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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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夢は覚めず 十三

 そんな風に、皆香澄の声に聞き入っていた。その時だった。

 突然、あたりがふっと暗くなった。

 さすがに香澄の声がやんで。本を膝の上に置く。こんな時にと苦笑を禁じ得ない。

「世界樹ですか?」

「そうですね……」

 香澄の朗読に耳を澄ませ、どのような物語が紡がれてゆくのだろうと思っていた矢先のことだった。

 武具は置いてきたままだが。

 気が付けば源龍も羅彩女も鎧を見にまとい、得物を手にしていた。貴志は懐に触れれば、筆の天下は確かにあり、安堵する。

「便利なことだな」

「本当にご都合主義だねえ」

 と言いつつ、便利なものはやはり便利なので、素直にありがたい。

 マリーは思わず貴志のそばによる。これから鬼との戦いに赴くのだ。不安がなかろうはずもない。

 香澄は右手に人海の国の物語、左手に七星剣を握り。成り行きに身を任せる。

「……とっ」

 ふわ、と足の感触がなくなり、にわかな浮遊感におそわれる。

 と思えば、また何かの上にのった。感触からしてなにか木材に乗ったようだった。

 周囲が明るくなった。

「ようこそ、僕らの船へ!」

 という、幼くもはつらつとした声がする。誰かと思えば、

「リオン、コヒョ!」

 一同は船の上にいた。声の方を向けば、二人の子ども。緑の服を着ているが、ひとりは褐色の肌だった。それがリオンだった。もうひとり、マリーを除く一同と同じ色の目、髪に肌の子どもがコヒョだった。

「お久しぶりー!」

 一同が歩み寄るより先に、リオンとコヒョは駆けよってきた。

 マリーと香澄、貴志はひざを折り目線を二人に合わせて手を差し伸べ、それぞれ握手する。

 源龍と羅彩女は少し離れてその様子を眺めている。性格がよく出ているものだが、好悪で言えば好の面持ちだった。

「すごいわ、本当に船をもってきたなんて」

「まあ、ちょっと手間取ったけどね。なんとか」

 リオンとコヒョははにかみながら応える。

「でもこれからが、試練との戦いだよ」

「そうだな……」

 応えたのは源龍だった。得物の打龍鞭を肩にかついで。周囲を見渡す。

 空は青空が広がっているが。船縁ふなべり越しに下を覗けば、遥か下方に海原が見える。

 霧がかかってきて、視界が悪くなる。いや霧とは違う。雲だった。

 ややあって雲を抜け、視界がふたたび広がる。

「ちょっと高すぎたね」

 と、リオンは手を組んでなにやらむにゃむにゃ唱えると、船は高度を、雲がかからないところまで下がった。

「船を飛ばすなんざ、たいしたもんだな」

「えへへ、まあね」

 リオンはまんざらでもなさそうに満面の笑みで応える。

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