第二部 第一章 愛国 一
船は空を泳ぐ。
雲外蒼天という。
空一面に雲が広がる曇り空を、逆風を坂乗りして、船は上昇し。ついに分厚い雲を突き抜け、太陽光り輝く蒼天にて、帆を広げていた。
「それでよう、今度はオレら、何させられるんだ?」
船の上で円座する者たち。
香澄と源龍に李貴志、羅彩女にコヒョとリオン。
マリーもいるのだが、船室の中で休んでいる。船に酔ったという。
源龍はジト目で他の面々を眺める。
「そりゃあ、やることがあるんだよ」
とコヒョとリオンは笑顔で応える。源龍は眉をしかめる。
「やることがある、だあ?」
「そうだよ」
「いつもいつもこの展開じゃねえか。一体いつになったらこの世は平和になって、オレらはのんびりできるんだ?」
「無理だね、だって人の世ってさ」
「人の世……」
あっけらかんとした笑顔でコヒョとリヨンがそろって言うのに対し、源龍はため息を吐き出す。
「ったくよう、人ってなあ厄介なもんだな。なあ貴志!」
突然振られて貴志は苦笑する。
「こういうのは、お前が詳しいだろ」
「ああ、うん、まあ、詳しいというか……」
古今東西、人は変わらず。というのはわかるが。自分たちの世界とは異なる異世界においても、人は変わらないというのも、今まで経験させられたことだった。
「でも希望がないわけじゃないよ」
「悪人いたるところにあるとともに、義の人もまた同じく」
香澄が澄んだ声で、詩を詠じるように言う。
「そりゃそうだけどさ」
羅彩女応えて言う。
「あたしらなしで解決してよ、と」
「なんか、僕らは天から遣わされた天人みたいな感じ?」
貴志が言えば源龍は何がウケたのか、がっはと一笑し、
「そんなたいそうなもんか」
と言った。
神の一歩手前の存在だなどと、たいそうなもので自分には似つかわしくないものだ。貴志が真面目に言った分余計におかしく感じられた。
「オレは地面に落ちて土や泥のついた肉を喰らうような生き方をしてきた。天人なんざ柄じゃねえよ」
「へえ、じゃ何が似合ってんのよ」
そんなこと言わずに、と言わず、そんなことを尋ねる羅彩女だった。
「何もねえさ、オレはただの武骨者だ」
他の面々は下手なことを言わず、静かに源龍の言うことを聞いた。そんなことを言わずに、などという慰めが通じる源龍ではない。むしろ、そう言いつつも……。
(源龍はそんな自分が好きなのかな)
香澄はそう思った。
「ともあれ!」
コヒョが話に割って入った。
「本題に入ろう!」
と言ってのち、リオンはこう続ける。
「ここでしみじみお話したいわけじゃないでしょう?」
「まあな」
源龍も頷く。言われた通り、おしゃべりは源龍の趣味ではない。




