愛国 八
コヒョとリオンは手を合わせてなにやらむにゃむにゃ呪文を唱えれば。船は浮かび、遥か高くへと飛び立った。
船はリオンとコヒョの念力で動かせる。
戦に巻き込まれて壊されないよう、しばらく空の上で浮かばせるのである。必要となれば、念力で呼び戻すのだ。
しかし、肌寒い。季節は秋から冬へと変わりつつある様子だった。
「そういえばさあ」
羅彩女は問う。
「この世界には、妖や魔物のたぐいはいないのかい?」
「そうだね、僕もよくわかんないけど、いない、のかな?」
リオンの応えに、羅彩女は心許ないものを覚える。今までの冒険は、羅彩女の言うような、妖や魔物との戦いだった。
今回もそのようになるのかと思っていたが、まだ人間しか見かけない。
今も夜闇の中、そういったものが出そうだが。出ない。
「人間相手なら、まだ楽そうなんだけどねえ」
「オレはそうは思わねえな」
「源龍?」
「人間だの魔物だの言ったところで、結局同じようなもんじゃねえか」
「はは。それもそうか」
羅彩女は源龍が意外に深いことを言ったことに感心する。なにより、人間を今まで遭った魔物より見劣りすると油断するのも禁物だろう。
「まあ、行こうか。南景へ」
貴志が言えば、香澄とマリーにリオン、コヒョも頷き。ほの暗い中を、目を凝らして歩き出す。
一同は南景から遠目のところに降りた。夜中とはいえ、近いところは見張りもあり。それに見つかり怪しまれないため、遠くに着けたのだった。
休み休み進むうち、夜も白み始め、陽も昇り出した。
という時である。
「おーい」
と呼ぶ声があった。
何事かと一同声の方に向けば、五百ほどの、武装した集まりが見え。それから、数騎、蹄の音をさせてこちらにやってくる。
香澄と源龍に貴志、羅彩女は身構え、その背中にマリーとコヒョ、リオンは隠れた。
「おーい、ちょっといいかな」
と、一騎先頭の者が呼びかける。
「女……?」
一同を呼んだのは、女だった。
陽が昇り周囲が見渡せるようになって、女たちの姿も見える。
他は男で武装しているが。女も同じように鎧をまとい剣を佩いて武装している。
そして、肌の色。
女の肌の色は、小麦色の、褐色だった。
「なんだてめえ!」
源龍は開口一番に威嚇し、打龍鞭を構える。こういう時はやはり頼りになる。
「待った、待った。取って食いやしないってば」
女は威勢の良い源龍にもにこやかに接し、下馬した。
細身で背丈は低めではあるが、俊敏そうな印象を受けた。
「あんたら、南景に?」
「……」
源龍無言、迂闊に応えない。他もだった。




