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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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求める戦い、求めぬ戦い 二

「これで死んだと思われて、ほうっておかれたのかもね」

 と、リオンはつぶやく。

 王宮なのだから、王や女王に王子や王女、それに仕える臣下など、王侯貴族もいたと思われるが。

 突如現れた鬼に捕まって、消えてしまったと思っていいかもしれなかった。

 王宮のほか、人海の国全土に鬼が現れて、人々をさらっていった。

「人海の国にどれほどの人がいるのか知らないけど、みんな連れ去ったのか? あっという間に」

 実際にそのさまを見ても、にわかには信じがたいことだった。

「まてよ」

 源龍は言う。

「こんな感じで、オレらの前に現れることも出来るってことじゃねえか?」

 担ぐ打龍鞭の柄を握る拳に力がこもる。

「!!」

 香澄に羅彩女、貴志も、互いに背中を向け合い四方に注意し、それぞれの得物を携えて臨戦態勢をとり。マリーにリオン、コヒョがその中に入る。

「わっはっは! よくぞ察したものよ!」

 ふっと、鬼が姿を現した。一体だけではない、十体ほどの鬼が船に現れ、一同を取り囲んだ。

「人々をどこへやった!?」

 貴志が鋭い眼差しで言う。鬼は鼻で笑う。

「お前らに教える必要はない!」

「死ね!」

 問答無用で鬼たちは一斉に襲い掛かった。

「なめんじゃねえッ!」

 ぶうんと源龍の打龍鞭が唸り。

 同時に、香澄は七星剣を鞘から抜いて閃かせ。貴志は短槍を構え、羅彩女は軟鞭を構え、威嚇にひと振りし風切り音をさせる。

 鬼たちは鉄のこん棒に棘があるような、金砕棒を担いで、これをぶうんぶうんとうならせながら甲板をどたどたと駆けて、源龍や香澄たちに打ちつけようとする。

 迫る金砕棒をかわしざまに、源龍は打龍鞭を、香澄は七星剣を、貴志は短槍を、羅彩女は軟鞭を振るい、うまく鬼の脇や腕、足に当てた。

「ぐおお――」

 鬼は絶叫をとどろかせて、ぼわっと水が蒸発するように消えてゆくではないか。一緒に金砕棒も消えてゆく。

「なんだこれは!」

 などと驚きつつ、つとめて冷静に鬼に対処する。

「鬼は邪気が実体化したもの。だからやられれば消え去るの」

 と香澄は言う。

 ともあれ、倍以上の数の鬼たちをまたたくまに消し去ってゆき。

 それが出来たこと、鬼たちの思った以上の弱さにかえって拍子抜けのあまり驚くありさまだった。

「なんだこれは!」

 あまりのあっけなさに、痛快さよりも怒りを覚える源龍だった。

「こんなに弱いのか……」

「ほんと、拍子抜けするわ……」

 貴志と羅彩女は得物を持つ手から力が抜けるのに気を付けなければならないほどの拍子抜けを禁じ得なかった。

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