのだ。
「なんかいい感じのナレーションで締めくくろうとしておるようじゃが、あれはわらわの魅了魔法なのじゃ!」
「何だとお前!なんか今ので色々全部台無しになった気がするわ!」
「主様の怒った顔も素敵なのじゃ!」
「むしろその一言でプラス方向に振り切れたわ!俺チョロすぎだろ!」
とか結局イチャイチャしてやったぜ。どうだ羨ましかろう。
そう、これが俺のファンタジー世界に行く話の始まりだった。
「またなんかいい話風にまとめようとしているのじゃ!」
「いや、そこはそれでプロローグを締めさせろよ!」
「さすがにこのやり取りは疲れたのじゃ」
「いい若いもんが何を言ってるんだ?」
「これでも200年は生きてるのじゃ!アラフォーの程度の主様に若者呼ばわりさせるいわれはないのじゃ!」
おいまて、何だと!今何を言ったのだこいつは?
「お前、ババァ属性も持ってやがったのかー!」
異世界転生の導入は結局俺の魂の叫びで締めくくられるのであった。
※あくまでも異世界の、しかも異種族の話です。そこだけはご理解ください。