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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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風雲が呼ぶのは 六

「うまそうだ!」

 また、その声が心の中で響いた。鳳凰の声なのは、今までの経験で香澄たちはわかったが。

 オロンや鬼どもはにわかに現れた鳳凰や、不思議な声に狼狽するばかり。

「うおおおおお――!」

 オロンの絶叫。鳳凰はまっすぐにオロンめがて飛んでくる。

「やばいッ!」

 危機を察し、穆蘭と鵰は咄嗟に逃げ出す。

 鳳凰は鋭く大きな嘴を開け、オロンに突進すれば。そのまま口内に飲み込んでしまった。オロンはなすすべもなく、飲み込まれてしまった。

「オロン……!」

 マリーは口を押え、絶句。リオンとコヒョも、一言も発することも出来ずに、絶句。

「食われやがった……」

 源龍は呻いた。

 鳳凰は天下をあらわす。天下は、人を食らう化け物。先の障魔との戦いで、そういったことを散々見せられてきたが。鬼までも容赦なく食らわれようとは。

 地上の鬼どもは、親分が鳳凰に食われたのを見て、集団発狂したように悲鳴を上げながら逃げ惑うが。

 鳳凰は急降下して地上に降り立ち、嘴を大開けし、思い切りくうを吸い込めば。

 鬼どもは宙に浮き、一斉に大開きにされた嘴の中に吸い込まれてゆくではないか。

「……」

 香澄は七星剣を手にしたまま固まった。何も出来なかった。他の面々も同じだった。

「鬼どもの狂気が、鳳凰を招き寄せたんだね」

 鵰の背の穆蘭は、地上の惨劇を目にし、そうささやく。

 我がままに、力のままに振る舞い、奪い、食らった果てに。

 天下に食われる。

 鬼どもは皆、天下に食われてしまった。

 鳳凰は嘴を閉じ、船や香澄たちに目もくれず、曇天の空の彼方を眺めていたが。

 翼を広げて飛び立った。

 同時にリオンは船を降ろして、香澄たちは素早く飛び乗れば。船は浮かぶ。

「どこに行くんだ?」

「わからないけど、鳳凰についてってみよう」

「それしかないかな……」

 源龍と貴志、羅彩女は鳳凰の豪奢な、揺らめく尾羽を見ながら、覚悟を決めて成り行きに任せた。

 香澄も無言でたたずむ。

 船の横には穆蘭と鵰。

「お兄さま~」

 と、貴志に笑顔を見せて呑気に手を振る。貴志も苦笑しつつ、手を振り返す。

「モテる男はつらいな」

「モテてないよ……」

「やめな源龍、はしたないよ」

「へいへい」

 源龍は、どうにでもなれと甲板に、どっかと腰を下ろしてくつろぐ。それにつられるように、貴志と羅彩女も腰を下ろしてくつろぐ。

「しかし、拍子抜けだな」

 と源龍はつぶやく。鬼どもとの戦いも、結局はうやむやに終わり。すっきりしない。打龍鞭を振り足らない気分だった。

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