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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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夢は覚めず 十一

 貴志フィチが教えると言っても興味ないと断ってきていた。学は必要なものだが、無理強いもかえってよくないので、貴志も無理強いはしなかった。

 そんな源龍げんりゅうも、警護の兵と喧嘩をする一方、他の男の召使い衆と酒を酌み交わし談笑することもしばしばあり。けっこうここでの生活を満喫しているようだった。

 それでも、出てゆくと言ってきたのだから、本当にひとっところにいられない風来坊な性格のようだ。

 あくびした源龍に視線が集まる。

「なんだよ」

 とがめるのではなく、なんだか微笑ましそうに笑みを見せているのが、なんだかおかしなくすぐったさを覚えてしまう。

 香澄こうちょうや貴志たちは、源龍のこともひとりの人間として尊重していた。かつての障魔との戦いにおいても、戦いの経験が豊富なのをおおいに生かし、その貢献も大なりであったことから、その性根もそれなりにいいのも皆知っている。

 香澄も満面の笑みを見せている。

「でも、本当に、どうやって向こうに行くんですか?」

 貴志はマリーに問うた。

「そうですねえ。世界樹がそうしてくれるのでは、と……」

「ううむ。でも、急がないといけないことでしょうに」

「それか、鬼の側から何かしらの妨害があるのかと」

「妨害?」

「鬼は戦いには長けています。学はなくとも悪知恵が働くのです」

「はあ、たちが悪いねえ」

 羅彩女らさいにょが嘆息する。世間の最下層で生きて、そういった厄介な、才能ある畜生もずいぶんと見てきたもので、実感があった。源龍も同じくで、頭を使うちんぴらの厄介さはよく心得ていた。

「オレが一番ムカつく手合いだな。戦でも仲間を平気で裏切ったりしたもんだ……」

 源龍は続ける。

 裏切りといっても敵側に着くことばかりではない。手柄を横取りするために仲間を殺したり、仲間が得た報酬を強奪し、そのために殺すこともいとわぬと。敵よりも仲間に危害を加え利益を得ることに熱心な者もまた多く。そのための悪知恵もよく働いたものだった。

 実際羅彩女も源龍も何度も厄介な思いをさせられたものだった。

「仲間を……」

 戦を知らぬ貴志は絶句した。

「戦なんてよ、所詮は殺し合いだからな、ぶんどるためのな。そこに敵も仲間もねえ。ただ、獲るために殺す。それだけだ」

 源龍は忌々しそうに言いながら続けた。

「おめえの親父さんと王様はよくやってるぜ。まあ退屈はするけどな。戦なんかするよりよっぽどいい」

「あんたがそんなこと言うなんてねえ……」

 おめえの親父とは、貴志の父で宰相の李太定イ・テチョンのことで。王様とは、暁星ヒョスンを治める雄王ウンワンのことだ。

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